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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(11)久しぶりの登場

 巨木を前にした考助は、その姿を見上げながら呟いた。

「さて、目的の神樹を見つけることは出来たけれど・・・・・・どうするかな?」

 下手に手を出せば、どんな怒りを喰らう事になるか分からない。

 別に神樹が怒って物理的な攻撃をして来たからといって考助たちがどうこうなるとは思わないが、神樹とその周辺をつぶすつもりはまったくない。

 出来れば、穏便なままで枝の一振りでも手に入れば万々歳なんだけれど――と考えていた考助は、一応という感じで神樹に話しかけた。

「ええと・・・・・・塔の階層に植えたりしたいから、枝とか貰えないかな?」

 そう話しかけた考助だったが、残念ながらというべきか、当然だというべきか、神樹からの反応はなかった。

 その代わりに、周囲からの冷たい視線を感じた。

 

 冷たい視線を飛ばしていたうちのひとりであるコレットが、考助を呆れたように見ながら言った。

「あのね、考助。そんなことを言って、本気で貰えると思った?」

 言外にこれほどの結界を作っている神樹がと言ってきたコレットに、考助はバツの悪そうな顔になった。

「いや、言って貰えるんだったらラッキーと思って・・・・・・?」

 そう言いながらも考助はコレットと視線を合わせないようにうろちょろとさせ始めた。

 普通はやらないようなことをやったという自覚はあるので、どうにか誤魔化せないかと考えているのだ。

 

 少しして、やはり誤魔化すのは無理だと諦めた考助は、コレットを見ながら聞いた。

「というわけで、どうすれば枝をもらえるかどうかを考えて貰えませんかね?」

「何よその言い方は・・・・・・まあいいわ」

 そう言いながらコレットは、一度ため息をついた。

「私でも神樹と話をするのは無理だと思うから諦めるのね。・・・・・・と言いたいところだけれど、考助の場合は別の手段があるじゃない」

「別の手段?」

 コレットからそう言われた考助は、何も思い当たらずに首を傾げた。

 

 それを見てもう一度ため息をついたコレットは、

「あのね。こういう時こそエセナの出番じゃないの? 後から知ったらがっかりすると思うわよ?」

 コレットがそう言うと、考助はアアという感じで手をポンと合わせた。

「なるほど。言われてみれば確かにそうだけれど・・・・・・本当に大丈夫なのかな?」

「さあ? とりあえず呼ぶだけ呼んでみて、駄目だったら駄目でいいんじゃない? エセナはがっかりすると思うけれど、呼び出さないよりもいいと思うわよ?」

「そうか。それじゃあ、そうするね」

 コレットの言い分に納得した考助は、頷きながらエセナを呼び出すことにした。

 

 考助が世界樹の妖精であるエセナを呼ぶときは、特別なにかをしなければならないということはない。

 原理は分からないが、考助が名前を呼びかけるだけですぐに応じてくれる。

「――――エセナ。ちょっと今、いいかな?」

「はい、兄様。どうしましたか? ・・・・・・って、おや。これはまた珍しい所にいらしていますね」

 考助の呼びかけに従ってすぐに姿を現したエセナは、すぐ傍に神樹が立っていることに気がついて、そう言ってきた。

 

 さすが世界樹の妖精だと感心した考助は、そのエセナに先ほどの希望を口にした。

「その神樹にお願いしてほしいんだけれど、枝の一振りでももらえないかな? 塔の階層に植えてみたいんだ」

 考助がそう言うと、エセナは納得した顔で頷いた。

「なるほど。そういうことですか。それでしたら、少しだけ待っていてください」

 そう考助に答えたエセナは、神樹に向かってスッと手を伸ばした。

 そして、次の瞬間には、神樹に吸い込まれるようにしてその姿を消していた。

 

 

 いきなりエセナが姿を消しても、考助たちは特に慌てるようなことはなかった。

 世界樹の巫女であるコレットが大丈夫だと言っていたこともあるが、その前にエセナが当然だという顔をしながら神樹に触れていたので、何か悪いことが起こっているとは思えなかったのだ。

 それに、エセナが姿を消していた時間は、ほんの数分のことだったので、不安になる暇もなかったということもある。

 

 神樹の中から再び姿を見せたエセナは、その腕の中に一振りの枝を抱いていた。

 考助がその枝に視線を向けていることに気付いたのか、エセナは少しだけ笑いながら差し出してきた。

「話をしてきました。この枝でしたら持って行っても構わないそうです」

「そう。わざわざありがとう」

 考助がそう言って礼をすると、エセナはニコリと笑った。

 そうして笑っていると、初めて会ったときの小さかったときの笑顔と全く変わっていないことに気付かされる。

 

 そんな考助の感傷を余所に、エセナはその笑顔のまま答えた。

「いいのです。私は大したことはしていませんから」

「いや、こうやって神樹と話をして枝を持ってきてくれただけでも、僕にとっては十分大したことだから」

 考助がそう答えると、エセナは少しだけ不思議そうな顔になって、目をパチクリとさせた。

「そうですか? それでしたら、また同じような樹を見つけた場合は呼んでください。役に立てると思いますから」

「そうだね。今度からは、そうするよ。とにかく有難う」

 考助が改めてそう礼を言うと、エセナは首を左右に振りながら姿を消した。

 今度は、神樹の中に入ったわけではなく、自分自身(世界樹)の中に戻ったのだということがわかった。

 考助からの用事はもうないとわかって、本来の仕事に戻ったのだ。

 

 エセナが姿を消したあとで、考助は神樹に向かって頭を下げた。

 それを見て、他の者たちも同じように頭を下げる。

 言葉は通じなくても、その気持ちが通じればいいかと考えてのことだ。

 

 そして、頭を上げたコレットが、早速とばかりに貰った枝に視線を向けてきた。

「それが、この神樹の枝かな?」

「さあ、どうだろう? まあ、違っていたとしてもそれはそれで面白いと思うけれどね。とりあえず、神樹関係の枝であることは間違いないみたいだよ?」

 枝のステータスを確認してそれを確認した考助に向かって、シルヴィアも頷いていた。

 考助の加護の力を伸ばしているシルヴィアは、称号なども見ることが出来るようになっているのだ。

 

 

 興味深そうに枝に視線を向けているコレットやシルヴィアとは別に、あることが気になったフローリアが、考助に話しかけた。

「ところで、戻れるとなったら気になり始めたんだが、もしかしなくても戻るときは、今まで通ってきた道を逆に行くことになるのか?」

 ここに来るまでの道のりを考えてうんざりとした表情になったフローリアだが、そんな彼女に考助は苦笑しながら答えた。

「まあ、無難に戻りたいんだったらそうしたほうが良いだろうねえ。結界の効果で、どこに飛ばされるのか分からなくてもいいんだったら、賭けに出ても良いと思うけれど?」

 首を傾げながらそう聞いた考助に、フローリアは短く「遠慮しておく」とだけ答えるのであった。

久しぶりの登場ですよ!

さすがに忘れられているということはないと思いますが・・・・・・。(思いたいです)

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