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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(9)森の結界の意図

 二つ目の森の結界は、ひとつめと違って、かなりの広さがある。

 たとえ一直線に進んだとしても、歩きだと丸一日はかかるだろう。

 とはいえ、結界がある以上、コーたちを使っての移動は出来ないので、考助たちは自らの足で歩き始めた。

 空から結界の大きさを確認している時点で、長丁場になることは覚悟しているので、そこは問題にならないのだ。

 コレットは、子供たちにきちんと話をしてから来ているので、数日程度は一緒に行動できる。

 さすがに一週間を超えてくると、ピーチに迷惑を掛けることになるので、それまでには決着を付けたいところだ。

 

 そんな算段を付けながら結界の中央に向かって歩いていた考助たちは、途中で昼食を取ることにした。

「随分と回り道をしているようだが、中央にはどれくらいで着くのだ?」

 フローリアがそうコレットに問いかけると、聞かれた当人は首を傾げながら答えた。

「そおねえ。夕方前には着くんじゃないかな?」

「夕方か。思った以上にかかるんだな」

 森に入る前の計算では、順調に行けば昼食時間を少し過ぎたくらいに着くのではないかと話していた。

 その時間が大幅に伸びているのだから、フローリアがそんな感想を漏らすのも当然だろう。

 

 そんなフローリアに、コレットが苦笑しながら答えた。

「あれは直線で進めた場合を想定しての時間だから。それに、ここまで森が入り組んでいるとは思っていなかったのよ」

「まあ、それは周りを見れば分かるがな。いや、別に責めているわけではないぞ?」

 慌ててそう言ってきたフローリアに、コレットが苦笑を返した。

「わかっているわよ。随分と回り道をしているから、確認をしたかったのでしょう?」

「まあ、そうだな」

 あっさりと質問の意図を見破られて、フローリアはそう答えた。

 見積もりが外れることは気にしていないフローリアだったが、どう見ても遠回りをしているようにしか見えないことが疑問だったのだ。

 

 フローリアから視線を向けられたコレットは、一度考助を見てから答えた。

「別に大した理由じゃないわよ。単に結界の邪魔にならないように進んでいたらこうなっただけ」

「結界の・・・・・・? どういうことだ?」

 首を傾げてそう聞いて来たフローリアに答えたのは考助だった。

「あ~。詳しい説明は省くけれど、結界を無視して突っ切っちゃうと、折角あるものが壊れてしまうからね。後から直すのも面倒だから、今は何事も起きないように進んでいるだけなんだよ」

 考助たちの実力があれば、結界そのものを壊して進むことくらいはできる。

 だが、それをしてしまうと逆に面倒なことになるので、今は遠回りをしてでも正規のルートを通るようにしている。

 まさしく、急がば回れの状態なのだ。

 

 折角結界があるお陰で自然のまま残っている森を壊すつもりは考助にはない。

「それに、もともとの目的を考えれば、変に森を刺激しない方がいいと思うからね」

 もしこの森に神樹があるとすれば、ここで考助たちが攻撃的になってしまうと、貰えたはずの物も貰えなくなってしまう。

 最初から喧嘩を売っても何の利益にもならないので、結界を壊しながら進むという選択肢はあり得ないのだ。

「なるほど。大いに納得した」

 コレットと考助から説明を受けたフローリアは、納得した顔で何度か頷いていた。

 

 そのフローリアを横目で見ながら、考助とコレットの行動の意味をある程度わかっていたシルヴィアが聞いた。

「最初からそうするつもりで動いていたようでしたが、ここに神樹があると予想してのことですか?」

「いや、どうだろう? ただ、神樹かどうかは分からないけれど、この森にはこれだけの結界を支える存在があることだけは間違いないよね」

 考助がそう言いながら確認するようにコレットに視線を向けると、向けられた当人はコクリと頷いた。

「そうね。木々の配置もきちんとした意図を感じるから、ただの偶然という事はないと思うわ」

 前回考助たちが見ることになった森のことを念頭に置きながら、コレットはそう答える。

 実際にはまだ答えはわかっていないのだが、考助もコレットも何かがあるということはほぼ間違いないと考えている。

 

 そうでなければ、これだけ複雑な結界を作って置きながら、侵入者(?)が通るための通路をわざわざ用意することなどあり得ないはずなのだ。

 考助たちが今現在こうして結界の中を何事もなく通ることが出来ているのは、そのための通路が存在しているからだ。

 ただの偶然で、そんなものが出来るはずがないというのが、コレットと考助の考えなのである。

 

 考助とコレットの説明に、シルヴィアはなるほどと頷いた。

「何者かの意思ですか。となると、私たちが結界内に入っていることは・・・・・・?」

「勿論、とっくに伝わっていると思うよ。それに対して何もしてきていないのは、最初から排除するつもりが無いのか、あるいは正しいルートを進めることが条件になっているのか・・・・・・それは分からないけれどね」

 考助がそう言えば、コレットもさらに付け加えてきた。

「私は、私たちが来るのを待っている方に賭けるけれどね」

「へえ? その心は?」

「だって、そうじゃなければ、わざわざこんな面倒な結界なんか作らないと思うわよ?」

 少しだけ興味深そうな顔になってそう聞いて来た考助に、コレットは肩を竦めてそう答えた。


 これほど複雑な「正解ルート」を用意できるほどの存在なのだ。

 自分のところまでたどり着いた者を出迎えるためでなければ、なんのためにそのルートを用意したのか分からなくなる。

 勿論、単に趣味だという者もいるだろうが、これほどの自然を使ってまで用意するはずがないというのがコレットの考えだった。

 

 ただ、そのコレットに対して、今度はフローリアが茶化すように言ってきた。

「そうか? ただの趣味だけでそういうものを用意しそうな存在がいるではないか」

 フローリアはそう言いながら意味ありげな視線を考助へと向けた。

 その視線の意味を察することが出来ない者など、この場にはいない。

 当人を除いた全員の視線が考助に集まって、一瞬後に揃って大きく頷いていた。

「いや、ちょっと待って。その反応って、どうなのかな?」

 さすがに少し慌てて考助はそう抗議したが、きっかけを作ったフローリアは笑いながら言ってきた。

「ほう? それでは、もう今後は趣味だといって、暴走することはないんだな?」

 そう念を押してきたフローリアに、自覚のあった考助は「ウッ」と呻いて視線を逸らした。

 

 そんな考助を追い詰めるようなことはせずに、フローリアが結界の中央の方角を見ながらさらに続けた。

「どうにも話を聞いている限りでは、コウスケと同類のような気がしてきているのだが、大丈夫だろうな?」

「そうね。そう言われると、何となくそんな気がして来たわ」

 フローリアの懸念に、先ほどまでの意見を翻して、コレットまで同意して来た。

 そして、やり玉に挙げられた考助はといえば、もし自分だったら趣味といって同じようなものを用意しそうな気がしたので、ただ黙って頷くのであった。

久しぶりに(?)追い詰められる考助でした。

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