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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(8)ふたつ目の森に侵入

 ひとつめの森では神樹を見つけることが出来なかったが、考助としては結果的には満足できるものが見れた。

 あれほどまでに緻密に作り上げられた、しかも自然の働きによってできた結界など、そうそう見れるものではない。

 あの森を見つけることが出来ただけでも、考助としては十分すぎる結果を得ていた。

 ちなみに、その考助の隣では、コレットが少しむくれた顔で座っている。

 考助が絶賛する森を未だに見れていないので、絶賛不機嫌中なのだ。

 考助たちが今いるのは浮遊島の城なのだが、この場にコレットがいるのは、次は絶対に自分も付いていくと言い張ったからである。

 

 そんなコレットに、考助が苦笑しながら言った。

「ほら。コレットもそろそろ機嫌を直して。今度は一緒に行くことになったからいいよね?」

「そうなんだけれどねー」

 考助の言葉に、コレットが棒読み調子でそう返してきた。

 普段は怒っていても翌日まで尾を引くことがないコレットが、今はこんな感じになっているのはわけがある。

 単に、最後の最後まで置いて行かれることのないように、わざとそうしているのだ。

 考助たちもそれがわかっているので、うるさがったりせずに、敢えてコレットの芝居に付き合っているのだ。

 

 そんな考助たちがいる部屋に、エイルが入ってきた。

「そろそろ到着いたしますが、どうされますか?」

 考助たちが来てからこの場所に移動してくるまでに、かなりの時間を使っていた。

 そのため、夕飯にはまだ少し早いが、外に出かけるには遅いという時間になっている。

 言ってしまえば、非常に中途半端な時間といえるため、エイルが確認しに来たのも頷ける。

 

 エイルの問いかけに、考助は一度この場にいる者たちを見回して無言のまま確認をした。

 ちなみに、今日いるメンバーは、前回の森の調査をした者たちにコレットが加わっている。

「今から探索しても大したことは調べられないだろうから、今日はこのまま戻るよ」

「そうですか。では明日ですか?」

「そうだね。出来ればこの位置にいてくれると助かるけれど」

 考助たちは転移陣を使って管理層に戻るが、明日戻ってきたまた遠くに離れてしまっては意味がない。

 

 考助の言葉に、エイルはわかっていると言わんばかりに頷いた。

「勿論です。今夜はここに留めておきます」

「そう。ごめんね」

「いいのですよ。どのみち決まったルートを移動しているわけではありませんので」

 今のところ浮遊島は、様々な理由から決まった場所を飛んでいるわけではなく、完全にランダムなルートを飛んでいる。

 その理由のひとつが、余計な組織や国からの攪乱の為であるということは、誰もが知る事実である。

 

 今夜浮遊島は今いる場所にとどまるという事を約束してもらって、考助たちは管理層へと戻った。

 管理層に戻ったコレットは、先ほどまでの態度を忘れてしまったかのように、いつもの調子に戻っていたのだが、それを指摘する者は誰もいないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 翌日。

 予定通りに管理層から浮遊島に戻った考助たちは、そのままコーたちに乗って森の中に降りた。

 そして、前回と同じように、ここからは歩きでの調査になる。

 ただし、以前の反省を生かして森の入り口から入ったわけではなく、結界がある場所の手前から入ることにしていた。

 それは、森自体が前回よりもさらに広くなっていて、移動するだけでも時間がかかるという理由がある。

 もし、同じような結界になっていたとしても、その時はその時だと開き直っているということもある。

 

 さて今回はどうなることやらと、若干楽しみにしつつ結界に近付いた考助だが、ある意味予想どおりの結果に少しだけ肩を落とすことになった。

「普通に結界があるわね」

 コレットがそう言った通りに、今回ははっきりそれと分かる結界が、普通に張られていたのだ。

 もっともこれは、コレットや考助の感覚が鋭いのであって、普通はこの場に結界があることは気付けない。

 

 現に、フローリアはその場に結界があることは、全く気付けていなかった。

「・・・・・・そんなにはっきりと分かるほどにあるのか?」

 首を傾げながらそう聞いて来たフローリアに、コレットは頷きながら応じた。

「フローリアが気付けないのは無理もないかもしれないわね。ここの結界は、魔法的なものよりも、自然のものをより多く使っているみたいだから」

 コレットの説明に考助も同意して頷いた。

 要するに、魔法陣のような魔法を多用しているわけではなく、木々などの自然物を利用したエルフの森的な結界になっているというのが、コレットの説明だ。

 これを見破るには、エルフのように自然に慣れ親しんでいるか、考助のように超人的な感覚が無ければできないのだ。

 ちなみに、コレットを始めとして女性陣は、考助が普通に見破っていることに、疑問を抱いたりはしていない。

 

 

 そんなやり取りをしながら、考助たちは結界の中へと入って行った。

 ただし、結界の仕掛けを見破っているとはいえ、前回のようなことが無いともいえないので、一応警戒はしている。

 そもそも、浮遊島が空から移動できない以上、ただの物理的な結界だけで構成されているはずがないのだ。

 当然、魔法的な結界もどこかで合わさっているはずなのだ。

 

 森の中を歩きながらそんなことを考えていた考助の目の前に、その懸念していた魔法的な結界が現れた。

「コレット、ストップ。今回は、随分と素直に見せてくれているかな?」

 こうまであっさりと見つけてしまうと、逆にそれが罠なのではないかと思ってしまいそうだった。

 だが、少なくとも考助の目には、それこそ世界樹が作るような結界と似たような結界が張られていることが映っていた。

 

 考助の言葉で歩みを止めたコレットが、振り向きながら聞いて来た。

「本当に、ここに結界が?」

「うん。あるよ。こっちだったらシルヴィアには分かるんじゃないかな?」

 コレットとは違って、シルヴィアは魔法的な結界に詳しくなってきている。

 それが考助の影響であることは、本人も含めて誰もが認めるところだろう。

 

 考助に問われたシルヴィアは、辺りをジッと見始めた。

 すると、確かにその場に魔法的な結界があることが分かった。

 同時に、考助が言った素直という意味も理解できた。

「確かに、ありますね。見つけ辛いことは見つけ辛いですが・・・・・・基本に忠実であるともいえるでしょうか」

「そうだね。というか、昔の人がこういうのを見つけては、理論として研究したのかもしれないよ?」

「そうかもしれませんね」

 シルヴィアは、考助の言葉に素直に納得した。

 それほどまでに、この場にある結界は、考助やシルヴィアが知る結界の基本的な理論に沿った作られ方をしている。

 もっと正確に言えば、そうした理論を基礎にして、より緻密にそして複雑に作り上げていた。

 

 あっさりとその場にある結界を見破った考助とシルヴィアだが、先ほどのコレットと同じように、本来はそうそう簡単に見破れるような結界ではない。

 ただし、考助が素直だと言った通りに、この場にある結界は、考助がいれば素直に通り抜けることが出来る。

 その言葉通りに、考助は壊さないようにそっと結界を開けて、皆が中に入るのを確認してから、先ほどと同じように入り口(仮)を閉じるのであった。

面倒臭いコレット発動!

たまにはこういうこともあります。

別にコレットだけではなく、ほかの女性たちも同じですw

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