表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第10章 塔に神様を召喚してみよう
128/1358

10話 神威召喚

 考助が詠唱を唱え始めた瞬間。

 落成式の出席者達は、全員が身震いをした。

 考助から発せられた力を感じ取ったためである。

 この世界の住人は、大小はあれど力を感じ取る能力を持っている。

 いつでもモンスターたちに襲われる可能性がある、生物としての本能と言ってもいいだろう。

 中でも修行を行っている聖職者たちの反応は顕著だった。

 考助が今使っているのは、神力であり聖職者たちが普段使っている聖力ではない。

 だが、それ故に、考助から発したその力の特異性と強さに思考を奪われた。

「・・・・・・なんてこと」

 そう呟いたのは、ミクセンのエリサミール神殿長のローレルだ。

 だが、言葉を発せられただけまだましだった。

 周囲に座っている聖職者たちは、考助の力に中てられて呆然自失と言った感じになっている。

 仮にも神殿の中で高い位置の役職に就いている者達だ。

 聖力にしろ魔力にしろ力に対する感応力は、高い者達が揃っている。

 そうした者達は、まともに考助の力の大きさを感じ取ってしまったのだ。

 勿論ローレルも同じなのだが、比較的ましだったのは、彼らよりも耐性が強かったからだ。

 それとは別に、聖職者たちほど影響を受けていない者達もいた。

 それは彼らが強者だからと言うわけではなく、単に力に対する感受性が低いからだ。

 だが、だからと言って考助の力を低く見たわけではない。むしろ、逆である。

 感受性が低いために、普段感じ取れることのできない力を、今までにないほど感じ取っているのだ。

 逆に言えば、それほどの力を考助が発しているということになる。

 それ故に、この場にいる全員が、考助の持つその途方もない力を感じ取ったと言えるのだった。

 

≪召喚願うは三柱の天女たち≫


 考助の詠唱は、続けられていた。

 この段階では、参加者たちは考助の力に中てられるだけで、考助が何をしようとしているかまでは気が付いていない。

 この場にいるもので、考助が何をしようとしているのか理解しているのは、前もって知らされていたワーヒド達くらいだった。

 アレクももちろん何をしようとしているのか知ってはいたのだが、それでも考助から感じる力の大きさには驚嘆の一言しか思い浮かばなかった。

 同時に、考助との仲を拗らせることを選ばなかった過去の自分を褒め称えた。

 これだけの力を目の前で見せられれば、敵対することを考えることすら馬鹿馬鹿しくなってくる。

 そして、恐らくこの場にいる参加者たちも同じ事を考えるだろう、と思うアレクであった。

 

≪一の柱は太陽の光エリス≫


≪一の柱は星の光スピカ≫


≪一の柱は月の光ジャル≫


 詠唱が続けられるが、その力は衰えることを知らず、ますます力強くなっていた。

 それを一番身近に感じているのは、当然コウヒとミツキだ。

 周囲の様子を警戒しながら、ミツキはそっとコウヒの様子を見た。

 コウヒは、恍惚といった様子で考助の方を見ていた。

 同時に自分も同じような表情になっているんだろうとミツキは思った。

 コウヒとミツキは、そもそも考助のためにアスラに創られた存在だ。

 そこには疑念などといった感情を挟む余地はない。

 そのように創られた存在なのだから当然だ。

 だが、今こうして目の前で考助の力を見せられると、これまで以上に惹きつけられた。

 そして、同時にこれまでなかった力さえ感じられてきた。

 その力は、考助との繋がりを確かに感じた。

 ミツキはこの力がどういった物なのかは、後でゆっくり考えることにした。

 とにかく今は、考助が行おうとしている事を最後まできちんと見届ける事にした。

 

≪光の象徴たる三柱の天女よ≫


≪吾が願いに応えたまえ≫


 ここまで続けられた考助の詠唱に、参加者たちはもはや息をするのを忘れたかのように見入っていた。

 今考助が唱えている詠唱は、参加者の誰もが聞いたことのない詠唱だ。

 だが、この詠唱がもたらす結果は、今までにない程の結果をもたらすことは、ここにいる誰もが感じ取っている。

 だからこそ、考助の様子を見逃すまいと、その一挙手一投足を見守っているのだ。

 そして、見守っている参加者たちの中で、一番先にそれに気づいたのは、やはり聖職者たちであった。

 考助の唱える詠唱に含まれている名前に、心当たりがあったのである。

 一般的には知られている名前ではないが、それでもここにいるのは位の高い者達だ。その名前が記された文献は目にしている。

 それでもまさか、と言う思いだったのだが、次の考助の詠唱で完全にその思いは砕かれた。

 

≪神威召喚陣よ吾が願いに応えその威を現したまえ≫


 考助がその詠唱を唱えた次の瞬間には、神殿の上空に三つ(・・)の召喚陣が現れた。

 この場にいる聖職者たちの中で、その召喚陣を知らないという者は一人もいなかった。

 神威召喚陣は、高位の聖職者たちの間では、知っていて当然の召喚陣なのだ。

 それもそのはずである。

 神を人の手によって召喚するというのは、神殿の長い間の研究課題なのだから。

 一度でも成功させられれば、少なくとも神殿の中では、その地位は安泰と言っていい。

 それ故に、誰もが一度は手を出すのだが、その全てが失敗に終わっている。

 

≪我が名において現れし召喚陣よ≫


≪吾が言葉を(もっ)て三柱の天女の召喚を行いたまえ≫


 その詠唱で全ての準備が完了した。

 今まで高めに高めた神力の全てを、考助は神威召喚陣へと注ぎ込んだ。

 神の左目を使ったときを除いて、この世界に降り立ってから初めて思いっきり神力を行使した。

 最初に神の左目を使った時のように暴走しなかったのは、曲がりなりにも神力を使い込んできた証拠だ。

 結局一番最初の時のように倒れることもなく、最後まで詠唱を唱えきったのである。

 

 考助の詠唱と神力を受けとった神威召喚陣は、喜ぶように様々な色へ点滅していた。

 それもやがて収まり、最後にひときわ強い光を発して消えて行った。

 そしてその後には、三柱の女神が残されていたのであった。

 

『文句なく合格です』

『おめでとう。君が歴史上、初めての召喚者だ』

『考助ならやると思っていたよ』


 召喚された三柱の女神たちが、口々に考助へと言葉を投げかけて来た。

 考助にとっては、エリスの姿を見るのは、[常春の庭]以来となる。

 ジャルは以前の光の中で会っただけなので、単純に対面となるとあの時以来になる。

 勿論、スピカは初めての顔合わせだ。

「やあ。スピカは、初めまして、でいいのかな?」

『よく話していたりするから、初めてって感じはしないけどね』

 クスリと笑って答えたのは、ジャルだった。

『しかし・・・呼ばれた我が言うのもなんだが・・・三柱も呼んで大丈夫かい?』

「?? 特におかしなことは無いけど? 強いて言えば、疲れたような感じがするかな? ここまで神力使ったのが初めてなせいだろうけど」

 考助の告白に、三柱の女神たちは呆れたような表情になった。

『なんというか・・・こんな大勢の前で、そんなことを言ってもいいのですか?』

 気遣うように問いかけて来たエリスに、考助は肩をすくめて言い放った。

「それこそ今更だよね?」

 考助の返答に、女神たちは楽しげな表情になった。

『それでは、長居は出来ませんので、貴方の願いに応えて私達は去ります』

 エリスがそう言うと、スピカとジャルは各々神殿に向かって手をかざして、それに合わせるようにエリスも神殿へと手のひらを向ける。

 三柱の女神の掌から光が出てきて、その光が一つに合わさり神殿を包み込んだ。

『・・・これで、この神殿は私達の庇護下に入ったわ』

「ありがとう」

 考助がその一言を言うと、三柱の女神たちは姿を消した。

 それを見届けた考助は、イベントの参加者たちの方へと向き直った。

 その考助を見つめる参加者たちの視線は、筆舌に尽くしがたいものである。

 今起こったことが現実の事だったと理解されるまで、しばしの時を必要としたのであった。

ファンタジーと銘打って百数十話。

初めて詠唱らしい詠唱が登場しました。

これ以外は、フローリアの呪文くらいでしょうか?w


と言うわけで、神様の召喚も無事に終わったので、明日の更新分までには章タイトルをきちんと変更しようと思います。

第十章タイトルは「塔に神様を召喚してみよう」です。


2014/6/6 誤字脱字訂正

2014/6/10 ジャルの面識に関して修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ