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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(2)いつもの占い

 ピーチの占いはよく当たるが、基本的により具体的なイメージや物があったほうが良い。

 どういうことかといえば、例えば物捜しの場合は、大雑把に指定するよりも、具体的にどういったものと指定したほうがいいのだ。

 今回でいえば、『塔に役立ちそうなもの』ではなく、『神樹がありそうな場所』と占ったほうが良いということだ。

 からめ手としては、神樹そのものではなく、神樹を捜しにいく考助の行動を占うという方法もある。

 特に、神樹のように神のような力のある存在が絡んでいる場合は、いろいろなものが作用して占い自体がゆがめられる可能性がある。

 そのため、神樹そのものではなく、それを捜す当人の先を見通すということだ。

 

 考助から話を聞いてピーチが初めに選んだのは、直接神樹のありそうな場所を占うやり方だった。

 さらに、考助が関係しそうな神樹と指定すれば、なおいい。

 ・・・・・・と、ピーチが占いをするうえで、自然にそう考えた。

 そして、いよいよ本番、となったときに、ピーチのカードを切る手が止まった。

「あらら~? 駄目ですね~、これは」

 そう呟いたピーチは、カードを机の上に置いてしまった。

 

 ピーチに占ってもらうときは、こういったことはよくあるので、考助は特に慌てたりしない。

「あら。やっぱり一筋縄ではいかないか」

「そうみたいですね~」

「どうする? 占うのは止めにする?」

「いいえ~。もう少し別の角度からやってみます」

 既に慣れているやり取りなので、考助もピーチも戸惑うことなく会話を続けている。

 

 考助が頷いたのを見たピーチは、気を紛らわすように一度立ち上がって伸びをしてから、もう一度カードを手に取った。

 今度は、神樹そのものではなく、考助のとるべき行動を占ってみる。

 これは、何度も行っていて既に慣れているので、先ほどのように失敗することはほとんどない。

 もしあるとすれば、例えば他の神から直接の妨害が入っているなどになる。

 

 幸いにして、これまでそういった妨害が起こったことはなく、今回も起こらなかった。

「うーん・・・・・・。なんとなくですが、南に向かったほうがよさそうですね~」

 具体性の乏しい言葉だが、まったく何もないよりもはるかにましだ。

 ピーチの言葉を聞いた考助は、早速何かを考えるような顔になって呟いた。

「南? ということは、スミット国がある大陸か。もしかしたら、フリエ草も神樹が関係していたりとか・・・・・・?」


 それはないかと続けようとした考助だったが、ピーチが真顔になって、机の上に並べられたカードを見て言った。

「いえ、これはもしかしたらもしかするかもしれませんね~」

「え、いや、適当に言ったんだけれど?」

 考助の中では、南大陸=フリエ草というイメージがついてしまっているので、つい言葉に出してしまっただけだ。

 それが、こんな結果になるなんてことは、かけらも考えていなかった。

 

 ほんの少しだけ呆然とした様子になっている考助に、ピーチが笑いながら答えた。

「もしかしたら、神としての勘が働いたのかもしれませんね~」

「神としての勘、ねえ・・・・・・」

 どうにも実感が湧かない考助は、首を傾げながら不思議そうな顔になっていた。

 ただただ思いついたことを言っただけなので、勘と言われてもピンとこない。

 

 不思議そうな顔になったままの考助に、ピーチがさらに続けて言った。

「コウスケさんには実感が無くても、勝手にそうなるようになっているのかもしれませんね~。まあ、無自覚なので、いつでも使えるわけでなさそうですが」

 考助の現人神としての権能には、言ったことがすべて正しい(正しくなる)なんてものはない。

 今回はたまたま当たったと言われた方が、考助としてはまだ真実味がある。

 

 とはいえ、いまはピーチの占いの結果のほうが考助にとっては重要だった。

「――まあ、いいか。とにかく南に行くのがいいんだよね?」

「そうですね~。ただ、本当にそこにあるのかはわかりませんが」

 南に向かうと出ているのは、単にヒントがそこにあるだけかもしれない。

 それは、実際に考助が動いてみないと結果として出てこないので、ピーチの占いでもそこまでが限界だった。

 

 そのことは考助もよくわかっているので、それ以上の結果を求めたりはしない。

「それは当然だよ。なかったらなかったで仕方ない・・・・・・というよりも、ヒントがあるとわかっただけでも上出来だし」

 まったく何もない状態で世界中を探し回るよりは、はるかに絞り込みがされている。

 それでもかなり広大な範囲なのだが、それでもましだと思えているところが、考助らしいといえるかも知れない。

 

 そんなことには気付かずに、考助は腕を組んで今後の予定を考え始めていた。

「神樹と呼ばれるくらいだから、どこかの森とか林の中にあるのかな? ・・・・・・いや、もしかしたら一本だけで立っている可能性もあるか」

 一瞬頭の中に、とある有名なコマーシャルを思い浮かべた考助は、すぐに自分で訂正していた。

「そうなると、探す場所も限定するのが難しいですよ~?」

「そうなんだよね。まあ、もし平原に一本だけ立っていたとしたら有名になっていてもおかしくはないから、一応は省いておくかな?」

 いくら広い平原とはいえ、神樹と呼ばれる木が、一本だけでポツンと立っていれば、目立つことこのうえない。

 だとすれば、有名な観光地となっていてもおかしくはないので、その可能性はないだろうというのが考助の考えだった。

 

 ピーチとしても、考助の考え方には同意できるので、特に意見を挟むようなことはしなかった。

 こういったときのピーチは、考助がよほどの間違いをしていない限りは、相槌を打つくらいで余計な口を挟むことはない。

「まあ、ここで考えていても仕方ないか。後は実際に行って見てみるくらいしかできないかな?」

「そうですね~。でも大陸中全部を捜すのですか?」

「いやいや、まさか。そんなことをしなくても、ある程度は絞り込める・・・・・・と思うよ」

 何やら確信をもって言っているように見えた考助に、ピーチが首を傾げた。

「何かヒントになるようなものでもありましたか~?」

「いや、そうじゃなくてね。今更ながらに思い出したんだけれど、怪しそうなところをピックアップしている人たちがいたなあってね」

 考助の言葉を聞いて、ピーチはますます疑問の色が深くなった。

 

 それを見た考助は、特に隠すでもなくあっさりと答えを言った。

「ほら。天翼族だったら、空を移動できない場所をいくつか知っているはずだろう?」

「なるほど~。その中でありそうな場所をピックアップして調べるということですか」

「そういうこと」

 ようやく納得した顔になったピーチに、考助は頷き返した。

 

 

 ピーチの占いのお陰で、南に何かがあるとわかり、天翼族の協力が得られれば、どうにかなるかもしれないと結論付けた考助は、早速その予想の元に行動することにした。

 まずは、いきなり南大陸に乗り込むのではなく、浮遊島に行って情報収集から始めなければならない。

 そう考えた考助は、手が空いているシルヴィア、フローリアを連れて、浮遊島へと向かうのであった。

コウヒ&ミツキペアも当然のようについて行っていますw

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