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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(15)セイヤとシアの能力(後)

 何をしているんだという声に、その場にいた全員の視線がそちらに集まった。

 それもそのはずで、その声が聞こえて来たのは、つい先ほどまで模擬戦をしていたはずの訓練場の入り口からだったのだ。

 そして、その入り口に、模擬戦を行っていた張本人たちが立っているのを見て、セイヤとシアに絡んできた男が焦ったような顔になった。

「ダ、ダールさん」

「いや、俺の名前はいいから。何か揉めていたように見えたが、何をしていたんだ?」

 何か言い訳らしきものをしようとした男を遮って、ダールが探るように聞いて来た。

 

 そのダールの顔を見て、誤魔化しは出来ないと悟ったのか、男が開き直ったように言ってきた。

「なんでも遠く離れた場所からケイシーさんが精霊術を使うことが分かったとか嘘を抜かすもんですから・・・・・・」

 男の態度と言葉で、同学年であるはずのダールとの力の差が良くわかる。

 それでもセイヤたちは、余計な突っ込みを入れるような真似はしなかった。

 これ以上、男をヒートアップさせてもいいことがないと、良くわかっているのだ。

 

 男の言葉に、ダールは一瞬だけ眉をひそめてからセイヤとシアを見て、アッという顔になった。

「お前・・・・・・この人たちのこと、知らないのか?」

 その言葉が予想外だったのか、男は眉をひそめた。

「は? ダールさんは、知っているんですか?」

 セイヤとシアのことを見たことも無いような美男美女としか思っていなかった男は、本当にふたりのことを知らなかったのだ。

 

 その反応を見て、ダールは大きくため息をついた。

「お前な。いくらなんでも、このふたりを知らないとか、あり得ないだろう」

 若干批難するように男を見ているダールを見て、セイヤとシアはこれ以上に発展することはなさそうだと安心していた。

 だが、その安心を吹き飛ばすように、男がわざとらしく大きな声を出して言った。

「いや、だって、こいつらが来たのは、戦闘を始めて少し経ってからですよ? そんな遠くから分かるはずがないじゃないですか!」

「・・・・・・ほう? そうなのか?」

 男の言葉に興味を引いたのか、ダールが考えるような顔でセイヤとシアを見て来た。

 

 何となく風向きが変わったことを理解したセイヤが、ここは自分が言うべきだろうと前に出て言った。

「その通りなんですが、わざわざこの場でそれを証明するつもりはありませんよ、先輩」

「ほう・・・・・・?」

 そのセイヤの言葉が挑発に感じたのか、ダールは片眉を上げながら興味深そうな顔でセイヤを見た。

 

 それを見てますます面倒臭そうな顔になったセイヤだったが、何かを言うよりも先に、更に別の声が混じって来た。

「ダール、いい加減にして」

 そう言って訓練場の入り口から姿を見せたのは、セイヤとシアが精霊術を使っていると言っていた女性だった。

「いや、ケイシー、だがな・・・・・・」

「だがなも、なにもないの。この方たちなら遠くから精霊術の気配を感じることなんて、なんてことないんだから。それよりも、訓練を続けましょう。時間が勿体ないわ」

 あっさりとそう言ったケイシーと呼ばれた女性に、セイヤとシアを除く全員の目がキョトンとした。

 

 セイヤとシアに集まっていた視線が、ケイシーに集まったところで、ダールが少し慌てた様子で言った。

「いや、ケイシー。二人のことを知っているのか?」

「何を言っているのよ。貴方だって知っているじゃない」

「いや、そういう事じゃなくてだな。なぜこのふたりが精霊の気配を感じ取れることを知っているんだ?」

 ダールがそう聞くと、ケイシーは少し呆れた様子になった。

「何を言っているのよ。噂話から漏れ聞こえている話を聞けば、分かるじゃない」

 それが分からないのだから聞いているんだが、と続けたそうなダールに、ケイシーはキョトンとした視線を向けていた。

 

 どうやらケイシーにとってはそれが当たり前だと理解したダールは、ため息をついてからセイヤを見た。

「そういうことらしいんだが、間違っていないのか?」

「いや、そういうことと言われても。彼女がどの噂を知っているのかも知らないんだけれど?」

 セイヤがそう答えると、ダールはもっともだと言わんばかりに頷いた。

 

 いつの間にやら先ほどまでの剣呑な空気が消えてしまっていて、突っかかるような気分ではなくなってしまったダールが、頭に手をやりながらセイヤに言った。

「・・・・・・なんだか悪かったな」

「ああ~、いえ。それは別にいいのですが・・・・・・」

 セイヤはそう言いながら、なぜかシアに視線を向けた。

 

 そして、そのシアは、ケイシーを見ながらズバリと言った。

「貴方、エルフの血が混じっているのね」

 シアのその言葉に、ケイシーは目を丸くしながら応じた。

「わかるのですか?」

「いいえ、私たちには分からないわよ?」

「はい?」

 そう言いながら目をパチクリとさせたケイシーに、シアが続けた。

「私には分からないけれど、精霊たちが騒いでいるから」

 シアがそう答えると、ケイシーは口元に手を当てて、驚きの表情になっていた。

 シアが言った言葉の意味を正確に理解できたのだ。

 

 シアの言葉を聞いたケイシーは、深々と頭を下げた。

「まさか、それほどまでとは思っていませんでした」

「別に、頭を下げてもらうほどのことでもないから」

 シアは、ケイシーに向かって、少しだけ慌てた様子でそう答えた。

 

 セイヤを除けば、このふたりの会話の意味を正確に理解している者はほとんどいなかった。

 逆に言えばケイシーは、セイヤとシアの言葉の意味が分かるほどに、精霊術――というよりも、精霊のことに精通していると言える。

 それは、先ほどシアが言ったエルフの血が混じっているということに関係しているのだが、この場でそれを深く言及するほど、セイヤとシアも世間知らずではない。

 当人が触れたくないと思っている可能性もあるので、ケイシーが何かを言ってくるまでは、セイヤとシアが自分たちから話題に出すつもりはなかった。

 

 その配慮を感じたのかどうかはともかく、ケイシーはセイヤとシアを交互に見ながら聞いてきた。

「あの・・・・・・もしよろしければ、そのうちお時間を取ってもらっても構わないでしょうか?」

 それが、エルフの血のことに関してだと察したシアは、すぐに頷き返した。

「勿論。放課後であれば大抵は空いているから、いつでも訪ねて来て」

 シアのその答えに、ケイシーはパッと顔をほころばせた。

 

 そして、これ以上はこの場で話すことはないと言わんばかりにダールを見ながら言った。

「さあ、これ以上、二人を煩わせては駄目よ! いいから練習の続き!」

「お、おう?」

 ケイシーの勢いに押されるようにして、ダールは訓練場へと動き出した。

 

 最初にセイヤたちに突っかかって来た男は、これまでの会話でやる気を失ったのか、特に何かを言ってくる気配はなかった。

 何となく気まずそうな顔をしているが、セイヤとシアは完全に無視をして、その場を離れることにしたのであった。

一般の視点からみたセイヤとシアの実力でした。


――――のつもりでしたが、いまいちきちんと伝わっていないような・・・・・・。

ま、まあ、とりあえずケイシーさんはこのあとも出てくる予定です。

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