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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(7)ちょっとした実験

 くつろぎスペースで朝から何をするでもなく過ごしていたフローリアは、ポツリと呟いた。

「・・・・・・・・・・・・暇だな」

 その言葉に同意するように、シルヴィアとワンリが頷いていた。

「今日は何もすることが無かったんだっけ?」

「ああ、たまたまだがな」

 考助の問いかけに、フローリアはため息をつきながらそう答える。

 

 別にフローリアは仕事人間というわけではないが、女王を引退した後もそれなりに忙しく過ごしている。

 塔の管理や惣菜屋、孤児施設の運営と、細かい物まで上げればきりがない。

 考助から見れば、れっきとした仕事人間といえなくもないが、それを言うと自分に跳ね返ってくるのはわかっているので、自重しているくらいだ。

 そんなフローリアなので、一日空いてしまえば、朝から同じ言葉を繰り返してしまうのも、仕方ないのかもしれない。

 

 というわけで、フローリアが暇すぎて不機嫌になる前に、考助が一計を案じることにした。

「僕はこれから用事があるからいけないけれど、買い物にでも行って来たら?」

「そこは一緒に行く、と言うのではないのか?」

 女性と一緒の買い物に腰が引けている考助に、フローリアが少し呆れたような視線を向けて来た。

「いや、用事があるのは本当の事だし」

 考助にとって幸いだったのは、朝食の時にしっかりと今日は忙しいと宣言していたことだった。

 女性の買い物に付き合うのが大変というのは、世界が変わっても変わらない真理だ。

 勿論、それに付き合うこともあるが、そのために今日入っている予定を崩すことはできない。

 考助は、誰にするでもなく、心の中でそんな言い訳をしていた。

 

 そんな考助の考えを見抜いたわけではないが、フローリアはフンと鼻を鳴らした。

 考助が忙しいというのはわかっているので、突っ込むにも突っ込めないといったところだ。

「まあ、いいか。それよりも、確かに買い物で暇をつぶすというのはいいか」

 フローリアはそう言うと、シルヴィアとワンリを見て言った。

「其方らはどうする?」

「私は行きます。ちょうど見たい物がありますから」

「じゃあ、私も行きます!」

 シルヴィアに続くように、ワンリが少し張り切りながらそう言った。

 ワンリにとっては、考助抜きの女性だけで買い物など滅多にないので、ちょっとだけテンションが上がったのだ。

 

 元気なワンリに笑顔を向けて、フローリアは頷いた。

「それじゃあ、気分転換がてら、買い物(冷やかし)にでも行ってくるか」

「そうですね。たまにはいいでしょう」

「はーい」

 三人で話がまとまったところで、考助が頷きながら言った。

「そう。まあ、何かあるとは思えないけれど、気を付けてね」

 考助が見送るようにそう言うと、三人は思い思いに頷き返すのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 フローリアたちの気分転換の買い物は、昼食を終えて次の目的地に向かうまでは順調に進んでいた。

 だが、シルヴィアが行きたいと言い出した店に向かう途中で、邪魔が入ることとなった。

「おう、姉ちゃんたち。楽しそうじゃねーか。俺たちも混ぜてくれよ」

 そんなことを言いながら男三人が立ちふさがったのを確認して、フローリアはなぜか肩を震わせていた。

 それに気付いたシルヴィアが、少し呆れたような顔で言った。

「リア。珍しくナンパされたからって、そこまで喜ぶことはないと思いますよ?」

 そう。フローリアは、ナンパをされるという事態に、喜んでいたのだ。

 

 そのシルヴィアの言葉に調子に乗ったのか、男三人組は笑いながら言葉を重ねて来た。

「おいおい。ナンパで喜ぶって、今までされたことないんか?」

「ほかの野郎ばかどもは見る目がないなあ」

「折角だから、他の奴何て気にせず、楽しもーぜ」

 シルヴィアは、他の人たちが馬鹿なんじゃなく、貴方たちがそうなんですよと思いつつ、冷めた目で見ている。

 もっとも、その馬鹿者たちは、そんなことにはまったく気付いていなかったのだが。

 

 それはそれとして、男たちの言葉で、すっかり感動(?)が覚めてしまったフローリアは、きっぱりと断りの言葉を返した。

「悪いが、ナンパされたことに感動したのであって、其方たちに誘われて喜んだわけではない」

 フローリアはそう言ったが、残念ながら男たちには通じなかった。

「ひゃはは。それのどこに違いがあるんだよ」

 どうやらフローリアの微妙なニュアンスを聞き分けるほどの頭は持っていなかったようだった。

 

 これは駄目だなとすぐに見切ったフローリアは、これ以上話をしても無駄だと悟った。

「そうか。お前にはわからないか。とにかく、私たちを誘うのは無駄だからあきらめろ」

 フローリアはそう言って、男たちの脇を通り過ぎようとした。

「ハッハハ。そんなことを、俺たちが許すとでも・・・・・・!?」

 男がそう言葉を続けようとした次の瞬間、首元に抜き身の短剣ナイフが突きつけられていた。

 

 それを行ったのは、無表情になっているフローリアだ。

「諦めろ。お前たちでは、どうあがいても私たちには敵わない」

 淡々とフローリアがそう宣言すると、短剣を向けられている男だけではなく、ほかの二人もごくりと喉を鳴らした。

 どうやって近付いたのか、またいつの間に短剣を抜いたのかも分からない早業だった。

 それだけでも、自分たちでは敵わないと、馬鹿な頭でも分かるほどだった。

 

 男が両手を上げて降参の仕草をしたのを見て、フローリアはゆっくりと短剣を懐に戻していった。

 元はそこに入っていた物を、早業で取り出して突きつけたのである。

「まあ、相手が悪かったと諦めるんだな。もし、報復なんてことを考えたら、寸止めなんてことはしないからな?」

 フローリアがそう念を押すと、男たちは一度顔を見合わせてから走り去っていった。

 

 それを見送ったシルヴィアは、少し首を傾げながらフローリアに聞いた。

「随分と乱暴な手段を取りましたね?」

「ああ、いや。ああいう輩にやったらどうなるかを知ってみたかったんだ」

 なんとなく予想はしていたものの、実際とは違っているかも知れないと考えての行動だった。

「それで? 結果はどうでした?」

「まあ、予想通りだったな」

「そうですか」

 あっさりとしたフローリアの回答に、シルヴィアはどうでもいいという感じでそう答えた。

 彼女たちにとっては、ナンパ男たちはその程度のことでしかないのである。

 

 結局、その後は何事もなかったかのように、フローリアたちは買い物(冷やかし?)ツアーを続けていた。

 ワンリが、自分が混ざれなかったことに、少しだけ寂しそうな顔をしていたが、そのときには相手は消えていたのでどうしようもない。

 最後まで第二の犠牲者が出てくることはなく、三人は残りの時間を男たちのことも忘れて、楽しく過ごすのであった。

いきなり抜き身の短剣ナイフを取り出すフローリア。

別に普段からこんなことをやっているわけではありませんw


というわけで、たまに書いてみたくなるテンプレ騒動でした。

誰かさんがいると、全力で回避してくれますから。

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