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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(3)続・ワンリの生活

 アマミヤの塔の管理層で、プチ演奏会が開かれていた。

 演奏会の主役は、勿論ストリープを弾いているミク・・・・・・だけではなく、踊りを披露しているフローリアにも注目が集まっていた。

 今回の会は、考助たちの主要人物だけではなく、セシルやアリサといった管理層に頻繁に出入りしている者たちが勢ぞろいをしている。

 これだけのメンバーが管理層に集まることは滅多にないので、突発的に開かれた演奏会だ。

 中には、ナナやワンリといった眷属組も揃っていた。

 

 そんな中で、ワンリはお供の仲間狐二人と一緒に演奏会に参加していた。

 ワンリは何度かミクの演奏もフローリアの踊りも見たことがあったが、他の二人――アマリとクリは初めてだった。

 ちなみに、アマリは天狐で、クリは地狐になる。

「きちんと見れましたか?」

 フローリアが一曲踊り終わったところで、ワンリがアマリとクリに聞いた。

「は、はい。・・・・・・驚きました」

「あんなことが出来るのですね」

 アマリとクリが驚いているのは、別にフローリアが踊りを踊れるからではない。

 素晴らしい踊りそのものに驚いているのだ。

 

 彼女たち(二人とも女性)は、フローリアの踊りから、ただの体の動きだけではなくそれ以外のものも感じ取っていた。

 それが何かと言うと――。

「こんな場所で、なぜ地脈の力を感じ取ることが出来るのでしょう?」

 クリが不思議そうな顔で首をひねっていた。

 踊りを踊っている間、フローリアの周りを地脈の力と思しきものが渦巻いていたのを、狐たち三人は見抜いていた。

 管理層は、どこかの大地の上にあるというわけではない・・・・・・はずなので、そもそもどこからその力が湧いてきているのかが分からなかったのだ。

 

 そのクリに、ワンリが気付かれないように、そっとフローリアが持っている剣を指した。

「多分だけれど、あれから発しているのだと思いますよ」

 フローリアがもっている剣は、紛れもなく神剣であり、使い方によっては莫大なパワーを秘めている。

 その神剣の力を引き出すことが出来れば、地脈の力そのものを使えるようになってもおかしくはない。

「・・・・・・なるほど。確かに、強い力を感じますね」

 現に、剣をじっと見て確認したアマリが、剣の持っている力を感じて頷いていた。

 

 

「へー、あの劔にはそんな効果もあったんだ」

「お兄様」

 三人がフローリアの踊りに関して話をしていると、たまたまその話が耳に入って来た考助が、感心した様子で混ざって来た。

 考助もあの神剣に関しては、わかっていないことが多い。

 フローリアの踊りに合わせて、地脈の力に類するようなものが作用していたなんてことは、まったく気付いていなかった。

 

 突然話に混ざって来た考助を見て、アマリとクリが慌てて頭を下げた。

 眷属として魔法陣から生まれた彼女たちにとっては、考助は生みの親であり、頭を下げてでも従う相手なのだ。

 ・・・・・・というと堅苦しく感じるのだが、実際は狐に変じれば非常に良く甘えてくるので、考助もあまりその態度は気にしないようにしていた。

 

 それはともかくとして、考助には神剣の劔の他にも気になることがあった。

「ワンリがふたりを連れて来たいと言ったのは、この踊りを見せるため?」

「はい。もしかしたら、アマリやクリであれば、同じようなことが出来るのではと思ったものですから」

「へー。そんなこと出来るんだ」

 この場合は、踊りそのものではなく、地脈の力を使うことを指している。

 アマリとクリは、もともと地脈の力を感じ取ったりなどの力に長けている種族である。

 そのため、ワンリがもしかしたらと、かねてから二人にフローリアの踊りを見せてみたかったのだ。

 

 アマリとクリは、それぞれ天狐と地狐の系統に属しているが、その中でもトップクラスの力を持っている。

 その彼女たちなら、フローリアの踊りを見て、何かを感じてそれを力にできればとワンリは考えたのだ。

 ちなみに、ワンリはアマリやクリほどに、地脈の力に通じているわけではない。

 もし自分がその類の力に通じているのであれば、わざわざこの場に彼女たちを連れて来るようなことはしなかっただろう。

 なぜならば、自分が身に付けて、他の狐たちの前で披露すればいいのだ。

 

 考助から期待するような視線を向けられたアマリとクリは、少し慌てたような顔になった。

「た、確かに、試してみたいと思うことは出来ましたが、実際に上手くいくかは・・・・・・」

「まだ、初めて見たばかりなので、自分でも同じことが出来るかどうかは、やってみないことには・・・・・・」

 それぞれが恐縮したようにそう言うのを見て、考助はクスリと笑った。

「わかっているよ。いきなりやってみてなんて言うつもりはないから。もし、できるようになったら、是非披露してみて」

「ハ、ハイ!」

「その時には、必ず!」

 別の場所で呼ばれて、そう言いながら手を上げて去って行った考助に、アマリとクリは慌てて頭を下げながらそう返した。

 

 その二人の様子を見て、ワンリが少しだけ呆れたような視線を向けた。

「そこまで緊張しなくてもいいでしょうに」

「む、無理です!」

「そんなこと出来るはずありません!」

「そう思っているからこそ、いつまでも固いままなのですよ。狐の時みたく、気楽に触れればいいでしょうに」

 ワンリは、慌てて首や手を振っているアマリとクリを見て、揶揄うような視線を向けた。

 

 そんなワンリに、なぜかアマリとクリがそんなことを言うのかという視線を向けて来た。

「・・・・・・なに?」

 その視線を受けて、何やら身構えながらワンリがそう聞くと、アマリとクリはタイミングを合わせて一度お互いに顔を見合わせてから言った。

「ワンリ様も同じようなものだったでしょうに」

「私たちを揶揄うのであれば、自分も同じ目に合う覚悟があるという事ですね」

 二人がそう言ってくると、ワンリは慌てて右手をパタパタと振った。

「あっ! ごめん、ちょっと今のなし! 取り消します!」

 ワンリもまた、狐の姿の時とはその様子がまったく違っていることは、狐の眷属であれば誰もが知る事実なのだ。

 そこを突っ込まれると、ワンリもなにも言えなくなってしまう。

 

 

 そんな何とも和やかな狐(人型)たち会話を、考助たち主要メンバーが、温かい視線を向けて見守っていたなんてことは、当事者の三人はまったく気付かないままなのであった。

ワンリ主役再びw

何となく話を思いついたからで、特に理由はありませんw

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