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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(1)新たな仲間

ここからは、第13部第6章になります。

 クロがお相手を見つけてからそれなりに月日が経っていた。

 当初は、一緒に居させて様子を見てみようとしていたのだが、特に問題を起こすことなく考助の神域でものびのびと過ごしていたため、ずっと一緒に飼い続けることになっていた。

 その結果、見事にクロの相手――改め、エイファは、三体の子供を産んでいた。

 ここで問題になったのが、クロやエイファは塔の階層で生まれていたため狩りを自然に覚えていたが、その子供たちは生まれた時から考助の神域にいるため、魔物はおろか普通の動物すら狩ることが出来ないでいた。

 さすがにそれは問題だということで、クロたちが狩りをしても大丈夫そうな階層に拠点を移動していた。

 当然その階層には、別のブラックキャットも出てくる。

 あえてそういう階層を選んだのは、子供たちが親離れをした時に、いつでも野生に戻っても良いようにと配慮したためだ。

 その配慮が生きたのか、生まれた三体の子供たちは、ある程度の期間が過ぎると、その拠点から姿を消していた。

 きちんと親離れを果たしてそれぞれの家庭(?)を持つために拠点を出て行ったのだろうと、それに気付いた考助は、半分は寂しく、もう半分は安堵のため息をついていた。

 

 そんなある日、クロがいる拠点に来ていた考助は、子育てから一時的に解放されていたシュレインに呆れたような視線を向けられていた。

「クロもそうだが、エイファも野生だったはずじゃよな?」

「うん? そうだけれど?」

「・・・・・・なぜそんなに懐いているのかの?」

 エイファは、考助の手によって撫でられて、すっかり寛いでいた。

 考助が撫でるのを止めようとすると、もっとと言わんばかりに体を摺り寄せてくるのだ。

 その仕草は、どこをどう見ても体が大きくなった猫にしか見えない。

 

 勿論シュレインは、そんな姿になるのが考助に対してだけとわかっているので、不用意に近付いたりはしない。

「いや、なぜと言われても・・・・・・もともとの性格?」

「そんなわけないじゃろ!」

 そう的確に突っ込みを入れて来たシュレインに、考助はついと視線をずらした。

 

 なぜと聞かれても、考助にも理由はわからないのだ。

 懐く相手モンスターは懐くし、懐かない相手は全く懐こうとしない。

 それは、考助であっても変わらない。

 ただし、その範囲が、考助の場合はとても広いだけだ。

 その広さが普通のテイマーがその辺の池だとすると、考助の場合は海のように広いのではないかとシュレインは疑っている。

 考助にそう言えば、そんなわけがないという答えが返って来るのはわかり切っているので、敢えて口にすることはしなかった。

 

 シュレインがそんなことを考えているとは露知らず、エイファを撫でていた考助は、ふとその手をとめた。

 撫でるのが疲れたわけではなく、エイファが別の所を気にしているような仕草を見せたためだ。

「・・・・・・どうしたの?」

 考助がそう聞くと、その言葉の意味が分かったのか、ひょいと立ち上がったエイファが、拠点の入り口に向かって歩き始めた。

 駆けだしたりしていないことから、何かの危機が迫っているというわけではない。

 さらに、その姿を見ていた考助は、どことなく嬉しそうに跳ねているように感じていた。

 

 同じようにエイファの姿を見ていたシュレインが、首を傾げながら聞いて来た。

「どうしたのかの?」

「さあ? 良くわからないけれど、とりあえず、悪いことじゃなさそうだね。クロが帰って来たかな?」

 クロは、考助が来る前から拠点を離れていた。

 それはよくあることだったので、どこかに狩りにでも出ているのだろうと、考助は特に気にもしていなかった。

 とにかく、考助とシュレインは、エイファの後を追って、同じように拠点の入口へと向かった。

 

 

 そうして考助とシュレインが拠点の入り口付近で見たのは、エイファを観察するように触れ合っている三体のブラックキャットだった。

 さらにその周りには別の三体のブラックキャットもいる。

 後者は、間違いなくエイファが生んだクロとの子供たちだ。

「あ~、なるほど。てっきり巣立ちをして出て行ったのかと思っていたんだけれど、戻って来るタイプなんだ」

「そうなのか? そんな話は初めて聞くがの?」

 そもそも野生のブラックキャットは、あまり群れるタイプではないはずである。

 それが、集団でいるというのも驚きだし、何よりも拠点に戻って来たことがシュレインには不思議だった。

 

 シュレインの言葉を聞いて首を傾げた考助は、

「そうなの? それならあの子たちが特別なのかな? それか、もしかしたら拠点にいたらしっかりと餌が得られるとわかっているから戻って来たとか」

 拠点周辺には、眷属たちと同じように、召還陣による適当な餌の補充がされている。

 そのため、遠征をしなくても餌に困ることはないのだ。

 今、クロが拠点を離れているのは、趣味のようなものだと考助は考えている。

 

 シュレインは、考助の言葉に頷いた。

「後者のほうがあり得そうだの。クロやエイファとの折り合いがつくのであれば、ここで暮らすのは天国だからの」

 くいっぱぐれることがない餌を常に得られるというのは、野生で暮らす者たちにとっては得難い利点なのだ。

 それならば、先住者との折り合いを付けて暮らすのも悪くないと考えてもおかしくはない。

 もっとも、ブラックキャット自体が、もともとそういう生態をしている可能性もある。

 

 

 考助とシュレインがそんな話をしていると、なぜか新たに加わって来た三体のブラックキャットが近寄って来た。

 ただし、三体揃って寄ったのは考助の方で、シュレインではない。

 シュレインは、そんなことになるのではないかと考えていたので、戸惑う考助を見ながら内心で笑っていた。

 いい加減慣れればいいのに、必ず戸惑う考助を見たのが、面白かったのだ。

 

 そんなシュレインを余所に、考助は戸惑いつつも近寄って来た三体のブラックキャットに向かって、少しずつ手を伸ばしていった。

 いきなり触れようとすると噛みつかれる恐れがあるので、いくら考助でもそんな無謀なことはしない。

 考助が手を伸ばしても、新たに加わった三体のブラックキャットとは、なかなかその手に触れようとしてこなかった。

 それにしびれを切らしたのか、エイファの子供たちが近寄って来て、思い思いに考助の手に触れて行く。

 それを見て、ようやく決心ができたのか、三体のブラックキャットがそっと考助の手に触れてきた。

 

 一度手に触れてしまえば、あとは早かった。

 自ら体をこすりつけたり、手をぺろぺろと舐めたりと、やりたい放題になって来る。

「ふむ。無事にこうなったかの」

 ある意味で予想通りの光景に、シュレインは安堵さえしていた。

 影に控えていたミツキが討伐するような事態にならなくて、ほっと一安心といったところだ。

 

 クロとエイファの子供たちがいたからなのか、拠点のトップとして服従を示しているのかはわからないが、とにかく新たな三体のブラックキャットは無事に拠点への適応を果たしていた。

 ――考助への挨拶を無事に終える。

 それが、これから拠点で住まうことになるブラックキャットの最大の試練となることを、このときの考助はまったく予想もしていないのであった。

順調にたらしこんでいきますw

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