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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(13)罰と結果

 ミロへの罰の結果を確認するために、カルタスは学園の闘技場に姿を見せていた。

 カルタス自身は、冒険者からの成り上がりで討伐隊へと入っているので、学園に通ったことはない。

 ただし、クラウンの闘技場とさほど雰囲気は変わらないので、特に戸惑うことなく決闘を観戦できていた。

 今回行われる罰は、複数人いるが、ミロは最初にあたっている。

 ある程度の仕事をこなしてから会場に入ったカルタスは、まだ対戦が始まっていなかったことに安堵していた。

 

 そして、いざ対戦が始まると、カルタスは思わずうめき声を上げていた。

「・・・・・・なるほど。あの面々の署名が入るわけだ」

 ミロは既にミクに対して、何度も打ち込んでいるが、そのどれもが決定打にはなっていない。

 それどころか、カルタスの目から見ても、ミクはいつでもミロにとどめを刺せるほどの余裕があることが分かった。

 正直なところカルタスは、同年代の子供で、これほどの差がつくとは考えてもいなかった。

 勿論、中には突き抜けた実力を持つ者もいるが、それは一握りの天才と呼ばれるべき存在である。

 そして、ミロを相手にしているミクは、まさしく天才的な才能の持ち主といえた。

 

 もっとも、カルタスのその感想をピーチ辺りが聞けば、苦笑を返すだろう。

 勿論、まったく才能が無いとは言わない。

 だが、ミクの技は、幼いころからの積み重ねによって作られたものだ。

 その努力なくして、天才と呼ばれるほどの実力をつけることは不可能なのである。

 

 

 今回の決闘は、学園の関係者だけが呼ばれている。

 さすがに学生全員が入れるほどの大きさの闘技場ではないので、一部の者たちだけが入っていた。

 その学生たちは、小柄なミクが、対戦相手を次々に打ち負かしていくのを見て、呆然としていた。

「おいおい。次で五人目だぞ?」

「どこまで行くんだ?」

「というか、余裕すぎないか? どんだけ実力差があるんだよ」

 そんな感じで、口々に感想を漏らしている学生たちも、最後の方は呆れたような声になっていた。

 

 五人目ともなれば、ミクは余裕で攻撃を躱す動きを見せて、相手が必死になって追いかけまわすという、まるでコントのような状況が繰り広げられていた。

 こんな状況であれば、その場にいる誰もが、ミクの実力と相手との差を理解できるだろう。

 しかも、五人目の相手は、高学年の討伐隊を目指すために専門で戦闘を習っている、それなりに名がある男だった。

 その男を相手に、ミクはまるで遊んでいるように立ち回っているのだから、まさしくミクの前に立って戦闘を行った者にとっては、罰としかいいようがない。


 今回ミクと戦った者たちは、今後「あの小柄なミクと戦って負けた」という評価がずっとついて回る。

 それと同時に、騒動についても付随してついて回ることになるだろう。

 彼らがやったことは、余計な尾ひれを付けて噂を流したことだが、その評価は地に落ちたと言っていい。

 結果として、ミクと戦った者たちは、実際に決闘で受けたダメージ以上の悪い評価を得ることとなった。

 これが、今回の騒動に対する罰であることは、学園中に知られることとなるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 騒動を起こした五人に対する制裁の結果は、きちんと学園中に知られることとなった。

 それに伴ってミクの実力が知れ渡ることとなり、最終的には目的を果たしたといえるだろう。

 だが、その当の本人であるミクは、数日後、自宅で不満げな表情を浮かべていた。

「あらあら~? 決闘は上手くいったのでしょう? なぜそんな顔をしているのです~?」

「・・・・・・お付き合いの申し込みはなくなったのはいいけれど、その代わりに、模擬戦の申し込みが増えた」

 ピーチがそう問いかけると、ミクはムスッとした顔のままそう答えた。

 ミクにとっては、どちらもストリープに触れる時間が減るだけなので、何の変りもなかったのだ。

 

 そんなミクに対して、ピーチはコロコロと笑った。

「それは仕方ないですね~。有名税と思って諦めるしかないでしょう」

「む~。他人事だと思って・・・・・・」

 ピーチの突き放すような言葉に、ミクは表情を変えないまま顎をテーブルにつけた。

 行儀が悪いと言われようが何だろうが、今はまともに起きている気分ではない。

 

 ピーチの言葉は、あとは自分でどうにかしてみせろと言っているのだ。

 そもそもの目的であるミクの実力を学園中に知らしめることが出来たので、おかしな実力行使に及ぶ者はいなくなるはずだ。

 ピーチとしてはその結果が得られれば十分で、あとはミク自身で解決するべきことだと考えている。

 そもそも、告白にしても模擬戦の申し込みにしても、学園の学生にとっては、ある意味で青春の一ページともいえる。

 それを親が口出しをして止めるなんて気は、ピーチにはない。

 もっともミクの場合は、数が数なので、そんなに微笑ましい結果にはならないだけだ。

 

 ピーチを当てにする事が出来ないとわかったミクは、相変わらずの表情のまま、たまたま家に来ていたミアを見た。

「ミアお姉様だったら、どうしていますか?」

「うーん。どうと言われましてもねえ。いまのブームが終わるのを待つか、まともに相手をするのを止めるかしかないでしょうか」

「・・・・・・止める?」

「どうせミクの事だから、いちいち来た相手を丁寧に対応しているのですよね? そんなことだから、時間が取られてしまうのですよ」

 ミアがそう言うと、ミクは目から鱗が落ちたという顔になっていた。

 ミクの考えでは、そんなことは思いつきもしていなかったのだ。

 

 そのミクの顔を見て、ミアが苦笑をして見せた。

「やっぱり思いつきもしていませんでしたか。そのくらいのことは闇の者であれば、いくらでも教えられていると思ったのですが?」

「うーん。微妙なところですね~。人には向き不向きというものがありますから」

「ああ、そういうことですか」

 ピーチの答えに、ミアは納得の表情になって頷いた。


 勿論ミクも、知識として知ってはいたが、いざ実戦となると使いこなせなかったというわけだ。

 その辺りは、当人の性格にも関わって来るので、一概にマイナス評価になることはない。

 それ以外の方法で切り抜けられるのであれば、むしろそちらを推奨するというだけだ。

 ただし、今回に限っていえば、その方針の裏を突かれたというだけのことである。

 むしろ、ミクもようやく実感として知識が追い付いたので、今後は同じような失敗をしないはずである。

 また、そうでなくては困るというのが、ピーチの思いなのだが、それを顔に出すようなことはないのであった。

戦闘はサクッと終わらせるいつものクオリティですw


今回騒ぎを起こした彼らは、二度とラゼクアマミヤで表舞台に上がってくることはないでしょう。

冒険者で身を立てるのなら別として。

それが彼らに対する罰です。


ミクは、まあ、落ちという事でw

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