表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
1251/1358

(10)兄と妹の語らい

 ミアから改めて話を聞いたトワは、その場で大きくため息をついた。

「なんというか・・・・・・なぜ、そんなことになるのでしょうか?」

「あら。そんなことをお兄様が仰るのですか?」

「うん? どういう事?」

 ミアが言った言葉の意味が分からずに、トワが首を傾げた。

「学生時代は、お兄様も結構騒がしくしていたと思いますよ?」

 ミアが直球でそう言うと、トワが少しだけ傷ついたような顔になって「そんなことない」と返そうとした。

 

 だが、ここで、トワにとっては予想外の伏兵が現れた。

「・・・・・・・・・・・・クスッ」

 ミアとトワのやり取りを聞いて、ダニエラが思わず吹き出してしまったのだ。

「・・・・・・ダニエラ」

 どうにか誤魔化そうとしたトワだったが、台無しになってしまった。

 そもそもダニエラは、ずっと同じ学年たったので、トワやミアのやらかしのほとんどを知っている。

 そのダニエラに笑われてしまっては、トワとしてもやり過ごすことは不可能だ。

 

 ダニエラは、渋い顔をしたトワに謝ろうと頭を下げたが、その顔はまだ笑ったままだった。

「ハハ。やはりお兄様は、ダニエラに弱いですね」

「何を言っているのですか。この場合は、ミアも同類でしょう」

 学生時代に色々と騒ぎを起こしたのはトワだけではなく、ミアも同じだ。

 

 トワと同じように反論しようとしたミアだったが、チロリとダニエラを見て諦めた。

「・・・・・・これ以上は不毛になりますからやめませんか?」

「そうですね。それがいいでしょう」

 この件に関しては、どう頑張っても勝てないと悟ったトワとミアは、あっという間に手打ちにするのであった。

 

 

 そんなどうでもいい話を挟みつつ、トワとミアは本題に入った。

「それで? ピーチ母上は、何か仰っていましたか?」

「いいえ、まったく。完全にお任せといった様子でした。ただ、やはりミクの事ですから・・・・・・」

「下手な対応をすると、父上が出てきますか」

「恐らく」

 トワの言葉にミアが頷き、話を聞いていたダニエラが青ざめた。


 繰り返しになるが、ダニエラはトワ兄弟がいる学園で育ってきたので、考助が出てくるという意味を最もよく知っている世代になる。

 勿論、考助が直接姿を見せたことがあるわけではないが、トワたちが学園で起こした騒ぎのほとんどを考助が抑えたという認識になっているのだ。

 実際には、考助は動かずにトワたちが直接解決しているのだが、後ろに現人神がいるというだけで、抑止力になっていた。

 その抑止力を肌で一番感じていたのが、ダニエラたちの世代ということになる。

 

 ただ、そんなダニエラの顔を見て、トワが苦笑を返した。

「そこまで引く必要はありませんよ。結局、父上を虎の威にして解決していただけですから。父上が直接関わっていたことはほとんどありません」

「そうなのですか?」

「そうなのですよ。ただ、今回の場合は、それが通用するかどうか・・・・・・」

 ラゼクアマミヤという国ができたばかりの頃は、まだ現人神の恩恵というのを直接感じ取ることができていた。

 そのため、その威光を利用することもできた。

 

 だが、クラウンカードを始めとして考助が作って来た功績は、今となっては当たり前の物となっている。

 そうしたものに最初から囲まれて育ってきた世代は、さほど現人神の恩恵というものを直接意識する機会がないのだ。

 そのため、トワたちの時に通用した方法が、ほとんど使えない可能性がある。

 要するに、考助の子だというだけでは、直接の抑止力としては弱いということだ。

 

 こうした状況は、考助自身が望んでいる部分もあるため、一概に駄目だというわけではない。

「ラゼクアマミヤは、父上の威光を弱めて運営をしていくという方針には変わりないですが・・・・・・こうなってくると面倒ですね」

 あまりにも直球すぎるトワの感想に、ミアは苦笑を返した。

 その顔には、出来れば否定したいが否定しきれないと書いてある。

「いつまでも直接神が関わっていたら駄目だというのが父上の希望ですからね」

「わかっています。私もその方針には賛成ですから」

 国家の運営にいつまでも神が関わってていたら、必ずどこかで歪になってしまう。

 そう考えているからこそ、トワは考助の影響力が弱まるように心血を注いできたのである。

 勿論、国の守神としての扱いは変わることがない。

 あくまでもトワが影響力を削いできたのは、直接の繋がりが無くなるようにすることだ。

 

 また話が逸れたので、ミアは本題に戻すついでに気になっていたことを聞くことにした。

「ところで、今回の件は、完全にトビに任せるつもりですか?」

 ミアがそう聞くと、トワは少しだけ考えるような顔をして、続けて首を左右に振った。

「いえ。やめておきましょう。あくまでも最後の決断は私がします。勿論、トビにも関わってもらうつもりではいますが」

「わかりました。では、ピーチ母上にはそのように伝えておきます。あ、ミクはどうしますか? 一応、もともとの目的が果たせないと意味がないのですが?」

 ミクが実力者であることを知らしめるために、今回の騒ぎが起こったのだ。

 それが周知されなければ、余計な騒ぎを起こしてしまっただけということになってしまう。

 それは、トワとしてもミアとしても避けたい。

 

 ミアの問いに、トワは再び考え込む顔になった。

「そうですね・・・・・・。ミクには最後の最後に出て来てもらうとしますか」

「わかりました。それも含めて伝えておきます」

「頼みます」


 トワがそう言って頷くのを確認したミアは、スッと立ち上がった。

「それでは私はもう行きます。お兄様もお忙しいでしょう?」

 いかにも忙しい兄のことを気遣っての言葉・・・・・・と思われたが、何故かトワはジト目をミアに向けた。

「そう思うのであれば、手伝ってもらってもいいのだよ?」

「あら嫌ですわ、お兄様。私ごときに手伝いなんか出来るはずもないでしょう」

「ミア、出来ればそういうセリフは、もっと自信なさげに言ってくれませんか?」

 トワの目には、自信満々・・・・・・とまではいかないまでも、十分に自信があるように見えた。

 そして、実際ミアはトワの手伝いが出来るくらいの英才教育を受けてきている。

 残念ながら、その教育が生かされたことは、今までほとんどないのだが。

 

 ミアは、トワの突っ込みを適当に躱しながらその場を辞した。

 先ほどのはあくまでも兄妹の気楽なやり取りでしかない。

 そして、久しぶりにミアとの語らいの時間を過ごしたトワは、気分も上々にその日の仕事をこなすのであった。

久しぶりにトワとミアが出ずっぱりになりました。


このあとトワは、トビを呼び出して話をしています。

その内容はまた後程。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ