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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(9)保護者の動き

 ミクから連絡を受けたピーチは、早速管理層へ向かった。

 考助に話をするためではなく、管理層に居るはずのミアに話をするためだ。

 ミクが学園に通うようになって、ミアは城に顔を出す理由がなくなっている。

 それでも兄であるトワに呼ばれたりするので、まったく必要ないというわけではないのだが、一時期よりはまた塔の管理業務に集中できている。


 というわけで、ピーチはメイドゴーレムを通して、ミアに連絡を取った。

 基本的にはアマミヤの塔と繋がりが無いリトルアマミヤは、考助が作った転移陣を使って直接行って話をすることしかできない。

 だが、度重なるバージョンアップの末に、メイドゴーレム同士は移動しなくても通信ができるようになっているのである。

 ある意味でメイドゴーレムは、考助とコウヒ&ミツキの合作作品と言える状態になっている。

 

 そんなメイドゴーレムに、ミアに連絡を取ってもらったピーチは、しばらくくつろぎスペースで待っていた。

 別にピーチがリトルアマミヤに行ってはいけないということはないのだが、何となくお互いに踏み込める場所を線引きして来た結果が、それである。

 ピーチから連絡をした際に、そこまで時間はかからないという返信も来ていたので、ピーチはそのまま待つことにしたのだ。

 

 

 ピーチが連絡をしてから三十分も待たずに、ミアが少し慌てた様子でくつろぎスペースにやって来た。

「ご、ごめんなさい。お待たせしました」

「良いのですよ~。ここで待つと決めたのは私ですし」

 しまったという顔をしているミアに、ピーチはのんびりと手を振りながら答えた。

 確かにミクの事で急いではいるのだが、三十分程度では大した違いはない。

 これが半日以上待たされるとなると、また話は別だ。

 

 くつろぎスペースにあるソファにミアが座るのを待ってから、ピーチはミクに起こっていることを話し始めた。

 その話が進むごとに、ミアの呆れ度合いが深くなっていくようだった。

「・・・・・・・・・・・・何を考えているのでしょうか、後輩たちは・・・・・・」

 そして、ピーチの話を最後まで聞き終えたミアがこぼした感想が、これだった。

 流石のピーチも、学園の生徒たちをフォローすることは出来ない。

 まあ、実害を受けているのがミクなので、フォローするつもりもないのだが。

 

 額に手を当てて呆れているミアに、ピーチが最後に付け加えた。

「このままミクだけに対処をさせてもいいのですが、それはやらない方がいいと思うのですよね~」

 ピーチらしいのんびりとした言葉だったが、ミアは慌てて頷いた。

「そうですね。それは止めたほうが良いでしょう」

 ミクがどう対処するのかきちんと理解できたミアは、更に続けた。

「私が動きますから、しばらく待ってもらっていいでしょうか?」

「わかりました~。ミクには少しの間学園には行かないように言っておきます」

「そうしてください。そんなにお待たせしませんので」

 ピーチの答えにホッとした表情を浮かべたミアは、頷きながらそう答えるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ピーチに自分が動くと宣言したミアは、早速転移門を使って第五層にある城に向かった。

 勿論、一番いいのはトワに話をすることだが、いくらミアが実妹であったとしても、一国の王とすぐに会えるはずもない。

 そのためミアは、まず王妃であるダニエラと面会をした。

 ダニエラも忙しいことには変わりないのだが、貴族が少ないラゼクアマミヤの王妃は、お茶会などが少ないので、比較的簡単に会うことができるのだ。

 ただし、それはミアだからという注釈がつくのだが。

 

 基本的にミアとダニエラが話をするときは、ミクの演奏についてダニエラからお願いをする場合が多い。

 ミアが緊急と言ってダニエラとの面会をすることはほとんどない。

 そのため、ミアの前に姿を現したダニエラは、王妃らしいドレスに身を包まれながらも、その顔には焦りが浮かんでいた。

 本当は王族に必要なのは顔色を出さないことなのだが、相手がミアという事で、その辺は気にしていない様子だった。

 

 きちんと立って出迎えたミアに、出迎えられたダニエラは少し焦った顔になった。

「どうぞお座りください。私は王妃ですが、順位でいえばあなたのほうが上なのですから」

 トビが生まれている時点で、ミアの王位継承順位は下がっている。

 それでも、ラゼクアマミヤの王位を継げるという意味では、明らかにミアのほうがダニエラよりも上だ。

 というよりも、ダニエラは王位継承の資格は持っていない。

 勿論、対外的には、王妃であるダニエラのほうが上のこともあるが、そこには明確な差があるのだ。

 

「それで、なにがありましたか?」

 社交ではいきなり本題に入るのはタブーとされているところもあるのだが、ダニエラはミア相手にそんなしきたりを守っても仕方ないと、すぐにそう聞いて来た。

 ミアもそちらの方があり難いので、すぐにピーチから聞いた話を切り出した。

 

 そして、話を聞き終えたダニエラといえば・・・・・・、

「何を考えているのでしょう、後輩たちは・・・・・・」

 ミアとまったく同じ感想を漏らしていた。

「私もそう思います。・・・・・・が、起こってしまったことは仕方がないので、対処するしかありません」

「全くそのとおりですね。すぐにでも夫に話をしますか?」

「そうしたほうが良いと思いますが、大丈夫なのですか?」

 トワのスケジュールを把握しているわけではないミアは、確認するような視線をダニエラに向けた。

 

 ミアとは違って、ある程度把握しているダニエラは、すぐに頷いた。

「ええ。今日でしたらさほど重要な会合はなかったはずです。今から私が行けば、話は通ります」

「では、お願いしてもいいでしょうか? 私は適当に待っていますので」

「流石に王妹を適当な場所で待たすわけには行きませんよ」

 ダニエラは苦笑しながらそう言って、傍に控えていた侍女に視線を向けた。

 その視線の意味をきちんと理解した侍女は、すぐにミアが待つのにふさわしい部屋の準備に向かう。

 

 まずはトワに話をしてからということになったので、ダニエラはミアに失礼しますと断ってからすぐに動き始めた。

 なんだかんだでダニエラもフットワークが軽いのだ。

 中には落ち着きがない王妃と揶揄する者もいるが、基本的には好意的に受け止められている。

 勿論、ミアもそのうちのひとりで、ダニエラの後姿を好ましそうに見送っていた。

 そして、ダニエラの話を簡単に聞いたトワが、ミアの待つ部屋に来るのはそれから一時間も経たない頃だった。

慌てる保護者。と、いったところでしょうかw

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