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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(7)ミクの能力

 ピーチとの通信を終えたミクは、カーリとダーリヤに頭を下げた。

「ご面倒をおかけして、申し訳ありませんでした」

 ミクのその台詞を聞いたカーリは、なぜか盛大なため息をついた。

「あのね、ミクちゃん。私たちはもう義姉妹なんだから、面倒なんて思ったらだめよ!」

「いつでもいいから来て」

 後からそう付け加えられたダーリヤの言葉に、カーリはウンウンと頷いた。

 

 カーリもダーリヤも、ミクの母親であるピーチには、散々お世話になっている。

 主に、戦闘力強化という意味において。

 それを考えれば、今となっては義姉妹になったミクと話をすることくらいは、なんの問題もないのである。

 ただ、ミクが今回のことで申し訳なく思うことも理解している。

 

 そのため、カーリはさらにこう続けた。

「まあ、そういってもミクちゃんのことだから、気にはするのでしょうけれどね。それだったら、一度、私たちのために、ストリープの演奏でも聞かせて?」

「えっ?」

 カーリの提案に戸惑うミクだったが、ダーリヤはそれはいいとばかりに笑顔になった。

「それがいい。今度、またあそこに行くから」

 ダーリヤが言っているあそこというのがどこであるのかは、わざわざ口にしなくても、この場にいる者であればすぐに察することができる。

 

 二人の義姉からの提案に、最初は戸惑っていたミクだったが、やがて笑みを浮かべて頷いた。

「そういうことでしたら、いつでもお受けいたします」

 大勢の前で弾く演奏も好きなミクだが、やはり最初の頃から繰り返している少人数相手の演奏も好きなのだ。

 ミクにとっては、カーリとダーリヤの提案は、願ったりかなったりといったところだった。

 

 

 自分の言葉に笑顔になって頷いているカーリとダーリヤに、もう一度頭を下げたミクは、その場を辞した。

 そして、それを見送ったカーリとダーリヤは、ミクが去った居間で彼女についての話をしていた。

「――ねえ、ダーリヤ?」

「なに?」

 いつものように、短く、それでいながらきっちりと応答して来たダーリヤに、カーリはわずかに間を開けてから聞いた。

「貴方だったら、ミクちゃんに勝てる?」

 カーリがそう問いかけると、珍しくダーリヤは少しの間考え込んだ。

 言葉少ないダーリヤだが、聞かれればきちんと答えるし、時間をかけることも少ない。

 それだけ今の質問が、時間をかけて考えるべきものだったということだ。

 

 じっくり一分ほど考えていたダーリヤは、まっすぐにカーリを見ながら答えた。

「一対一でまともにあたれば勝てると思う。でも専門分野・・・・で来られたら、無理」

「あ~、なるほど。やっぱりそうなるかあ」

 ダーリヤが言った専門分野がなんであるかすぐにわかったカーリは、納得した顔で頷いた。

 確かにそれなら自分もそうだろうなと、カーリは思ったのだ。

 

 カーリとダーリヤは、ピーチとは違って、直接ミクと相対したことは一度もない。

 だが、普段の行動を見ている限りでは、ピーチに限りなく近い動きをしていることくらいは気付いていた。

 勿論、それがどれくらいの差があるのかはわからない。

 それでも、相当な実力があるということはわかっている。

 もしかしたら、リクを相手にしても、まともに打ち合えるのではないかというその想像は、その日の夜、ミクが来たことを話したときに判明することになる。


「ああ、それは、そうだろうな」

 と、リクが夕食の席であっさりと頷いたのだ。

 リク曰く、直接戦ったことは一度もないが、負けはしないが勝つのも容易ではないだろうということだった。

 それを聞いたカーリとダーリヤは、同時に大きなため息を吐くことになるのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ミクが噂の中心から逃げて、リク家に避難をしていたその頃。

 異母兄姉であるセイヤとシアは、のんびりと昼食を取っていた。

 ミクに関しての噂が流れていることは知っていたが、下手に自分たちがどうこうするよりも、優秀な妹に任せてしまったほうが良いとわかっていたのだ。

 それに、この程度の騒ぎであれば、当人がどうにかしてしまうという信頼感もある。

 むしろ、自分たちが下手に手を出せば、余計な混乱を招きかねないという不安のほうが強かったのである。

 

 そんなわけで、セイヤとシアは、ある程度仲良くなっている友人たちといつも通り食事をしていたというわけだ。

 もっとも、友人たちは、戸惑いながら食事をしていたのだが。

 セイヤとシアは、一応そのことに気付きながらも、触れないようにしていた。

 

 そして、何とも言えない緊張感(?)のもとで行われていた昼食だったが、ついにその均衡が破られることとなる。

 周囲の雰囲気と、自身の好奇心に負けた友人のひとりが、セイヤに向かって問いかけたのだ。

「セイヤ、こんなにのんびりしていて大丈夫なのかい?」

 ちなみに、セイヤたちはいつも通り、クラスの中で渡された弁当を食べていた。

 そのため、その質問が出た瞬間、クラスの中に残っていた者たちの注目(注耳?)が集まった。

 

 一方で、質問を投げかけられたセイヤは、ごくごく普通の態度のまま答えた。

「うん? どういうこと?」

「いや、今、お前の妹が大変なことになっているんじゃないか?」

「ああ、そのこと」

 セイヤの中では、今頃ミクは自分で対処していると考えていたので、ほとんど頭の中からそのことは消えかかっていた。

 そのため、友人から問いかけられても、すぐには思い浮かばなかったのだ。

 

 いくらセイヤでも周囲の様子にはきちんと気付いている。

 その上で、どうという事はないという感じで肩をすくめながら友人に向かって答えた。

「まあ、ミクだったら、自分でどうにかしてしまうと思うから、下手に動かないほうが良いかな」

「そうよね」

 あっさりと言ったセイヤに追随するように、シアものんびりとした様子で頷いた。

 ここでシアの意見を言っておかないと、それはそれで面倒なことになると考えたのだ。

 

 セイヤとシアの答えに、友人たちが何とも言えない顔になる。

「あ~、ちょっといい?」

「なに?」

 今度は自分の友人が聞いて来たので、シアがそちらを見て首を傾げる。

「貴方たちの妹って、そんなに優秀? 私たちの一つ下だと思うのだけれど?」

「優秀かどうかと聞かれれば、優秀よね?」

「そうだね」

 シアに問われて、セイヤも頷きながらそう答えた。

 少なくとも、セイヤとシアは、自分たちがミクよりも上にいるとは、いろんな意味で考えていない。

 

 そんなふたりの思いに気付いたのか、気付いていないのか、クラスメイトたちは非常に微妙な表情になった。

 彼らが知るミクの情報は、ストリープが上手で、物静かでおとなしいという話しか聞いていない。

 先日、セイヤとシアがミクの実力について話をしたが、実際に戦うところを見たわけではないので、この程度の認識しかないのだ。

 それなのに、セイヤとシアがこんな態度でいるのが、何とももどかしいと思うのも当然だった。

 

 そんな彼らが、ミクの兄姉であるセイヤとシアと会話をしているうちに、当人がとっとと学園から逃げ出した(?)と聞くことになるのは、のんびりとした昼食を終えた直後のことだった。

当初の予定では、そんなつもりはなかったのですが、いつの間にかミクがメインの章になっていますね。


まあ、もう今更なので変えるつもりはありませんがw

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