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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(5)答え合わせ

 未だに頭を悩ませ続けるセイヤとシアを見ながら、コレットは大きくため息をついた。

「セイヤ、シア。まだわからないの? そろそろ答えを教えるわよ?」

 コレットがそう言うと、二人は焦ったように顔を上げてコレットを見た。

「ちょ、ちょっと待ってください、母さま!」

「そ、そうよ! まだ早すぎる!」

 その答えに、コレットはまだ粘れる根性があるのかと感心したが、そういうわけにも行かない事情というものがある。

「それは構わないけれど、そろそろ寝ないと明日起きれないんじゃないの?」

 結局、セイヤとシアは、夕食を食べて、さらに家族団らんで寛いでいるときもずっと悩み続けていたのだ。

 とはいえ、さすがに時間が経ちすぎていて、あまり良い状態とはいえなかった。

 自分で考え続けるというのはいいのだが、それによって他をおろそかにしてしまっては意味がない。

 

 コレットの言葉に、セイヤとシアは「ウッ!」と言葉を詰まらせた。

「まあ、今回のことに関しては、貴方たちのことを良くわかっている私が、ちょっと意地悪し過ぎたということもあるけれどね」

「意地悪?」

 意味が分からずに首を傾げるシアに、コレットは苦笑を返した。

「そう。話の流れでそうなっちゃったけれど、いかにも重大な秘密がある! ――みたいな感じになったでしょう?」

「そう・・・・・・かな」

 コレットの言葉に、セイヤが一応納得したように頷いた。

 

 セイヤとシアはあまり意識していなかったが、会話の流れでコレットが言ったように、思わせぶりな展開になっていたことは否めない。

 ピーチやミクもそれに加わっていたのだから、二人がそのことに気付けなかったのも当たり前と言える。

 そしてそれが、今回の話の肝だといえる。

「あのね。ミクの実力を表に出す理由だけれど、あの子の種族のことを考えなさい」

 セイヤとシアは、今は既に自室に行ってしまったミクのことを思い浮かべた。

 

 といっても、当たり前だが、ミクの種族のことはすぐにわかった。

「ミクの種族は、サキュバス・・・・・・?」

 途中不安になって首を傾げたセイヤに、コレットはコクリと頷いた。

「まあ、正確な種族がなんであるかは、今回はあまり関係ないから、今はそれでいいわ。それで? サキュバスは、この塔で何をしているの?」

「なにって、それは・・・・・・裏の仕事?」

 セイヤもシアも、サキュバスたちがなにをしているのか、きちんと認識している。

 当たり前だが、ミクがそのための修行をしていることもわかっていた。

 でなければ、友人たちにあんな思わせぶりな説明は、できなかっただろう。

 

「その裏の仕事は、全ての存在に隠しきれていると思う?」

「いや、まさか!」

 コレットの問いに、セイヤは慌てて首を左右に振った。

 そんな奇跡みたいなことができているのであれば、そもそも以前のような騒ぎは起きていない。

「そうね。この塔にはサキュバスがいて、きちんとほかの国にもあるように、裏の仕事を任されている。そのことは、当然だけれど一部の者たちにとっては当たり前の認識になっているのよ」

「当たり前・・・・・・あっ!?」

 コレットの言葉を繰り返したシアが、突然何かに気付いたかのように声を上げた。

 そして、それを少し驚いて見たセイヤも、すぐに何かに気付いたような顔になった。

 

 セイヤとシアの顔を見ていたコレットは、やっと気づいてくれたかと心の中で安堵していた。

「やっとわかった? それじゃあ、先に気付いたシア、答えをどうぞ」

「え、えーと。ミクのことは裏の人たちにはとっくに知られている。であれば、最初からその実力を表に見せたほうがいい・・・・・・?」

「残念。それだけじゃあ、満点は上げられないわよ」

 シアに向かってそう言ったコレットは、今度はセイヤに視線を向けた。

 

 その意味をしっかりと理解したセイヤは、少し慌てて考えるような顔になった。

 セイヤもシアと同じような答えしか持っていなかったのだ。

「え、えーと・・・・・・。あっ、そうか! ミクの実力があるのはわかっている。でも、実際にはどの程度なのかは、完全には把握されていない?」

「そうそう。それで?」

 先を促すようにコレットが相槌を打ったのを見て、セイヤが幾分安心したかのような顔になってさらに続けた。

「ミクが出す実力は、本来のものではなく、実際にはかなり抑えて、監視している人たちを攪乱する・・・・・・のかな?」

「あー、なるほど」

 セイヤの説明に、シアが納得したような声を上げた。

 

「まあ、百点満点ではないけれど、ほぼほぼ正解、かな?」

「ほぼほぼ?」

 まだ何かあるのかと首を傾げるセイヤに、コレットが当然だとばかりに頷いた。

「それはそうよ。ミクが学園の中で実際に一番実力があるかは、やってみないとわからないから」

「えっ!? それは・・・・・・」

 実感としてそれはないと言いたかったセイヤだったが、コレットが微笑んだのを見てそれ以上言うのはやめておいた。

 先ほどまで散々『普通の』育ちではないと言われていたので、ほかにも何かあるのかと疑心暗鬼になってしまったのだ。

 

 そのことに気付いて内心でため息をついたコレットだったが、気付かなかったふりをして続けた。

「まあ、ほとんどその可能性はないと思うけれどね。でも、本当にそうだというのは、実際に確かめてみないことにはわからないわよね? それに、実力を知るには、別に相手に勝つ必要はないしね」

「はー、そういうものなのね」

 半ば感心したようにそう返したのは、シアだった。

 シアが感心したのは、勝つ必要がない、というところではなく、コレットが言った駆け引きの部分だ。

 コレットはあくまでも、ミク側のことを前面に出しているが、逆に相手側の思惑も分かるように話をしている。

 ここまでヒントを出されれば、そのくらいのことは、セイヤやシアも想像することができる。

 

 感心しているのはシアだけではなくセイヤも同じだ。

 その二人の様子を見て、コレットはまとめるようにパンと両手を合わせた。

「さあ、これが答えよ。納得できたら、そろそろ寝なさい。明日も学園なんだから」

「「はーい」」

 コレットの言葉に、セイヤとシアは素直にそう返して同時に立ち上がるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 セイヤとシアが寝るために自室に入ったのをリビングで確認したコレットは、そっとため息をついた。

「お疲れ様です~」

 そんなコレットの声をかけて来たのは、当然というべきか、ピーチだった。

「疲れたといえば疲れたけれど、子供の為なら大したことはないわよ」

「そうですか~? まあ、気持ちはわかりますが、あまり過信はしないでくださいね。・・・・・・お互いに」

 そっと付け加えられたその言葉に、コレットは苦笑を返した。

 思い当たることは、多々あったのだ。

 

 自分を気遣ってくれたピーチに、コレットは改めて少し頭を下げた。

「どうもありがとう。セイヤとシアの為に、いろいろと手間を掛けさせて」

「いいのですよ~。それに、ちょうどいいタイミングなのは間違いないのですから。セイヤとシアがいて、トビ殿下もいらっしゃる。ここを逃すとミクとしても少し困ったことになりますから」

「そう? それならいいのだけれど」

 ピーチの言葉に、コレットもそれ以上のお礼は言わずにあっさりと引き下がった。

 ここで無駄に謙遜し合っても意味がないと、お互いにわかっているのである。

大した理由ではなかった・・・・・・ですよね?w

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