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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(2)シアの状況

 ミクがセイヤのもてっぷりを確認していたその頃。

 双子の妹であるシアはというと、同級生たちとガールズトークに花を咲かせていた。

「――というわけで、今日こそはっきりさせてもらいますわよ」

「は、はあ・・・・・・」

 何やら気合を入れてそう言ってくるレミーネに、シアは若干引きながら曖昧な返答をした。

 

 何故かそれに気を良くしたレミーネは、胸を張りながら続けざまに言った。

「先日も告白をされて、見事に振ったというではありませんか」

「ああ、そんなこともあったわね。それが?」

 どうという事もないという顔でシアが答えると、周囲にいたほかの女子たちが僅かに顔を引き攣らせていた。

 だが、レミーネはそれに気づきつつも、敢えて触れないようにしながらさらに続けた。

「いい加減、貴方の好みのタイプを知っても良いと思うのです。それが広まれば、余計な犠牲者が増えることはないはずです。・・・・・・男も女も」

 最後にぼそりと付け加えられた言葉は、シアの耳には届かなかった。

 周囲にいる精霊に聞けばわかるが、この場でそんなことをするつもりはシアにはない。

 

 いい加減白状なさいと胸を張るレミーネに、シアは心底不思議そうな顔になった。

「・・・・・・言ったこと、なかったっけ?」

「ありませんわよ!」

 もし聞いていれば、男女ともに余計な犠牲者が出ることはなかったと、レミーネは内心で叫んでいた。

 勿論、それを口にするつもりはレミーネにはない。

 目の前にいるシアは、色恋方面に関しては、まったくの素人(?)だということが、これまでの付き合いの中でよくわかっているからだ。

 今のシアの会話も、特に含むことはなく、ごく自然(天然ともいう)に行われているのだ。

 

 そんなレミーネの内心の葛藤に気付くことなく、シアは当然だという顔になって言った。

「私の好みのタイプは、父さまよ?」

「・・・・・・はい?」

 きっぱりはっきりと言ってきたシアに、レミーネはキョトンとした顔になってしまった。


 この反応は、レミーネに限らず、ほかの女子たちも同じだった。

 それも無理もないことだ。

 一桁年齢の女の子であれば、まだ「大きくなったらお父さんと結婚する!」ということは、まあ普通にあり得ることといえるだろう。

 だが彼女たちは、学園に入学をする年齢に越えて、既に三学年になっている。

 順調に父親以外の異性(もしくは婚約者)との交際を進めている者たちからすれば、シアの言葉を聞いてそうなるのは、ある意味で当然といえた。

 

 そんな周囲の女性たちの反応にめげずに、というよりもまったく気付かずに、シアは淡々と続ける。

「私の中での一番は父さまで、二番目が兄さまになります」

「セ、セイヤさんよりも上・・・・・・ということは、やはりお父上も精霊の扱いに長けているので?」

 シアの実の父親が現人神であることは知られているが、そもそもコウスケ神が具体的にどんなことができるかまで、詳細は伝わっていない。

 一つだけ具体的にわかっていることは、魔道具作りが評価されて神の地位に就けたという事だけだ。


 そのため、レミーネから的外れな評価をされるのも不思議なことではない。

 既に何度か考助のことについて話をしたことがあるシアは、世間一般とのずれには気づいていたので、首を左右に振った。

「ううん? 父さまは、あまり精霊魔法は得意ではない、かな?」

 微妙に後半首を傾げながら言ったのは、考助が召喚できる妖精たちのことを思い浮かべたためである。

 だが、精霊使いと妖精使いは、似ているようで厳密には違っている――というのが、シアの認識だった。

 

「で、では、お顔がお綺麗なのでしょうか?」

「父さまの? ううーん、どうだろう・・・・・・。少なくとも私が知っている限りのエルフに比べれば、そうでもないと思うよ?」

 何とも厳しい評価だが、シアの感覚からすれば間違っていない。

 考助自身も男性エルフの面と比べて、自分が勝っているとは欠片も考えていないので、正当な評価ともいえる。

 もっとも、こんなことを平然と口にできるのは、シアが考助の実子だからである。

 普通は、セントラル大陸内で、現人神の評価を下げるようなことを口にすれば、外面はともかくとして内心では馬鹿にされることになるだろう。

 こいつは、代弁者の話を聞いたことがないのか、と。

 

 そんな状況なので、シアが平然と現人神の評価を下げることを口にしたことに、周囲の女性たちは内心でドン引きしていたりする。

「そ、そうなのですか・・・・・・」

 かといって、実子の評価を否定するわけにもいかず、レミーネは非常に微妙な言い方をすることしかできなかった。

「うん。あっ、でも、別に不細工というわけではないわよ? エルフに比べて落ちるというだけで」

 この場に考助が居たら苦笑する事しかできないであろうシアの言葉に、もうすでに他の者たちの脳内では、ひとつの言葉が巡っていた。

 それすなわち、「天然」である。

 

 無自覚に爆弾を落とし続けるシアにめげることなく、一番の友達を自負するレミーネは、さらに聞くことにした。

「で、では、シアは、お父上のどのあたりに惹かれているのでしょうか?」

「どのあたり・・・・・・? うーん・・・・・・」

 レミーネに突っ込まれたシアは、首をひねりながらしばらく考えて、

「・・・・・・全部?」

 と、真顔で答えた。

 

 シアの顔を見れば、それが嘘ではないことはわかる。

 だからといって、今までの話で納得できる者はいなかった。

「そ、それはやはり、今までシアが振ってきた相手に勝てるということでしょうか?」

 言外に現人神だからということを含ませながら、なんとかレミーネがそう聞いた。

 だが、シアの答えは、レミーネにとっての斜め上を行った。

「うーん。そもそも勝ちか負けかで比べるのが間違っていると思うのだけれど?」

「ど、どういうことでしょう?」

 シアの言った言葉の意味が分からずに、レミーネは首を傾げた。

 

「顔が良い、誰それよりも強い、頭がいい――そんなものでいちいち比べていたら、他人と付き合うなんてことは、無理だと思うけれど?」

「そ、そんなことはありませんわ!」

 シアの言葉に、レミーネは反発するように、少し大きめの声を上げた。

 だが、シアは気にした様子もなく、さらに続けた。

「そう? だって、そんなことを気にしていたら、歴史上の偉人とかと結婚しなければならなくなると思うけど?」

「・・・・・・」

 極端な意見ではあるが、シアの言っていることは間違ってはない。

 好みというのは、人が他人に惹かれる一つのポイントにはなるだろうが、それがすべてではない。

 

 シアが言いたいことが分かったのか、ほかの面々はシンと黙ったままだった。

「結局、好きなんだから好き、というわけで、本当のところは他人に説明できるようなことじゃない――――んだと思う」

 所詮は生まれて十数年の小娘の意見である。

 シアは、最後の言葉を自信なさそうに付け加えて、締めくくられるのであった。

・・・・・・どうしてこうなった・・・・・・?


なぜか兄に比べて、妹が残念臭が漂う感じになってしまいました。

い、いえ、こと恋愛観に関してだけですからね? (フォローになっていない)


そして、ほかの娘たちと同じように、順調に父親ラブに育っています。

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