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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(1)失敗

ここから第13部第4章になります。

 最近、また引きこもりがちになっているとコウヒ&ミツキから指摘された考助は、フローリアとシルヴィア、そしてナナを連れてとある大陸のとある街を訪ねていた。

 コウヒもついてきているが、今回はわざと姿を見せないように、隠蔽の魔法で姿を消してもらっている。

 何かが起こるとは限らないが、そのときの為のちょっとした工夫である。

 その街は、とある王国の首都で、最近になってクラウン支部が設置されて、転移門も置かれていた。

 折角なので、観光も兼ねて二泊位していこうかと、本当に気分転換のつもりで来ていた。

 ついでに、その街を選んだのには、ほかの理由もあった。

 それは、その国がテイマーの活躍を推奨していることである。

 その国の王都と大きい街のいくつかには、ほかの国にはないテイマーギルドも存在している。

 以前から話には聞いていたのだが、行くのに時間がかかるため断念していて、このたび転移門が置かれたことにより、気兼ねなく訪ねることができるようになった。

 そうした事情もあった為、今回の旅行先として決まったのである。

 

 

 転移門のある部屋から転移受付部署を通って外に出ると、街は活気にあふれていた。

「流石は王都ってところかな?」

 国によっては王都でも暗めの雰囲気が漂っているところがある。

 主に戦争などをしていて敗戦濃厚な国の王都などがそうだが、経済が落ち込んでいる場合でもそういったことは起こる。

 この国ではそれは当てはまらなかったようで、人々がしっかりと目に光を持って動き回っていた。

「そうだな。きちんと経済も回っているようだ。王がしっかりと治めている証拠だな」

 そういささか早すぎる結論を出したのは、フローリアだった。

 考助的には王都だけを見てそう結論づけるのはどうかと思うのだが、フローリアは確信しているようなので、それ以上突っ込むのはやめておいた。

 

 街や人の様子を見つつ、考助たちはとある場所を目指して歩いていた。

 場所に関しては、支部を出るときに職員を捕まえて聞いてあるので問題ない。

 一直線でその場所を目指してもいいのだが、別に急ぐ必要はないので、のんびりと他の所も見ているのだ。

 とはいえ、観光地ではなくあくまでも商業の中心である王都なので、さほど見て歩くような観光スポットがあるわけではない。

 目的地には、のんびり歩きながら二時間ほどかけて着いた。

 

 考助たちが目指していたのは、テイマーギルドの建物である。

 その建物は、クラウンの支部よりは小さめだが、しっかりとした造りになっていた。

 クラウンの支部と違っているところは、普段ギルドメンバーが出入りしている建物とは別に、もうひとつ大きな建物が用意されているところだった。

 別に用意されているその建物は、テイマー同士がモンスターのやり取りをしたり、調教済みのモンスターを売り買いするためにあるのだ。

 まさしくテイマーの為の建物といえるだろう。

 その建物へは、ギルドに登録をしていないと入ることができない。

 そのため考助たちは、まずギルド登録をするために表通りに面している建物へと入った。

 

 

 テイマーギルドの受付がある場所は、ほかのギルドやクラウンの冒険者部門と変わらない造りになっていた。

 入り口に入ってすぐのところに、カウンターと依頼を貼りだすための掲示板がある。

 そこに併設するように、酒場兼食堂がある。


 とりあえずギルド登録をしなければ何もできないので、考助たちは真っ直ぐにカウンターへと向かった。

 すると、なぜかカウンターに座っていた受付嬢が、目を丸くして考助たちを見て来た。

「何かありましたか?」

 その態度の意味が分からずに考助が問いかけると、受付嬢は慌てた様子で手を振った。

「い、いえ、申し訳ありません。後ろのお二方が、とてもテイマーには見えなかったものですから」

「ああ、なるほど」

 受付嬢の説明に、考助は苦笑しながら頷いた。

 

 実は、テイマーギルドに入った瞬間から、酒場兼食堂にいるギルド員らしき者たちの視線が向けられていることには気づいていた。

 それほどまでに、女性のテイマーは珍しいのだ。

 それもそのはずで、モンスターと一緒に生活をしていこうと考える女性は、中々珍しい存在なのだ。

 それは、テイマーが多くいるこの国でも同じようで、女性のギルド員は少ない。

 人数で示せば、大体五十人に一人くらいが女性のテイマーとなっている。

 

 それほどの人数しかいない上に、シルヴィアやフローリアほどの美人がギルドに現れれば、注目されるのも当然だ。

「こっちのふたりは、私がテイムしたモンスターを預けるだけなのですが、それでもいいのですよね?」

「ええ、はい。それは勿論です」

 考助の問いかけに、受付嬢は同意した。

 これが駄目となれば、この国におけるテイマーの存在が脅かされることになる。

 というのも、テイマーギルドに登録しているテイマーのほとんどは、自分自身が野生からテイムしたモンスターではなく、ほかのテイマーが持っているモンスターを譲ってもらったり、テイム済みのモンスター同士の交配によって生まれたモンスターを使役しているのだ。

 もし、ほかのテイマーから譲り受けたモンスターを使役しているだけではテイマーと呼ばないとしてしまえば、ほとんどのテイマーがその条件に当てはまり廃業となってしまうのだ。

 

 というわけで、考助たちは揃ってテイマーギルドに新規登録することにした。

 三人とも既にクラウンのカードを持っているので、手続き自体はさほどかからない。

 ランクに関しては、テイマーギルドと通常の冒険者ギルドでは性質が異なっているので、一番下のランクからということになる。

 もっとも、飛び級制度のようなものはあるので、いつでも受けようと思えば受けられるようになっている。

 

 その説明を聞いたところで、いざ登録しようとした考助たちだったが、ここで問題が発生した。

「あの・・・・・・登録するには、テイムしているモンスターが必要になるのですが・・・・・・」

 どう見ても狼(ナナ)一体しか連れてきていないように見える考助たちに、受付嬢が事務的にそう言ってきた。

 その態度を見れば、同じようなことをやらかす者が多いことが良くわかる。

 ついでに、最初の時の受付嬢の態度の意味も理解できた。

「あ~、そうか。言われてみれば、従魔連れてきていないと意味ないよね」

 考助がそう言いながら苦笑した。

 テイマーギルドなのだから、従魔を連れていないと登録できないというのは当たり前のことだ。

 ちなみに、パーティで登録することもできるが、その場合はメンバーのひとりが従魔を連れていれば、それで大丈夫なシステムになっている。

 

 その考助に向かって頷いた受付嬢は、問いかけるような視線を向けて来た。

「今回はお一人だけ登録するということもできますが、どうされますか?」

「いや、いいや。ちょっと戻って連れて来るから、また来るよ」

「そうですか。それでは、お待ちしております」

 考助の答えに、受付嬢はそう言いながら丁寧に頭を下げるのであった。

 

 

 テイマーギルドから外に出た考助たちは、クラウン支部へと歩き始めた。

「それでどうするのだ? 今日中に戻って来るのか?」

 フローリアがそう問いかけると、考助は少し考えてから答えた。

「うーん、別にどっちでもいいと思うけど。・・・・・・面倒だったら明日とかでもいいんじゃない?」

 一応二泊することにしてあるが、特に予定があるわけではない。

 時間の制約はないので、登録自体はいつ行ってもいいのだ。

 ただし、折角なので依頼を受けてみたいという気持ちもある。

 

 考助がそう話すと、シルヴィアとフローリアは顔を見合わせた。

「だったら一度戻って、眷属を連れて来たほうがいいな」

「そうですね。どちらにせよ、一度戻らなくてはならないのですから」

 二人揃ってそう結論を出したところで、考助たちはすぐにアマミヤの塔に戻ることになった。

 といっても、急いでいないので、あくまでものんびりと街の様子を確認しながらである。


 そうして考助たちが再びテイマーギルドに姿を見せるのは、一度目の訪問から数時間が経った後のことであった。

主にやらかしたのは考助ですが、テイマーギルドに行くとわかっていて思いつかなかったシルヴィアやフローリアも同罪ですw

往復する羽目になってしまいましたが、まさしく自業自得。

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