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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(5)シルヴィアの役割

 アマミヤの塔のとある階層にある百合之神宮、その中でも中心的な役割を持っている百合之神社。

 その百合之神社で、現在とある儀式が行われていた。

 儀式を行っているのは、神社が主神と定めている現人神の巫女であるシルヴィアだ。

 その儀式は、少なくとも年に一度、大抵は不定期で何度か行われるものだ。

 といっても、表立って公式に行われるようなものではなく、儀式が行われる日だけは完全にすべてを締め切って、関係者だけで行われる。

 儀式がいつ行われるのかは事前に知らされず、百合之神社まできて門が閉じられているのを見てがっかりすることになるのだが、それで文句をいう者はまずいない。

 百合之神社に限らず、ほかの神殿でもいきなり儀式が行われることはごく普通にあり、その際に関係者以外が締め出されるのも当たり前だからである。

 ほとんどの神殿がそんな感じなので、観光客は門に張り出されている紙を見て、むしろ儀式が行われている珍しいときに来れたと好意的に受け止められるのがほとんどなのである。

 

 そんな感じで第三者の目から見れば不定期に行われる百合之神社でのシルヴィアの儀式は、当人だけではなく、複数の巫女たちも参加して行われる。

 当然のように、ココロとリリカがいて、更には持ち回りで百合之神宮に務めている巫女が加わっている。

 表向きでも裏側でも、ほとんど行事というものがない現人神を主神としているシルヴィアたちにとっては、この儀式は地味に重要なものとなっている。

 現人神の巫女たるシルヴィアが中心に座り、その両サイドをココロとリリカが固めて、もうひとりの巫女が補佐を行う。

 捧げる祈りは、考助に向けてのもの・・・・・・ではなく、あまねく人々のために向けられている。

 自分に向けて祈りを捧げられても、という困惑した顔が浮かぶだろうとわかっているからこそ、シルヴィアが敢えてそういう儀式にしているのだ。

 

 どちらかといえばこの儀式は、考助のためではなく、考助を主神としている聖職者の為に行われている。

 それは、一柱の神を信仰する聖職者が、ひとつのまとまりとして心をひとつにできるようにするための儀式なのだ。

 本来であれば、もっと多くの巫女や神官が参加してもおかしくはないのだが、目立つことを抑えている考助の心情を慮って、限られた人数で行わている。

 それでも、儀式を行う者たちにとっては、非常に重要な機会なので、誰もが真剣に儀式の取り組んでいるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 儀式を終えたシルヴィアは、皆を集めて雑談をしていた。

 シルヴィアにとっては、儀式も大切なのだが、その次に彼女たちから集める情報も大事なのだ。

「最近の神宮はどうですか?」

 シルヴィアがそう問いかけたのは、補助として儀式に参加していた巫女だ。

 ココロやリリカは、常時百合之神宮に詰めているわけではないので、そちらに聞いた方が早い。


 問われた巫女も、そのことが分かっているので、ココロやリリカに確認をすることなく、シルヴィアに直接話をした。

「そうですね。参拝者は相変わらず増えているようです。緩やかになっていますが。ほかと違って特に私たちが相手するようなこともないですから、それによって問題が起きているという事はありません」

 巫女が言った「ほか」というのは、ほかの神殿という意味だ。

 ミクセンの神殿を始めとして、世界中にある神殿は基本的に参拝者に対して、いろいろなサービスを行っている。

 そのため、参拝者(お客)が増えれば、その分人手が必要になる。

 

 だが、百合之神宮では、そうした対応が少ないために、人が増えたからといって即新しい人材が必要になるということはない。

 ちなみに、百合之神宮では、お守りといった「商品」を置いている場所は、一か所しかない。

 しかも、人手は巫女ではなく奴隷を使っているので、人が増えて巫女たちが困るようなことはほとんどないのである。

 

「そうですか。問題が起きていないのであれば、今の調子で続けてください」

 普通であれば、人が増えればそれに伴ってトラブルが増えてもおかしくはない。

 ただし、百合之神宮はさすがに現人神の認めた神域(聖域)であって、余計な争いを起こす者は少ないのだ。

 勿論、まったくないというわけではないが、巫女たちの手を煩わすことなく収まるのがほとんどなのである。

 

 シルヴィアの答えに頷いた巫女は、続いて少し困ったような顔になった。

「それから『お心づけ』が増えていく一方なのですが、いかがいたしましょうか?」

 お心づけというのは、簡単にいってしまえば、おさい銭のことである。

 百合之神宮にある各神社に置かれている賽銭箱に集まるおさい銭は、巫女や奴隷たちに賃金を払っても、十分に余裕があるほどの収入がある。

 人が増えることによって、それがさらに多くなってきていて、そのまま持っていれば危機感を覚えるほどの量になっているのだ。

「そうですね・・・・・・。いまのままここに置いていても危険はなさそうですが、流石にそれは少し問題がありそうですね」

 この世界では、神の社である百合之神社に忍び込むような愚か者はまずいない。

 勿論、まったくいないわけではないのだが、常時ユリの目がある百合之神社での窃盗は、ほぼ不可能である。

 

 とはいえ、いつまでもすべての金銭をタンス預金のごとく置きっぱなしにしておくのは、精神的によくない。

 聖職者とはいえ、魔がさしたなんてことは、ごく普通に起こり得る。

 今の人数であれば目が届きやすいのでそんなことが起こる可能性は少ないだろうが、規模が大きくなって人が増えてくれば、必ず問題が起こると思っていたほうがいい。

 それならば、今のうちからきちんと準備しておきたいと考えるのは、当然のことだ。

 

 巫女の言葉に少し考えるような仕草をしたシルヴィアは、ココロを見ていった。

「クラウンを使って口座を作っておきましょうか」

「わかりました」

 シルヴィアの言葉に、ココロが頷いた。


 クラウンには、銀行のような預金システムが存在している。

 そこに預けておけば、いきなりすべてのお金を失うということはなくなる。

 ではなぜ最初から作っておかなかったのかといえば、そこまでのお金が集まると考えていなかったためである。

 通常の神殿では、寄付という形で一定額を納めることになっているが、おさい銭は好きなときに好きな量を納めるだけだ。

 そのため、どれくらいのお金が集まるのか、まったく予想がつかなかったのだ。

 

 それにしても今更感があるが、これまでなくても何とかなってきたということも、口座開設が放置されてきた理由のひとつとなっていた。

「口座の名前はどうされますか?」

 通常は、パーティ名をつけたり、個人名をつけたりする。

 百合之神宮の場合は少し問題があって、建物ごとに作るのか、それとも一括して作るのか、今後のことも考えればいろいろな選択肢が出てくる。

「まあ、個別に作ったほうが無難でしょう」

 神社によって集まるおさい銭の量はバラバラなので、個々に管理したほうがいいとシルヴィアは判断した。

 それに、今後神社の数が増えるようなことがあれば、ひとつの口座で管理をしているとより面倒なことになってしまう可能性がある。

 口座をたくさん持っていても管理が面倒になる以外の問題があるわけではないので、神社ごとに作ると考えるのは当たり前である。

 

 そんな細かいことを決めつつ、今回の儀式も無事に終えることができた。

 シルヴィアは、それに満足して管理層へと戻って行くのであった。

今回の話は別にあってもなくてもまったくかわまないのですが、まあ、とりあえずこんなこともやっていますよといことで^^

ほかの嫁さんズも、里でこういった話し合いをしたりしています。

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