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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(9)奴隷購入

 とりあえず建物自体と外部への出入り口を作ったが、それですべてが完成したわけではない。

 なにしろ、出入り口(外部)と店の入り口の間は、いまのところ好きに移動できるようになっているのだ。

 簡単に言えば、建物を作った階層に自由に出入りできることになり、それは少々面倒なことになる。

 そのため、出入り口(外部)と店の入り口の間を一本道でしか進めないようにする必要がある。

 一応、既にどういう作りにするのかは決めているので、あとはそれを作るだけだ。

 時間はさほどかからないという考助の説明を聞いたフローリアは、別件で動き始めていた。

 なにをするのかといえば、店には店員が必要で、そのための人材を捜しに出たのだ。

 これもクラウンとの繋がりを感じさせないようにするため、フローリアはまったく別の町で奴隷を探すつもりだった。

 

 店の店員に奴隷を使うことを考助が了承すると、フローリアはピーチのところに顔を出した。

「おや~? どうしたのですか?」

 子供ミクを学園に送り出して、コレットと一緒に寛いでいたピーチは、首を傾げながらフローリアを見た。

「ああ。少し手伝ってほしいことがあってな。・・・・・・占いをしてもらえないか?」

「占いですか~。別に構いませんが、どんな内容でしょうか?」

「うむ。それなんだが・・・・・・どこまで情報を渡せばいい? いま、考助が作っている店に関することなんだが?」

 ピーチが占いをする際には、最初から情報を集めきった状態でする場合と、まったく情報を仕入れないでする場合がある。

 情報を入れないで占いをするのは、先入観を持ちたくないからという理由があるのだが、ピーチがなにを基準にして両者を区別しているのかわからない。

 そのため、ピーチに占ってもらうときには、最初にこう聞くようにしているのだ。

 

 フローリアの言葉に頷いたピーチは、少しまってくださいね~と答えつつ、どこからかカードを持ち出してきた。

 ピーチが使う占いの道具はいくつかあるが、携帯できるカードはどこにでも持ち歩いている。

 そのカードを軽くシャッフルしたピーチは、上から一枚だけカードをめくった。

「うーん。特に詳しい話を聞く必要はなさそうですね。このまま続けてみます~」

 様子を見ていたフローリアやコレットにはさっぱり判断がつかなかったが、ピーチ的にはそういうことらしい。

 フローリアは特に口を挟むことなく、無言のまま頷いた。

 

 実はこのとき既に、ピーチはフローリアが探し物をしていることが分かっていた。

 ただし、店に関することということはわかっているが、店員を捜しているということまではわかっていない。

 その状態で、カードを円形状に何枚か置いて、それを次々にめくって行った。

 そして、なぜかピーチは、それらのカードを最後までめくらずに途中で混ぜてしまった。

「・・・・・・ピーチ?」

 意味が分からずに首を傾げたフローリアに、ピーチは小さく首を左右に振った。

「何となく行くべき場所はわかったのですが、どうやら私も一緒について行ったほうが良いみたいですよ~?」

「なに!?」

 ピーチの答えに、フローリアが少し驚いたような顔になった。

 フローリアとしては、独りで探しに行くつもりだったので、その答えは意外だったのだ。

 

 だからといって、フローリアはピーチの占いの結果を疑っているわけではない。

「ミクのことはいいのか?」

 フローリアが念を押すように確認すると、ピーチは申し訳なさそうにコレットを見た。

 それを受けて、コレットは笑顔になって頷いた。

「いいわよ。どうせいなくなるといっても数日でしょう?」

「いいえ。かかっても一泊程度ですが・・・・・・ともかく、ありがとうございます~」

 ミクを預かることを簡単に了承してくれたコレットに、ピーチは軽く頭を下げた。

 

 そのピーチに、コレットは軽く右手を振った。

「気にしないで。コウスケのことに関係しているんだから、それくらいは私にも協力させて」

「はい~」

 これ以上は礼を言っても仕方ないと、ピーチはコレットにそう答えた。

 そもそも子供たちは、日中は学園に通っているので、コレットにかかる負担はさほどでもないのだ。

 

 コレットとピーチの間で話がまとまったところで、フローリアがピーチに聞いた。

「一応聞くが、なぜピーチがいた方が良いんだ?」

「何となくなんですが、私の勘が必要になると思ったんです~」

「なるほど。そういうことか」

 普通なら痛い子のような発言をしたピーチに、フローリアは納得の顔になって頷いた。

 こういうときのピーチの意見は、きちんと聞いておいた方がいいと、管理層に居る者たちならだれでも知っている。

 

 何度か頷いたフローリアは、そのまま続けてピーチに聞いた。

「それで? いつ出発したほうがいいのだ?」

「ええと。出来るだけ早い方が良いのですが~。今すぐとかはだめでしょうか?」

「いや、私は構わないのだが、其方は大丈夫か?」

 フローリアは最初から遠出をするつもりで準備していたが、ピーチはまったくなんの用意もしていないはずだ。

 その準備があるだろうと考えてのフローリアの問いだったが、ピーチは首を左右に振った。

「大丈夫ですよ~。それに、先ほども言ったように、あまり時間はかからないみたいですから」

「そうか。それなら問題ないな」

 ピーチの言葉にフローリアが頷くと、早速とばかりにふたりは立ち上がった。

 そして、あっという間に出発の準備を整えたピーチとフローリアは、転移門のある部屋へと向かうのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ピーチとフローリアが転移門を使って移動した場所は、とある国の王都だった。

 そこで人に聞き込みをしながら一通り奴隷を扱っている店を回ったピーチは、ため息をついた。

「――まだ駄目なようですね~」

 お目当ての奴隷がいなかったと察したフローリアは、ピーチの言葉に頷いた。

「ふむ。仕切り直したほうが良いというわけだな」

 ちなみに、この時点でふたりは店の中に入って、奴隷を確認したりはしていない。

 ピーチが勘を頼りに探していることはわかっているので、フローリアもそのことについて余計なことを聞いたりはしなかった。

 

 とりあえずはピーチの勘を信じることにして、ふたりは街の様子を見て回ることにした。

 ピーチは勿論、フローリアにとっても初めての街だったので、それぞれ新鮮な気持ちで街を見て回った。

 そんなことをしていると、不意にピーチがそわそわとし出した。

「うん? そろそろ良いのか?」

 その様子に気付いたフローリアが、そう言ってピーチを見た。

「そうみたいです。・・・・・・こちらですね~」

 ピーチは、フローリアに向かって頷きながら、ひとつの奴隷を扱っている店に向かって歩き始めた。

 

 

 結論から言えば、ピーチとフローリアは、望み通りの奴隷を手に入れることが出来た。

 どんな奴隷かといえば、夫婦で店を切り盛りしていたが、店のための借金を返せなくなった借金奴隷である。

 そのふたりを手に入れるために、ピーチとフローリアがちょっとした騒動を起こすことになるのだが、それはまた別の話だ。

 とにかく、考助が作った店のための奴隷を手に入れたふたりは、夫婦を連れてアマミヤの塔に向かった。

 そして、本来の雇い主が現人神であると聞いた夫婦は、その場で倒れ込みそうになり、それを慌ててピーチとフローリアが支えることになるのであった。

夫婦の紹介は次話で。

ピーチとフローリアがどういう経緯でふたりを手に入れたのかは、閑話か何かで書いた方がいいでしょうか?

あまり大した話ではないのですが・・・・・・(というよりも、定番すぎてあまり書く意味がないかなと)。


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