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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(6)妥協点

 集めた意見を参考にしながら、大まかな店の内容を決めた考助は、シルヴィアとフローリアに相談することにした。

 お店の大体の仕様が書かれた紙を見たシルヴィアとフローリアは、感心したように頷いていた。

「ふむ。あれだけの意見を良く抑えてまとめたという感じだな」

「そうですね。これだとまだ許容範囲ではないでしょうか」

「いや、許容範囲って・・・・・・それ自体が既にダメって言っている気がするんだけれど?」

 苦笑しながらそう言った考助に、シルヴィアが首を左右に振った。

「コウスケ様が関わる以上は、どうあっても目立ってしまうのは仕方ないですから」

「いや、今回は、僕のせいというよりも、皆がはっちゃけたせいだと思うよ?」

 自分が考えると皆からの突っ込みがあるからこそ意見を求めたのに、その意見自体が常識外れのものばかりだった。

 意見を求めた意味はなかったとは言わないが、本来の意味はなさなくなってしまっていた。

 

 考助の言葉に、シルヴィアとフローリアは揃って苦笑した。

「まあ、そもそもコウスケが作った物をおくという時点で、無難な店を作るというのが無理なことだからな」

「そういうことです。商品が盗まれないようにするためには、どうしても防犯を高めないといけないですから」

 言い訳のように言ってきたふたりだったが、別にずれたことを言っているわけではない。

 むしろ、その問題が重要で、考助も頭を悩ませていたのだ。

 

 シルヴィアが言った通りに、店の評判が上がれば、間違いなく盗難の被害は出てくる。

 それを防ぐためには、人を雇うかそれ以外の方法に頼るしかない。

 人を雇うとなると、それ相応の金額がかかってしまうので、趣味で出すような店には勿体ないことになってしまう。

 となれば、それ以外の方法で防犯をしなければならなくなり、結果として常識外れの方法が提案されていたというわけだ。

 ・・・・・・という建前的な理由はあるのだが、考助はいまでも皆は単に面白がって意見を出したのではないかと疑っている。

 

 それはともかくとして、防犯のことを考えれば、ごく普通の店にするというのは悪手以外の何物でもない。

 結果として、非常識な方法に頼ることしかないというわけだ。

「・・・・・・まあ、仕方ないんだけれどね。なんかこう、毎回毎回本末転倒になっている気がするのは、気のせいだろうか」

 思わず、といった感じで呟いた考助に、シルヴィアとフローリアは何とも言えない表情を返した。

 考助が何かをするたびに、常識外のものを作るか起こるかしているのは、もはやパターンだといっても過言ではない。

 だからといって、何もせずにただ生きているだけというわけにもいかないので、既に考助も半ば仕方ないと諦めている。

 代わりに考助は、被害(?)を最小限にすることが重要だと考えるようになっていた。

 

 少しばかり遠い目をした考助に、シルヴィアが慰めるように応えた。

「そうかもしれませんが、まずは考えることが重要だと思います」

「そうだな。なんの対策もせずに勢いで行くと駄目なのは、それこそこれまでの経験で駄目だとわかっているのだろう?」

「まあ、そりゃあね」

 考助だっていろいろと学習しているのだから、フローリアの言葉には思いっきり同意する。

 ただ、何の因果かそれ以上に、毎度毎度ことが大きくなってしまうのだ。

 

 それを恐れて引き籠ってしまうと、本当になにもできなくなってしまう。

 さすがにそんな生活をすることは考助も望んでいないので、もう開き直っていると言っていいだろう。

 そこはシルヴィアたちもよくわかっているので、無理やり止めたりはしようとしていないのである。

 

 考助が頷くのを見ながら、ふとフローリアが何かを思い出したような顔になって聞いて来た。

「そういえば、本末転倒といえば、もともとの話だった魔道具の固定化をしないという話はどうなったんだ? 結局店が目立ってしまっては、意味がなくなるのではないか?」

「ああ。それに関してはもうどうしようもないから、店に置く物は完全に魔法陣を隠匿した物だけを出すようにするよ」

「なるほど、そういうことか」

 考助の説明に納得したようにフローリアが頷いた。

 考助が本気になって魔道具に刻まれている魔法陣を隠す気になれば、ほとんどの者は見破ることができないだろう。

 店に出す道具がすべてそんな状態になっているのだとすれば、売った道具から魔法陣が広まることは、最小限に抑えることができる。

 それであれば、もともとの目的もある程度達成できると納得できたのだ。

 

 しかし、その答えを聞いたフローリアは、別の意味で疑問が湧いた。

「・・・・・・納得はできたのだが、ひとつ聞いていいか?」

「・・・・・・なに?」

「それだったら最初から店なんて作らないで、クラウンに卸してしまえばいいのではないか?」

 最初からその疑問を予想していた考助は、額に手を当てながら答えた。

「やっぱりそう思う?」

 考助も店に出す魔道具のことを考えた時点で同じことを思ったのだ。

 

 考助は、フローリアが聞いたことを思いついた時点で、店を作ることを止めようと考えたのだが、別の理由で作ることにしていた。

「確かに、魔法陣を隠してしまえばクラウンに卸してしまってもいいんだけれどね。代替わりという意味では必要だと思うから、作ることにした」

「代替わり・・・・・・? ああ、そういうことか」

 一瞬考助が何のことを言っているのか意味が分からなかったフローリアは首を傾げたが、すぐに納得して頷いた。

 考助がずっとクラウンに魔道具を直接卸していては、いつまで経っても頼り切りになってしまう可能性がある。

 勿論、考助ひとりが作れる魔道具の数には限界があるのだが、影響力という点においてはほかの群を抜いているので、決して無視してはいけない。

 それは、クラウン内で人が代替わりをしていくように、魔道具の作成においても同じようなことが言えるのだ。

 

 そのために、考助としてはクラウンに魔道具を卸すのは止めて、独自で店を持った方がいいと考えたのである。

 その上で、魔法陣を隠した魔道具を店に置くのであれば、考助の影響力はいまよりも抑えられる。

 さらに考助は、自分が作った店だとばれないようなちょっとした工夫をするつもりだった。

「それで第五層の街以外のところに店を作るというわけですね」

 先ほど見せてもらった店の仕様を見直したシルヴィアが、考助の説明に納得の顔になった。

「そういうこと。・・・・・・まあ、完全に疑われないようにすることは無理だと思うけれど、ある程度は抑えられるんじゃないかな?」

「確かに、それはあるかもしれないな」

 考助の言葉に、フローリアも頷いた。

 これまで考助が直接関わって来たものは、基本的に塔の中に収まっている。

 それが、いきなり塔の外に店を作ったとしても、考助の直接の関与は疑われにくくなるだろう。

 勿論、どこかで疑われることもあるかもしれないが、少なくとも第五層の街に作るよりは、はるかにましである。

 

 考助の中では、既に店を作らないという選択肢が無い以上、そうすることが一番の妥協点だと考助は考えたのだ。

 ついでにいえば、アマミヤの塔以外だけではなく、セントラル大陸以外の大陸にある町に作れるといい。

 どこに作るかはまだ決めていないが、折角の機会なので、ゆっくりと選ぼうと考えている考助なのであった。

というわけで、塔の外に作ることになりました(タブン他の大陸)。

ある程度絞っていますが、どこに作るのかはまだ作者も決めていません。

この話が投稿される頃には決まっているでしょう。

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