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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(4)類は友を呼ぶ?

 くつろぎスペースに意見募集の紙を貼ってから一週間が経った。

 その間に、色々な意見が寄せられて、かなりの参考になった。

「うーん。やっぱりみんなの意見を集めると中々面白いね」

 考助がそう感想を言うと、コレットが多少呆れたような視線になった。

「これは面白いというよりも、揶揄っているんじゃない?」

「あれ? そうなの?」

 考助が不思議そうな顔をして首を傾げると、コレットは少しだけ慌てて答えた。

「そうなのよ! これ、全部やってみてごらんなさい! 間違いなく騒ぎどころではなくなるわよ!?」

「まあまあ、コレットは少し落ち着け。皆が勢いに乗って書いたのは確かだが、其方もしっかりと参加しているではないか」

 フローリアが冷静にそう突っ込むと、コレットはついと視線を逸らした。

「いや、ホラ。やっぱり皆のブームにはきちんと乗っておかないと」

 とまあ、なんだかんだでノリが良い管理層のメンバーは、コレットが突っ込みを入れたくなるような意見を書いていたりするのだ。

 もっとも、フローリアが言ったように、コレットもそのノリに乗っかって、常識から外れたようなことを書いている。

 

 誤魔化すような態度を取っているコレットを見てから肩をすくめたフローリアは、次いで考助を見た。

「それで? 全部を採用するつもりか?」

「いや、まさか」

 フローリアの問いかけに、苦笑しながらすぐにそう答えた考助は、更に続けた。

「やってやれないことはないと思うけれど、余計な伝説を増やすつもりはないよ」

「どうだろうな。どれか一つとっても伝説になりそうな気もするが?」

「そこはもうほら。諦めよう。だって、皆が望んでいるんだし」

 ため息交じりに言ってきたフローリアに、考助は笑顔になりながら答える。

 コレットもフローリアも微妙に否定的な言葉を言っているが、なんだかんだでしっかりと(非常識な)意見を出しているのだから考助の言葉に否定しようがない。

 

 いつものじゃれた掛け合いにストップをかけたのは、これまで黙っていたシルヴィアだった。

「皆、もうそろそろいいのではありませんか? コウスケ様も本題に入りたいですよね」

 シルヴィアがそう言うと、ほかの者たちは小さく肩をすくめた。

 今のような掛け合いは、続けようと思えばいつまででも続けられるので、止めるタイミングが難しいのだ。

 こういうときは、それこそ今のシルヴィアのように第三者が止めてくれた方が助かる。

 

 そんなわけで、意識が本来の話に戻った考助が、紙に書かれている内容を見ながら小さく首をひねりながら言った。

「うーん。色々と意見があるのは確かだけれど、共通しているのは、僕が出している店だということは隠した方がいいということかな?」

「そうですね」

 考助の言葉に直接答えたのはシルヴィアだったが、コレットとフローリアも頷いている。

 これは考助自身もそう思っているので、誰もが同じことを考えているということだ。

 まあ、現人神の名前を出せば大騒ぎになるどころではないので、当たり前といえば当たり前なのだが。

 

 ここで問題になるのが、考助の存在を隠すことではなく、どういう手段で隠すかということだ。

 それに対して、複数の意見が上がっていた。

「えーと・・・・・・? 精霊たちに手伝ってもらって、家を隠してもらう・・・・・・これはコレットの意見だね」

 考助がそう聞きながらコレットを見ると、コレットが勢いよく右手を上げた。

「正解!」

「はい、どうもありがとう。・・・・・・で、幻術を使って店を隠すというのは、フローリア」

「そうだな」

 考助から名前を呼ばれたフローリアも頷いた。

 

 そして考助は、とある紙を持ち上げて内容を一読してすぐに、シルヴィアを見た。

「あ~。これはシルヴィアだと思うけれど・・・・・・本気?」

「勿論、冗談です。そんなことをすれば、コウスケ様の存在を隠す意味がなくなります」

「だよねー。・・・・・・アッ!? こらっ!」

 二人だけで納得し合っている考助とシルヴィアを不思議そうな顔になって見ていたコレットが、パッとその紙を考助から奪い取った。

「えーと、何々? ・・・・・・三大神様に、加護を授けてもらって、店が見えないようにしてもらう・・・・・・ってなにこれ?」

 わざわざ文面を声に出して読んだコレットは、ジト目になりながらシルヴィアを見た。

 

 コレットの視線を避けるように顔を横に向けたシルヴィアは、

「いえ、折角ですから、私も皆さんのようにはじけてみようかと・・・・・・」

「はじけ過ぎでしょ! これは!」

 思わず大き目の声を出してシルヴィアを咎めたコレットだったが、ここでフローリアが右手を上げてコレットを見た。

「いや、私から言わせれば、コレットの意見も随分とはじけていると思うが・・・・・・?」

「えっ!? い、いや、そんなことはないかと・・・・・・」

 額から汗を流しそうな顔になって答えたコレットだったが、誰がどう見ても説得力がなかった。

 

 フローリアの言った通り、一般人から見れば、神から加護をもらうのも、精霊たちから祝福をもらって店を隠してもらうのも、どちらも本来は実行不可能だという点においては、大した違いが無い。

 恐ろしいのは、考助がその気になれば、どちらも実行可能だということだが、それを突っ込むものはここにはいなかった。

 何故なら、下手に突っ込めば、自分たちにそれが返って来る可能性があるからである。

 フローリアもコレットも、今ではその気になれば、自分がした提案くらいのことは出来るようになっている。

 何気に女性陣もそろそろ神の領域と言われそうなところまで片足を突っ込みそうなところに到達しそうになっているので、実は考助のことをどうこう言えるような立場ではなくなっていたりするのだ。

 

 三人のやり取りを笑いながら見ていた考助に、コレットがわざとらしく頬を膨らませて睨んだ。

「なんか、他人事のように見られているのが腹立つ」

「ええっ!? だ、駄目?」

「駄目とかじゃなくて、コウスケが一番やらかす筆頭でしょうに!」

 コレットが誤魔化すように、若干強めの口調でそう言うと、なぜかシルヴィアもそれに乗って来た。

 今の話の流れだと、自分に矛先が向いて来てもおかしくはないので、一旦矛先をずらす必要があったのだ。

 

 コレットとシルヴィアを見て、何となく流れが自分に向いてきそうだと察知した考助は、さっさと流れを断ち切ることにした。

「え、えーと・・・・・・とりあえず、どれを選んでも目立ちそうになるのは間違いなさそうだよね」

「ふむ。まあ、確かにそうだな。・・・・・・いっそのこと逆転の発想で、地味な店を目指してみるか?」

 フローリアがそう言うと、考助は腕を組んで首を傾げた。

「それはそれでいいと思うけれど、結局売っている物によっては、目立つと思うんだよね」

 作る物に関しては自重する気が無い考助に、女性組三人が難しい顔になった。

 

 そして、しばらく考えていたシルヴィアが、真面目モードになって言った。

「どうあっても目立ってしまうのであれば、コウスケ様の名前を出すかどうかはともかく、入るお客様を選ぶ店にしてはいかがでしょうか? ・・・・・・それこそ狐のお宿みたいに」

 結局行きつくところはそこになってしまうのかと、一同は微妙な顔になった。

 そもそも、普通にはない非常に役に立つ魔道具が揃うような魔道具屋がいきなりできれば、目立たないようにすることのほうが難しいのだ。

 それを考えれば、最初から目立つことを考えたうえで、どう目立つようにするかを調整したほうがましである。

 

 結局、皆の意見を集めても、最初に考助が考えた方向性とほとんど変わらなかった結果に、一同は揃ってため息をつくのであった。

そろそろそれぞれの実力的には、神様に片足を突っ込みそうな女性陣でしたw

ちなみにフローリアは、戦闘力ではなく、踊りのほうで突っ込みかかっています。

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