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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(3)作った魔道具の行き先

 考助が作った物を汎用品として流通させないようにするにはどうすればいいのか。

 この問題の一番簡単な解決方法は、作った物を売らなければいい。

 とはいえ、既に出ている物に関しては、市場に流通してしまっているので止めようがない。

 ついでにいえば、考助としてもせっかく作った物を倉庫にしまっておくだけではもったいないと思うので、世に出さないという選択肢は選べない。

 ではどうするべきかということなのだが、これも選択肢はいくつかあるだろう。

「――――仕方ない。やっぱり個人で店を持つべきかな?」

 そう言った考助の呟きを拾ったフローリアが、キョトンとした顔になって聞いて来た。

「大丈夫なのか? それこそ問題になるような気がするが?」

「いや、いくらなんでも僕自身が店に立つことはしないよ。それに、普通とは違った店にするっていう手もあるし」

 考助は、なんとなく思い付きでそう言った。

 

 それに対して興味を引いたのが、フローリアではなくシルヴィアだった。

「どういったお店にされるおつもりですか?」

「うーん・・・・・・。まだただの思い付きだけれど、それこそ狐のお宿みたいな感じでもいいんじゃない?」

 狐のお宿は、狐たちが選んだ者だけが泊まれるようなシステムになっている。

 考助が経営する店も入れるお客を選べるようなものにすれば、作った物が大々的に広まるのは最小限に抑えられるはずである。

 それに、その店に置く物は、最初から魔法陣を公開しないようにしてしまえば、汎用化する可能性も低くなる。

 わざわざ魔法陣を非公開にする必要がなさそうな魔道具は、最初から汎用化することが分かっているので、あまり気にすることもない。

 

 考助は、自分で何気なく言った言葉に反応して、更に続けた。

「ああ、どうせだったら、狐のお宿の隣に作るとかでもいいかな? ・・・・・・いや、いっそのこと、完全に独立させてしまったほうが・・・・・・」

 そう言って完全に自分の思考の中に入ってしまった考助を見て、シルヴィアとフローリアが顔を見合わせて苦笑した。

 考助がこうなってしまった場合は、下手に声をかけても空返事しか返ってこないことがほとんどなのだ。

 経験上、しばらく放置したほうが良いとわかっているので、シルヴィアとフローリアは考助(の意識)が返って来るまで待つことにした。

 

 

 考助(の意識)が旅立ってから一分ほど経つと、その当人がポンと手を打った。

「おっ。戻ってきたか。今回は早かったな」

「そうですね。思ったよりも早かったです」

 考助が何かを言うよりも早く、シルヴィアとフローリアが真面目な顔をして頷き合っていた。

 それを見た考助は、情けなさそうな表情を浮かべて、二人を交互に見た。

「えーと・・・・・・。話をしてもいいかな?」

 いつものことなのは考助自身もよくわかっているので、下手につつけば話が盛大に逸れることも理解している。

 変に二人の話に乗るよりは、そのまま本来の話を進めたほうが良いのである。

 

 考助の問いかけに、シルヴィアとフローリアは苦笑しながらもう一度頷いた。

 二人とも最初から考助をからかい続けるつもりはなかったのだ。

「とりあえず、個人の店を持つことは決まりということにしようと思うんだ」

「ふむ。それは別に反対はしないが、どういった店にするつもりだ?」

「品揃えもそうですが、店員とかの問題もありますね」

 フローリアとシルヴィアの質問に、考助は頷きながら答えた。

「それはこれから・・・・・・というよりも、ほかの人たちの意見も聞こうと思っているよ。いきなり一気に決めてもいいことなんてないからね」

 いつもの考助なら思い付きでことを進めてもおかしくはないのだが、そんなことを言い出したことに、フローリアが虚を衝かれたような顔になった。

 

 それを見た考助は、フローリアが何かを言うよりも先に続けた。

「今回の場合は、勢いで決めてしまうと同じようなことになりそうだからね。きちんと他の人の意見も聞いた方がいいと思ったんだ」

 考助が個人の店を持つと言い出したのは、自分が作った魔道具が固定化されてしまわないようにするためだ。

 その目的から外れてしまうような店になってしまっては、本末転倒になってしまうので、きちんと周りの意見も聞こうと考えたのである。

 

 考助の言葉にシルヴィアと顔を見合わせたフローリアは、一度頷いてから考助を見た。

「そういうことなら協力するが、私たちだけでいいのか?」

 この場には考助以外には、フローリアとシルヴィアしかいない。

 考助が言った「ほかの人の意見」がどの程度かはわかっていないが、いつも通りの面子に偏った意見にならないかを心配しての問いかけだった。

「うん。だから、この場では決めてしまわないで、管理層でも聞いてみるよ。ただ、シュミットたちには聞かないつもりだけれど」

 考助が話を聞こうとしている範囲は、管理層を拠点にして生活をしている者たちだ。

 そのため、セシルやアリサたちは含まれるが、シュミットたちは含まれない。

 そんなことをするのは、これから作ろうとしている店を秘匿性の高い存在にしようとしているためである。

 

 考助の言葉でそのことに気付いたフローリアは、納得した顔になって頷いた。

「なるほどな。まあ、それならいいのではないか?」

 フローリア自身は、別に考助が勢いだけで決めてしまっても構わないと思っているが、それを口にすることはしない。

 既に考助自身が決めてしまっているので、フローリアが止めても仕方ないし、なによりも全員の意見を聞いたあとに考助がどんな店を作るのかが楽しみだった。

 それと同じようなことを考えているのか、シルヴィアも特に否定することなく頷いていた。

「そうですね。折角ですから、私も何か意見してもいいのでしょうか?」

「勿論だよ。それに、急いで作るわけじゃないからね。前みたいに管理層のどこかに、意見募集の紙でも張っておいてしばらく待つつもり」

 考助がそう言うと、シルヴィアとフローリアは納得の表情になっていた。

 こうして、しばらくの間、管理層のくつろぎスペースに、一枚の紙が貼られることになるのであった。

いつもよりも短いですが、ちょうど切りが良いので今日はここまで。

次話以降で店の細かい内容を決めて行きます。

お店を作ることは、ほぼ決定!w


※次回更新は6月12日(月)になります。

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