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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(2)考助の作った魔道具

 フローリアと話を終えた考助は、シュミットとダレスを管理層に呼んだ。

 考助は別に急ぎでなくともいいと伝えたのだが、二人は揃って翌日には管理層に姿を見せた。

 シュミットとダレスは、それぞれの部門の統括になっているので、そうそう簡単に時間が作れるはずがないのだが、考助の呼び出しを最優先にしたようだった。

「ごめんね。別にそんなに急いで来る必要はなかったんだけれど・・・・・・」

 一応考助がそう言ったが、シュミットとダレスは図ったかのようにタイミングを合わせて首を振った。

「そういうわけにはまいりません」

「そうですな。貴方に呼ばれた以上、出来る限り急ぐのは当然です」

 シュミットとダレスがそう言うと、考助はため息をついた。

 

 ふたりが急いできてくれるのは嬉しいが、そのせいで統括としての仕事が後回しになってしまうのは、非常によろしくない。

 せっかくワーヒドたちが引退をして影響力を削いだのに、統括たちが変わらなければ意味がないのだ。

 とはいえ、いきなり今の関係を崩せないということもよくわかっている。

 それは単に、個人的な付き合いでという意味ではなく、対外的にまだ考助の影響があることを示す必要があるためだ。

 特に、クラウンの支部を全世界に広めている今は、考助の存在は必須といってもいい。

 リクも統括たちも頑張ってはいるが、やはり現人神が直接関係しているという看板は、交渉するうえでどうしても外せないのだ。


 今このタイミングでその看板を下ろしてしまえば、折角のクラウンの広がりが止まってしまう可能性があることは考助もよくわかっている。

 だからこそ考助は、ため息をつくだけで済ませて、呼び出した話題に触れることにした。

「少しは影響力も落としたいんだけれど・・・・・・まあ、それはいまはいいか。それよりも、少し聞きたいことがあってね」

 考助はそう言ってから首を傾げた。

「あれ? ふたりに聞きたいこともこれに関連した話になるのかな?」

 考助は、さらに「まあいいか」と続けてから、フローリアと話した内容をシュミットとダレスに話した。

 

「――――というわけで、現状、僕が作った魔道具がどういう扱いになっているのか、知りたくてね」

 考助がそう言うと、やはり真っ先に反応したのはダレスだった。

 シュミットは売ることについてはよく理解しているが、やはり作ることになると理解が遅れる。

 そのために専門を分けているのだから、そうなるのは当然だ。

「私もそれを心配して、少なくともクラウン内では研究所をしっかりと設けています」

 ダレスがそう言うと、考助はひとまず安心した様子で頷いた。

 

 ただ、続けて言われたダレスの言葉に、眉を顰めることになる。

「ですが、やはり一般に流通している物は、コウスケ様が作った物が基準となってしまっています。中には丸々魔法陣を写している物も出回っているようです」

「ああ~・・・・・・やっぱりか」

 悪い意味で予想が当たってしまった考助は、こめかみに人差し指を当てた。

「クラウンみたいな大きなところはまだいいけれど、やっぱり個人経営の店が問題?」

 考助がそう問いかけると、ダレスが大きく頷いた。

「その通りです。個人となると、全ての道具を改良する手間を掛けるわけにも行きませんから。コウスケ様が作った物は、汎用品として売り出すには最適です」

 ダレスのその答えに、考助は大きくため息をついた。

 

 ダレスが言った通りに、個人で経営しているような魔道具屋は、特徴ある魔道具を作って売っていたりするが、それはあくまでもそれぞれの得意分野に限ってのことだ。

 それ以外の誰もが求めるような汎用品ともなれば、そっくりそのまま作りだして売りに出すことも珍しくない。

 というよりも、そうするのが当然の世界だったりする。

 そうでなければ、全ての道具を研究して商品として売りに出すことなど、個人で行うのはほぼ不可能に近い。

 

 それは別に考助も咎めるつもりはない。

 特許などが発達している世界ではないので、真似をされることは当たり前のことだと考えていた。

 というよりも、真似をされたくなければ、魔法陣をしっかりと隠して表に出すのが、魔道具を作る者としての最低限の常識なのだ。

 考助が問題にしているのは、折角魔法陣を公開しているのに、そこから先に発展させたり改良したりせずに、そのまま止まってしまうことである。

 

 とはいえ、個人に関しては、どうしようもない所がある。

「個人は、まあ、仕方ないよね。出来ることには限界があるし・・・・・・。それよりも大手の魔道具屋とかはどうなの?」

 世界には、クラウンだけではなく、自分たちで魔道具を開発して売り出している大手の魔道具屋もある。

 問題なのは、それらの大手が、考助の作っている魔道具をまったくいじらずに売り出している場合だ。

 考助の問いかけに、ダレスが難しい顔で腕を組んで首を左右に振った。

「一応、独自の研究は進めているようですが、中々上手くいっていないようです。汎用品と一緒に並べられて売られていることからもはっきりと分かります」

「そんなことになっているんだ」

 そう答えた考助は、ダレスと一緒に頭を抱えた。

 

 ここでようやく考助とダレスの話を、首を傾げて聞いていたシュミットが口を挟んできた。

「それだけコウスケ様が作った道具が素晴らしい物だということになると思うのですが、なにか問題があるのでしょうか?」

 商人の視点で見れば、ひとつの商品の人気があって、ずっと売れ続けるというのは非常に理想的である。

 何故なら、新しい物を作るための研究費を始めとした諸経費がかからなくなるのだから。

 勿論、ほかを出し抜くために常に新しい物を作り続けなければならないという意識はあるが、考助が作った物に関してはクラウンが元祖(?)として売りだせるので、大きな問題にはならない。

 ・・・・・・と、シュミットは考えているのだ。

 

 これは、商品を売る方と作る方の考え方の違いであって、どっちが悪いというわけではない。

「シュミット。ギルドの運営が悪化しているからといって、単純に開発研究にかかる費用を削ってしまえば、そのギルドに未来はない。必ず先細りするのが運命なんだよ」

 ダレスが首を振りながらそうシュミットに言った。

 ただただ、過去に作った物と同じものを作り続けるのであれば、研究開発にかかる費用はまったく必要ない。

 その分、経費を浮かせることが出来るが、結局その組織はなくなる運命にあるというのは、考助もまったく同じ意見だった。

「もっと大きな視点で見れば、まったく新しい物を作るわけでもなく、ずっと同じものを使い続けることになれば、文明の発展なんてありえないからね。特に道具は、新しい物を見据えて作り続けることが重要だと思わない?」

「それは、確かにわかります」

 考助とダレスに言われて、シュミットも納得したように頷いた。

 

「僕が作った魔道具が汎用品として使われるのが駄目とは言わないけれど、いつまでも使われ続けるのは、かなりまずいと思うんだよね」

 先々のことを考えれば、考助の心配は間違ってない。

 考助の言葉に、シュミットとダレスが考え込むように黙り込んだ。

 考助が言いたいことは分かるが、クラウンのことを考えれば、考助の作った魔道具が売れなくなるのは困ったことになる。

 勿論、魔道具の売り上げのすべてを考助が作った物を占めているわけではないが、未だに主力商品である物も多い。

 先のことを考えれば考助の言いたいことはよくわかる。

 だが、そう簡単に手放せないというのも、シュミットやダレスにとっての本心なのであった。

実際に製作・販売をしている両者との話し合いです。

いきなり考助の作った魔道具を引き揚げることは不可能です。

中にはさほど流行っていない物もありますが、流行っている物は無くすと影響力が大きすぎるためです。

勿論、考助もそんなことはまったく考えていません。

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