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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(12)結果報告

「ただいま戻りました~」

「戻ったわよ」

 ミツキとピーチが声を揃えてくつろぎスペースに入ると、そこには考助たちが揃っていた。

 別に二人を待っていたわけではなく、たまたま皆の時間が合っていたのだ。

 そもそも誰もミツキとピーチに何かが起こるなんてことは考えていないのだ。

 

 二人の声に反応して、代表して考助が応えた。

「お帰り。どうだった?」

「どうもこうもありません。ほとんど無駄足でした~」

 肩を落としながらそう言ったピーチを確認してから、考助はミツキを見た。

「そうね。本来の目的であるピーチの訓練は、ほとんどできなかったわね」

「あらあら。ミツキも手を出したってこと?」

 考助としては、ピーチだけではなく、ミツキも加わったために訓練にならなかったのかと考えての問いかけだったが、二人は同時に首を左右に振った。

 

「違うわよ。あまりにも簡単に侵入できて、意味がなかったってこと」

「いつまで経っても気付かなそうだったので、こちらから姿を見せました~」

 とても残念そうにピーチとミツキがそう語るので、考助は思わず空を仰ぎ見た。

「あら~。それはまた、予想外というか、予定外というか・・・・・・」

 考助は、ミツキの実力が突き抜けていることは分かっていたが、ほかとの差は正確にはわかっていなかった。

 それもそのはずで、ピーチ自身もわかっていないのだから、知るはずもない。

 結果として、今のような答えが出てくるのである。

 

 考助に向かって頷いたミツキは、少しだけ反省したような顔になった。

「とりあえず、ピーチの育成計画は、考え直さないといけないわ」

「あの~。その言い方は、ちょっと、どうかと思うのですが~」

「何を言っているのよ。ピーチがミクのことを訓練しているときに使っている言葉よね?」

 ミツキがしれっとそう言うと、ピーチはついとミツキから視線をずらした。

 

 どこでそんなことを知ったのかとは聞かない。

 ミツキなのだから知られてて当然だとピーチは考えている。

 それよりも、いまのピーチにとって重要なのは、自分に向けられている考助たちの呆れたような視線だ。

「そ、そういえば、あの人たちは、もう塔には来ないと約束していましたよ~。これで取りあえずは安心だと思います」

 あからさまなピーチの話題転換に、考助は一度だけため息をついてから頷いた。

「ああ、そうなんだ。それは良かった・・・・・・のかな?」

 考助が後半で首を傾げたのは、別に塔の中にいるすべての闇や影がいなくなるわけではないためだ。

 アマミヤの塔の中では、別に一つの闇や影だけが活動しているわけではなく、今回は直接子供たちに手を出しそうな理由がある組織を追い払っただけである。

 今のところそんな馬鹿な真似をするような組織が出てきていないだけで、危険はまったくないわけではないのだ。

 

 そう考えた考助は、腕を組んでからぽつりとこぼした。

「・・・・・・うーん。そう考えると、いっそのこと、全部を追い出した方がいいのか?」

「それはやめた方がいいでしょう。というよりも、不可能ですよ~」

 ピーチの言葉に、考助は首を傾げた。

 ミツキやピーチがいれば、塔の中から追い出すことも可能だと考えているのだ。

 

 その考助に、ピーチが補足するように説明を加えた。

「もし本当にすべての闇や影を追い出そうとするなら、今回のあの屋台の主人のような人まで追い出さなければならなくなります」

 いくらピーチやミツキであっても、普通に生活している者たちまで、どこどこの組織の人間だということが分かるわけではない。

 勿論、身のこなしなどで、闇の技術を身に着けた者かどうかは見分けることは出来る。

 ただし、その人物が、本当に組織と繋がりがあるのかどうかは、わからない。

 さらにいえば、そうした訓練を受けている者だけが、闇や影に所属しているとは限らない。

 

 考助がイメージしている闇や影は、里のサキュバスたちが基準になっている。

 そのため、情報収集から後ろ暗い仕事まで、一通りのことが出来るように訓練されている。

 それは昔ながらの訓練方法が取られているためであって、現代の主流は基本的に専門に分かれて訓練するのが普通なのだ。

 その中には、普段はごく普通に生活を送っていて、任務の橋渡し的な役目を負っている者もいる。

 そうした者たちは、一から組織で育てられた者ではなく、ごく普通の一般人を使っていたりするので、非常に区別をするのが難しい。

 

 それらの説明をしたピーチは、考助を見ながら聞いた。

「コウスケさんが、そうした一般人まで処分するというのならできなくはないでしょうが、本当にそんなことをするのですか~?」

「あ~、うん。そういうことね。それはやらない方がいいね」

 ピーチの言葉に、考助は苦笑しながらそう答えた。

 いちいち本当に一般人かどうかを調べていくと、とんでもない手間がかかることは考助にもわかる。

 さすがにそんな鬼畜なことまでしてほしいと命令するつもりは考助にはなかった。

 それに、今まで特に問題なく運営できているのだから、下手に手を突っ込まない方がいいという考えもある。

 

 考助は、やっぱり専門外なことで余計なことを言ったらだめかと思いつつ、今度はミツキを見ながら聞いた。

「じゃあ、それはまあいいとして、ピーチのことはどうするの?」

 本来は、ピーチの自覚を促すために、わざわざ敵地まで乗り込んだのだが、その意味がなかったとなると別の方法が必要になる。

「それなんだけれどね。帰って来る途中で考えていたんだけれど、時間が解決してくれるかもしれないわ」

「ん? 長い時間を掛ければ、ピーチ自身が気付くってこと?」

「いいえ。そういうことじゃなくてね」

 首を左右に振りながら否定して来たミツキに、考助は意味が分からずに首を傾げた。

 

 その考助を見たミツキは、ピーチと考助を交互に見ながらさらに続けた。

「あと数年もすれば、ミクがピーチを本当の意味で追いかけられる実力をつけるかもしれないから、それを待てばいいのかなって思ってね」

「・・・・・・ああ~、なるほど」

 ミクが実力をつけて行けば行くほど、ピーチとの差は詰まって行くはずである。

 そのミクが追いかけて来る様子を見ていれば、ピーチも自分の力が把握できるのではないかというのがミツキの考えだった。

 

 ただし、考助は納得していたが、ミツキの考えに問題が無いわけではない。

「あの~。私もそう簡単にミクに追いつかれるつもりはないのですが・・・・・・?」

 ピーチがそう言った通り、ミクの成長よりも早くピーチが成長してしまっては意味がないのだ。

 だが、ピーチの言葉にミツキが首を左右に振った。

「大丈夫よ。あくまでもピーチが自分の実力を知ることが目的なのだから、ミクが追い抜く必要はないのよ。それに、ミクの成長を見ていて気付けないくらいに、ピーチが成長を続けたら、私も敵わなくなるわよ?」

 そこまで成長するつもりかと、ミツキは悪戯っぽい表情を浮かべた。

 

 ミツキの言葉に、ピーチは虚を衝かれたような顔になってから両手を上げる仕草をして首を左右に振った。

「さすがにそれは無理ですね~」

「いやいや。ピーチだったら出来るんじゃない?」

 ここで混ぜっ返すように言ってきた考助に、ピーチがさらに勢いを増して首を振った。

「無理! 無理ですって!」

「そうかな~?」

 ピーチの様子に、考助はそう答えながらニヤリと笑みを浮かべた。

 その考助の笑みは、ピーチをからかうのと同時に、もしかしたら本当にできるかもしれないという思いが含まれていた。

 ただし、絶対に無理だと思い込んでいるピーチは、そのことには気づかなかった。

ピーチの実力把握は、ミクが成長するまでお預けになりました。

最後の考助の「( ̄▽ ̄)」は、実現するかどうかはわかりませんw


これで、第13部第1章は終わりになります。

(次の章はなにを書こうか)

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