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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(11)圧倒的な実力差

 組織をつぶすと言ったピーチは、ごく自然な様子でその場に立っている。

 それが余計に、実行可能だということを知らしめていた。

 なによりも、この場に誰にも気づかれずにいたことが、それを証明していた。

 この場にいる者たちは、組織内での駆け引きはあっても、組織そのものをつぶしたいわけではない。

 組織内で駆け引きが出来るのは、あくまでも統一した意思でまとめられた組織があるからだ。

 そのことを十分にわかっているので、最終的に年長者であるリーダーには従っているのだ。


 その頭がいなくなれば、組織は簡単に崩壊する。

 勿論、次代の頭になる者は、長い間の組織の規則によって決められることになる。

 そのため、不慮の事故でリーダーがいなくなったとしても、即組織が潰れるわけではない。

 ただし、この場にいる全員が一度にいなくなった場合は、その限りではない。

 そもそも、全員が一度にいなくなるということは想定されていないのだ。

 

 この場にいるはずのない自分の姿を見て黙り込む闇の者たちに、ピーチはため息をついた。

「せっかく自分の実力を知ろうと思って忍び込んだのに、いつまで経っても気付いてくれないから、つい自分から姿を見せてしまったではありませんか」

 隠れようと思えばいつまででも隠れられたというピーチの言葉に、ほかの者たちはまったく反論もせずにいた。

 実際、少しでも兆候なり気配なりを感じていれば、あそこまで悠長に話などしていなかった。

 忍び込んだ者をだますために、符丁を合わせて話をすることもあるが、今回はそれもまったくなかった。

 この場にいる誰一人として、侵入者がいるとは考えてもいなかったのである。

 

 黙ったままの闇の者たちを見たピーチは、困ったような顔になって、ある一点を見た。

「……ミツキさん、どうしますか~?これじゃあ、里で訓練したほうがましなのですが?」

 ピーチの言葉に応えるように、ミツキが姿を現した。

「本当にねえ。まさか、ここまでだとは思わなかったわ」

 ミツキのその顔は、呆れと諦めが半々になっているようなものになっている。

 ピーチにとって丁度いい訓練の場になると考えて提案したのだが、それがほとんど役に立っていなかった。

 ミツキにしてもこれほどまでに実力差があるというのは、想定外だったのだ。

 

 少しだけ額を押える仕草をしたミツキは、少し睨むようにして十人を順番に見た。

「仮にも現人神が住まう塔にちょっかいを出すのだから、もう少し実力をつけてから来てほしかったわね」

「そうですね~。それとも、私たちを追い払ったことで、安心して怠けたのでしょうか?」

 十人の闇の者たちにとっては挑発的なピーチの言葉だったが、こうして中心部まで入り込まれている以上、何を言ってもむなしい結果にしかならない。

 いま彼らにできることは、沈黙することだけだった。

 

 彼らはピーチのことは知っているが、ミツキのことはまったく知らなかった。

 ただ、当然アマミヤの塔に進出するときに、色々な噂を調べてはいた。

 その中には、当然のように代弁者に関するものもあった。

 代弁者の特徴などはほとんど伝わっていないので、絶対にそうだとは限らないのだが、この場に新たに現れた者が、もしかしたらそうかもしれないという疑念は浮かんでいる。

 そして、それは見事に当たっているのだが、ピーチもミツキもそれを彼らに教えるつもりはない。

 付け加えれば、ミツキは魔法で姿を変えているので、この場でそれを告げたところで、噂を攪乱することくらいしかならない。

 

 黙ったままの十人を見て、ピーチがわざとらしくため息をついてからミツキを見た。

「これ以上ここにいても仕方なさそうですから、さっさと帰りますか~」

「そうね。貴方のことに関しては、もっと別の方法を考えましょうか」

「そうですね~」

 ミツキとピーチは、そう言ってお互いに頷き合ってから、先ほどまでと同じように姿を消した。



 二人が使った姿隠しの魔法は、見事なもので、その場にいた十人はまったく見破ることが出来なかった。

 勿論、姿を消した場所はわかっているので、すぐに確認したのだが、それほどの実力者が同じ場所にとどまっているはずもなく、ナイフを投げても通り過ぎるだけだった。

 一応、部屋中を調査したが、それでもミツキとピーチがいた痕跡は見当たらなかった。

 その段階になって、ようやく十人の闇の者たちは、席に着いて落ち着きを取り戻した。

 それでも、しばらくの間、十人は沈黙を保っていた。

 いま起こったことがあまりにも衝撃的だったために、現実だと理解するのに、時間が必要だったのだ。

 

 そして、深々とため息をついた年長者の男が、ほかの者たちを見て言った。

「…………アマミヤの塔からは手を引く。異論のある者はいるか?」

 男がそう問いかけると、少しの間が空いてから年配の女性が口を開いた。

「今のは、警告だったのかね?」

「さてな。言葉通りなのかもしれんが、少なくとも我らにそれを確かめる術はない。・・・・・・それとも、玉砕しに行ってみるか?」

 あくまでも大真面目な顔で問いかけて来た年長者の男に、ほかの者たちは黙り込んだり首を振ったりと様々な反応を見せた。

 ただし、自分たちが行くと名乗り出る者は一人としていなかった。

 

 つい先ほどピーチの実力は嫌と言うほど見せられた。

 実際にミツキとピーチが使ったのは姿隠しの魔法だけだが、それだけでも自分たちの手に負えないということはよくわかっている。

 その上で、もし第五層の街に居座り続けてミクに何かが起こった場合、ピーチがどういう手段に打って出てくるかわからない。

 いくら自分たちが手を下したわけではないと言ったとしても、それを聞き入れてくれるはずがない。

 闇や影の世界というのは、そういうところなのだ。

 

 そんなことになるくらいなら、最初から手を出さないと考えるのは、当然の結果だった。

 いつも荒っぽい仕事を請け負っている班を束ねている男も、今回ばかりは手を上げることはしなかった。

 あれだけの実力の差を見せられて、自分が行くという蛮勇を誇れる者はここにはいない。

 ミツキやピーチが突き抜けているだけで、ここにいる者たちもかなりの実力者たちなのだ。

 

 一人も名乗り出る者がいないことを確認した年長者の男は、表情を変えないまま結論を出した。

「では、今後一切、ここで許可を取らない限りは手を出さないということでいいな?」

 最後にそう確認を取ったが、全員が頷くか同意するような仕草をした。

 反論者がひとりも出なかったことで、彼らは今後一切、塔には手を出さないことに決まった。

 

 そのときの彼らの心境は、まさしく「触らぬ神に祟りなし」と言ったところだ。

 今回、ピーチとミツキが何もせずに引いてくれたお陰で、その言葉を肝に銘じることになるのであった。

結局実力差を見せつけられただけで終わりました。

ピーチの問題に関しては、ミツキが色々考えることになりました。

まあ、一応ピーチも考えますが。

塔の里の者たちが成長するのを待っても良いかも知れませんが、それよりも先にピーチが実力を伸ばすと意味がないので、それも微妙だったりします。


さてはて、どうしましょうか?w

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