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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(9)意外な者からの意外な提案

 考助の言葉を聞いて、早速その言葉を里の長老に伝えに行こうとしたピーチだったが、予想外のところから止められた。

「ピーチ、ちょっと待ってくれる?」

「ミツキ・・・・・・?」

 ミツキが珍しく口を挟んで来たことに、考助が目を丸くした。

 その他にも、嫁さんズが何事かと驚いた顔になっていた。

 

 それらを見回したミツキが、苦笑しながら考助とピーチを見て言った。

「なによ、その顔は。私だって、たまには意見をいうことだってあるわ。特に、こんなときにはね」

「こんなとき・・・・・・?」

 ミツキが言っている意味が分からずに、考助が首を傾げながらそう訊ねた。

 だが、それは考助だけではなく、ほかの者たちも同じような顔になっている。

「そうよ。まあ、詳しい話はあとでするから、今はピーチにちょっと別のことをお願いしたいの」

「お願い、ですか?」

「そう。お願い。いまの話を伝える前に、長老をここに連れてきてくれないかしら? 私から話をしたいことがあるの」

 そのミツキの言葉に、さらに考助を含めた他の面々が驚愕した顔になる。

 

 ここまで積極的に物事に関わろうとするミツキは、これまでほとんどなかった。

 考助のことを貶めようとされているようなときは話が別だが、こんなときに考助の命令なしにミツキが自ら動くこと自体が無かった。

 だからこそ、考助たちは、これほどまでに驚いているのである。

 

 いきなりのミツキからの要請に、ピーチは戸惑った顔で考助を見た。

 それに気付いた考助は、ピーチを安心させるように笑顔になって頷いた。

「ごめん、ピーチ。少し手間かも知れないけれど、ジゼルを呼んできてくれる?」

「いえ、別に転移門で移動するだけですから、大した手間ではないですが・・・・・・わかりました。すぐ連れてきますので、少しだけ待っていてください~」

 そう答えたピーチは、少しだけ急ぎめで転移部屋へと向かった。

 

 それを見送った考助は、ミツキを見て聞いた。

「どういうこと? ピーチに関係することなんだよね?」

 いきなりそう言った考助の言葉に、今度はミツキが驚いたような顔になり、ほかの面々がどういうことだという顔になる。

 そして、すぐに驚きから立ち直ったミツキは、笑顔になって頷いた。

「さすが、考助様ね。その通りなんだけれど、答えは長老が来たら言うから、待ってもらえる?」

「わかった。そういうことなら待つよ」

 ミツキは、言い渋っているのではなく、長老が来たら一緒に説明すると言っている。

 それならば、わざわざこの場で問い詰める必要もないだろうと、考助は頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ピーチが長老を連れて来るのは、十五分とかからなかった。

 歩きでの移動は、転移門から里の中の歩きだけなので、さほど時間はかからない。

 さらに、わずかに顔色を変えたピーチから「ミツキさんが呼んでいる」と言われれば、ジゼルも顔を青くして行動せざるを得ない。

 ちなみに、このときたまたま長老と雑談をしていた里の者は、ピーチとジゼルに「さっさと行け」といわんばかりに手を振っていた。

 そうして呼び出されたジゼルが、相変わらず青い顔のままだったのは、致し方のないことだろう。

 ピーチも割と慌てていたためか、ジゼルに碌な説明もしていなかったのだ。

 

 青い顔をして自分の前に立つジゼルを見て、ミツキが苦笑しながら言った。

「なんて顔をしているのよ。別に貴方とか里を責めるつもりで呼んだわけではないわよ?」

 その言葉を聞いたジゼルは、あからさまにホッとした様子でため息をついた。

「そうでしたか。・・・・・・それでは、なんの用で私をお呼びになったのでしょうか?」

「なにか、一度私のことをどう思われているのか、問い詰めてみたい気もするけれど・・・・・・・まあ、それは良いわ。それよりも、少しピーチのことで相談したいことがあるのよ」

 ミツキがそう言うと、ジゼルとピーチが揃って不思議そうな顔になった。

 いきなりのことで、なにを言いたいのかがわからなかったのだ。

 

 ジゼルとピーチの様子を無視したミツキは、更に言葉を続けた。

「長老だって、いまのピーチの状態が良くないということは、きちんと気付いているのよね?」

 ミツキがそう問いかけると、ジゼルはハッとした表情になった。

 そして、すぐにミツキがなぜ自分を呼び出したのか理解して、頷いた。

「はい。勿論です。ただ、子育て中のいまは、わざわざ時間をとって確認させるのもと考えておりました」

「それは別にいいのよ。私もそれでいいと思っていたから」

 ミツキがそう言うと、ジゼルはもう一度ホッとため息をついた。

 もしかしたらこのことで、ミツキから糾弾されるのではと考えたのだ。

 だが、そうではないとわかって安心したのだ。

 

 その代わりに、今度は別の疑問が湧いて来た。

「それでは、なぜ私をこの場に?」

「あら。まだわからない? ・・・・・・せっかくだから、今回の件を利用して、ピーチに動いてもらえればと思ったのよ」

「今回の件・・・・・・?」

 ミツキの言ったことが分からなかったジゼルは、少しの間だけ首をかしげたが、すぐにその目に理解できたような光を浮かべた。

「いまだったら、ミクのことがあるから、私が動いてもいいし、ね」

 ミツキがさらにそう付け加えると、ジゼルは真顔になって頷いた。

「それは随分とピーチも心強いですな」

 そう言ったジゼルとミツキは、お互いに分かり合ったのか、頷き合っている。

 

 そのふたりの様子を見て、ようやく話がまとまったと理解した考助が口を出した。

「――お互いに納得できたんだったら、そろそろ説明してもらってもいいかな?」

 その言葉に、ジゼルがハッとした表情になって頭を下げて、ミツキがそれに手を振って考助を見た。

「そうね。いまのピーチが闇の者として動くには、少し危ういということはわかる?」

「危うい・・・・・・?」

 考助からすれば、とんでもない実力があるピーチが危険な状態であるとは思えずに、不思議そうな顔になった。

 それは、ピーチと長老を除くほかの面々も同じだ。

 

 予想通りの反応に、ミツキは頷きながら続けた。

「闇の活動をするときは、ほかの存在と比べて実力が高ければいいだけではないのよ。正確に、自分の実力を知っている必要があるわ。でも、今のピーチは、はっきりいえば、自分がどのあたりの実力があるのかわかっていないのよ」

「・・・・・・ただ強いとわかっているだけじゃ、ダメってことか」

「そういうことね」

 話を理解できた考助が言った言葉に、ミツキがもう一度頷いた。

 

 いまの説明と、先ほどまでのジゼルとの会話を思い出せば、ミツキがピーチになにをさせようとしているのかは考助にも理解できた。

「えーと、いまのピーチは、自分の実力がきちんとわかっていない。だから、ちょうどいい相手が来ているのを利用して、実力を理解させようというわけだ」

「そうよ」

 考助の言葉にミツキが頷くと、一同の視線がピーチに集まった。

 

 そして、それらの視線を感じたピーチは、少しだけ戸惑った表情になった。

「ええと・・・・・・。いまの私の状態が良くないというのはわかっているのですが、わざわざミツキさんが?」

 なぜそんなことをしてくれるのか、という顔になっているピーチに、ミツキが分かり易い答えを言った。

「別に不思議に思う必要はないわよ。考助様の為よ」

 いかにもミツキらしい答えに、ピーチは一瞬呆けたような顔になってから、すぐに笑顔になった。

 それは、ミツキの言っている意味がわかったからこその笑顔であった。

はい。きちんとフラグは回収します。

話的には、どちらかといえば、こちらがメインです。

デフレイヤ一族の過去の話は、どちらかといえば、おまけw

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