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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(7)今回の相手

 子供たちを学園に送り出したピーチは、塔の里に顔を出していた。

 日々送られてくる報告書に目を通していたピーチだが、そろそろ確定的だろうというところまで情報が揃って来たので、一度話し合いをしたかったのだ。

 ジゼルもそのことを予想していたのか、ピーチが訪ねるとすぐに応じた。

 そして今、ジゼルの屋敷には、ピーチを含めた関係者数人が集まっている。

 勿論、これですべての人員というわけではなく、現在も見張りや情報収集をしている者が動いている。

 情報に関しては最低限必要なものは揃っているが、相手が何をしてくるのか分かっていない以上、これからも集める必要はある。

 ただし、今以上の情報を求めるとなると、相手に食い込んでいくことが必須なのだ。

 今回は、そのことを決めるために話し合いを設けたと言っても良い。

 早い話が、今後の展開をどうするのか決めるための場なのだ。

 

 全員が腰を落ち着けたのを確認したジゼルが、ピーチを見て言った。

「それでは始めようか」

「はい。といっても、折角集まってもらったのですが、私はひとつだけ確認したいことがあるだけなのですよね~」

 そう言ったピーチに、ジゼルもわかっているという顔で頷いた。

「あの結果が間違いないかどうかだろう? ――残念ながらほぼ外れることはないと考えている」

「そうですか~」

「ただ、あそこも今となってはかなり形態が変わっているようでな。私たちが知っている組織とはだいぶ違っているようだ」

 ジゼルの言葉に、ピーチは目をパチクリとさせた。

「そうなのですか?」

「うむ。こちらも大きな変化があったが、向こうも同じようなことがあったのだろうな」

 喜んでいいのかは分からないが、と続けたジゼルの顔は、何とも言えない顔になっていた。

 

 ジゼルが言っている「あそこ」というのは、闇の組織のひとつで、簡単にいえば過去にデフレイヤ一族を殲滅しようと追いかけていたところだ。

 基本的に闇や影の組織は、闇ギルドのように自分たちに名前を付けるという習慣が無いので、名前はついていない。

 自分たちのことは、自分たちだけがわかっていればいいという考え方なのだ。

 そのため外から見れば名前がついていないのは、非常に面倒な扱いになる。


 だが、そもそも最初からそうした狙いもあるので、敢えて表立って名乗ることはしない。

 もっとも、どこかの主に仕え続けている組織の場合は、勝手に周りが名付けることはある。

 闇や影の組織に名が付いているのは、大抵がそうした周りに付けられたものだ。

 そんな状態なので、実は別の名が付いている組織が、本当はひとつの組織だったなんて例はいくらでもある。

 そのため、闇や影の組織は、自分たちや相手のことを特定の名で呼ぶことはしない。

 

 ジゼルの言葉に、ピーチは「そうですか」と頷いた。

 正直なところ、ピーチにとってはいまが大事なので、過去のことも相手の組織についても大した気にはしていない。

 ただしそれは、自分自身の感情であって、一族全体の意思ではない。

「ひとつ確認するが、コウスケ様はどう判断されるのだ?」

「それはこれから確認してきます~。それよりも、一応確認しますが、一族の総意はどうなのですか?」

 ピーチの問いかけに、ジゼルは表情を変えることなく言ってきた。

「それこそ愚問だろう。我々はコウスケ様の為に動いているのであって、一族の為だけに仕事をしているわけではない。こちらに被害が出ない限りは、特になにもせんよ」

 そのジゼルの答えに、ピーチはコクリと頷いた。


 それは、以前ピーチが考えた通りのものだった。

 塔の階層に里があるので、一族を繁栄させるだけならば、ここに籠っているだけで良い。

 考助の為に外に出て働くことはあるかもしれないがそれだけだ。

 一族の者たちが、現在闇の者として動いているのは、あくまでも考助の為なのである。

 

「それでしたら特に問題はないと思います。・・・・・・ああ、もし子供たちに手を出された場合は、間違いなく怒ると思いますので、それだけは注意をしてください」

 それは当然のことなので、ジゼルは頷き返した。

「勿論だ。いくら穏やかなコウスケ様とはいえ、子に手を出されれば、そうなるだろう」

 そういったジゼルだったが、ピーチはそうではないと首を左右に振った。

「そうではありません~。コウスケ様も怒るでしょうが、それ以上に爆発しそうな方々がいらっしゃいますから」

 ピーチがそう言うと、ジゼルを含めたその場に集まった者たちは、一瞬意味がわからないという顔になってから、すぐに血の気が引いたような顔になった。

 ピーチが言っている「方々」というのが誰のことなのか、理解できたのだ。

「・・・・・・重々気を配ることにしよう」

 少しだけ青い顔のままジゼルが重々しくそう言うと、ほかの者たちも同意するように深く頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ジゼルたちとの話し合いを終えたピーチは、その足で始まりの家にいる考助の所へ向かった。

 管理層で場所を聞いたら、そっちにいると言われたのだ。

 始まりの家に向かうための転移陣は、ピーチでも問題なく動作することができる。

 それを使って始まりの家に着いたピーチは、すぐにリビングに向かった。

 そこであれば、誰かがいるだろうと考えてのことだ。

 ただ、考助は農作業には出ておらず、ちょうどリビングで寛いでいるところだった。

 

 始まりの家のリビングに姿を見せたピーチに、考助は若干驚いたような顔を向けた。

「あれ、ピーチ? なにか緊急事態?」

 ミクがいるピーチは、始まりの家まで足を伸ばすことは、シルヴィアやフローリアほどにはない。

 それに加えて、ミクの件でサキュバスが動いていることも知っているので、なにかが起こったのかと考えたのだ。

 

 その考助の予想は中らずと雖も遠からずといえるので、ピーチは一度だけ頷いてから話を始めた。

 いま、新たにミクに張り付いている組織が、闇に属するもので、以前デフレイヤ一族を追いかけていた者たちだということもだ。

「――――絶対にそうだという確証にまでは至っていませんが、ほぼ間違いないと思われます~」

「そうだったんだ」

 ピーチから話を聞いた考助は、そう言って頷いたあとに、ため息をついた。

 考助にしてみれば、まさか今頃になって、そんな組織が絡んでくるとは考えていなかった。

 

 憂鬱そうな顔になった考助に、ピーチは続けて聞いた。

「私たちが確認したいことは、ひとつだけです~。――コウスケさんは、どうしたいですか?」

 ピーチがそう問いかけると、考助は目を瞬いた。

「あれ? 僕がどうするかでいいの?」

 考助は、デフレイヤ一族が何かをしたいと言い出してくるのか思い込んでいたのだ。

 

 予想できていた考助の答えに、ピーチはコクリと頷いた。

「はい~。私たちからコウスケさんに望むことは特にありません。・・・・・・私自身は子供が狙われているので言いたいことはありますが、それ以外は特にないですね」

「そうなんだ。といってもなあ・・・・・・。僕自身は、その組織に恨みを抱いているとかはまったくないしねえ」

 そう言ってしばらく考えていた考助だったが、すぐに首を振ってピーチに答えた。

「僕自身がなにかやってほしいとかは、特に思い浮かばないね。いままで通り、なんのために子供たちに目をつけてきたのか、探るだけでいいんじゃない?」

 予想通りの考助の答えに、ピーチは「わかりました」といって頷くのであった。

今更かっ! という声が聞こえてきそうですが、タイトル通り今回の相手です。

ようやく初期の頃の設定が生きてきましたよw

ミクが生まれて、学園に通うようになって、表で活動するようになって、ようやく気付かれました。

そう考えると、やっぱり引きこもり度合いはひどいですねw

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