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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(1)動き出す闇

第十二部が十章まで続いたので、ここから第十三部第一章の始まりです。

閲覧ページの左上にある章とタイトルは、システム上直せないのでご了承ください。

 とある国のとある場所で、十人ほどの者たちが額を寄せ合って話をしていた。

 性別も年齢も様々なこの集団は、とある組織に属している者たちだ。

 ところが、その組織の活動において、大きな問題になりそうな事案が出てきたため、こうして代表者が集まって話をしていた。

「――その情報は間違いないのだな?」

「さて、間違いないと断言できるほど、直接確認をしたわけじゃないがね」

「話を聞く限りでは、ほぼ間違いないだろうと結論付けた」

 女性の言葉に男性が引き継ぐ形で補足をしたが、一部の者がそれに対して反発をしてきた。

「なんだ。確定しているわけじゃないのか。無駄に騒ぎ立てて、予算と人員を引き寄せようというのじゃないか?」

 その挑発するような言葉に、女が小ばかにしたようにフンと鼻を鳴らした。

「くだらない。そんなことを言ってばかりいるから、あんたはいつまでたってもうだつが上がらないんだよ」

「何だと!? 大体てめーは・・・・・・!」

「止めんか! ここはくだらない争いをする場ではない!」

 ふたりのくだらない口喧嘩を止めるように、この場にいる一番の年長者が一喝をした。

 その声に押されるように、ふたりは口を閉じて押し黙った。

 

 その様子を見た年長者は、他の者たちを見回しながら議論を促した。

「他にこの情報を裏付けするようなものを持っている者は?」

 年長者がそう聞いたが、首を振ったり押し黙ったりで、期待するような情報を話すような者は出てこなかった。

 ただ、一人が何かを思い出すような顔になって呟いた。

「結局、あの時に出した結論は、間違いだったということか」

「馬鹿な。まだそうと決まったわけではない!」

「だとすれば、今回のこの話はどういうことなんだ?」

 問い詰めるようにして言った男に、年長者が手を挙げて止めた。

「どう考えてもまだ結論を出すのは早すぎる。まずは今回の情報がどれほど正しいものか、きちんと調べるべきだろう」

 年長者がそう結論を出すと、集まった者たちからは否定する意見は出てこなかった。

 最初から出ると分かり切っている結論だが、それでも前置きのやり取りは、彼らにとっては重要なのだ。

 

 そうして出た結論だったが、続けて出された意見には反発する者が出て来た。

「とりあえず、話が正しいかを検証するとして、そのための人員は現在の担当以外から出すことを考えている」

「ちょっと、待てよ!? どうしてそうなる!?」

 そう声を荒げたのは、最初に喧嘩を始めた女ではなく、情報を付け加えた男のほうだった。

 もっとも、女も口には出さなかったが、表情は不快気に眉をひそめていた。

 それを見れば、男と同じことを考えていることは、言葉に出さなくても分かる。

 

 その男女に、年長者が静かに視線を向けて続けた。

「今回の件は、彼の一族に関わる話になる。なれば、当然一族の者を直に知っている者が必要になるだろう。お前たちの班にそれがいるのか?」

 年長者がそう言うと、反発したふたりはグッと押し黙った。

 そして、それをあざ笑うかのように、先ほど口論になっていた男が笑みを浮かべた。

 だが、年長者は、その男を見て釘を刺すようにして言った。

「だからといって、お前のところから出すわけでもないぞ?」

「な、なんでだよ!? あの一族のことは、俺たちが・・・・・・!」

「確かにそうだが、彼の一族のことが詳しい者たちは、ほかにもいる。今回は、荒事専門のお前たちではなく、そっちが適任だろう」

 年長者のその言い分に、今度はその男も黙り込んだ。

 

 傍から見ていれば、四人の男女のやり取りのようにも見えるが、実際には他の者たちは視線を飛ばし合ったりして、様々な牽制を行っている。

 この場は、彼らにとっては、重要な駆け引きの場でもあるのだ。

 そんな中、年長者が結論を出すように、独りの年配の女性を見て言った。

「今回はお前のところに任せるとする。ただし、実力行使に出るときは、きちんと確認をするように、それから連絡を密にして先走った行動はするな。よいな?」

「あいよ。よくわかっているさ」

 年長者の念押しに、その女は肩をすくめながらそう答えた。

 乱暴な口調での回答だったが、それを責める者はこの場にはいなかった。

 この女は、年長者に次いで、この場では発言力のある人物なのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 学園からの帰り道。

 たまたま学園の入り口でセイヤとシアと一緒になったミクが、ふと首を傾げながら立ち止まった。

「ミク? どうしたの?」

 突然のミクの行動に、シアが首を傾げながら聞いて来た。

「うーんと、なんでもない・・・・・・じゃなくて、あの屋台って、前からあったかな?」

 一度首を振って否定しようとしたミクだったが、前方にある屋台を指さしながらそう聞いて来た。

 学園からミクたちの住む家までは、所謂高級住宅街が並んでいる土地であって、屋台なんてものが来ることはほとんどない。

 少なくともミクは初めて見たので、疑問に思ったのだ。

 

 そのミクの指の先を見たセイヤは、首を傾げながらその屋台を見た。

「あれ、こんなところに屋台か。俺も初めて見たかな」

「私も初めてだわ」

 セイヤに続いて、シアも頷きながら屋台を見た。

 そして、セイヤとシアは、双子らしく同時に顔を見合わせて、ニカリと笑った。

「「寄って見よっか」」

「あっ!? ちょっと!」

 それからの行動は速く、ミクが止める間もなく、セイヤとシアは屋台のところに突進していった。

 それを見ていたミクは、初めに一度だけため息をついて、諦めたように二人のあとを追って行った。

 

 

 近寄ってみた屋台は、こんな場所にあるにしては、珍しい物を置いているわけでもなく、ごく普通に食べ物などが置いてある屋台だった。

 ミクより先に屋台に近付いたセイヤは、早速とばかりにそれらの食べ物を物色している。

 食べる気満々なのは、その顔を見れば、ミクにもすぐにわかった。

 最初は止めようかと考えたミクだったが、セイヤの隣にいるシアの顔を見て、すぐに諦めた。

 何故なら、シアも同じようにワクワク顔で何を買おうかと物色していたからだ。

 こうなっては、ミクにはふたりを止めることなど出来ない。

 セイヤとシアの後ろで一度だけため息をついたミクは、すぐに二人と一緒に何を食べようかと選び始めた。

 

 ミクが何を食べようかと選び始める頃には、さっさと注文する物を決めたセイヤが、屋台の親父と話をしていた。

 その話の内容が、こんな場所で屋台を始めた理由であったのは、さすがといえるだろう。

 しかも、きちんとお金を払ったうえで、親父の口が滑りやすくなっていることもきちんと計算している。

 ミクに言わせれば、この辺りの機微を普段の友人作り(?)に向ければ、大した苦労はしないと思うのだが、セイヤとシアにとっては大違いらしい。

 

 とにかく、セイヤのお陰で、ミクが疑問に思っていたことはほとんど解消した。

 普段の場所で売り上げに伸び悩んでいた親父は、たまには趣向を変えて、この辺りで売ったらどうなるかと実験しているそうだ。

 ミクたちが初めて見るのは当然のことで、その実験を始めたのが最近のことで、この場所に来るのも初めての事だったらしい。

 もっとも、売り上げ的にはあまり芳しくないということで、同じような状態が続くようであれば、また元の場所に戻ることも検討しているようだった。

 そうした話を聞き終えたミクたちは、買った惣菜(?)も無事に証拠隠滅を終えて、再び帰宅の道へとついたのであった。

実はこの章の話は、担当様と第六巻の作業中に思いついた話であります。

校正作業中にちょっとした問題が起こって、そう言えばそろそろ書かないといけないかな、と。

そのことを言ったら、是非書いてくださいと言われたので、書き始めました。


と書くと勢いで書いたように思われるのですが、タイミング的には本当に丁度いいのです。

そのタイミングというのは、ミクの学園入学です。

ということで、今章はミクが中心になります。

これ以上はネタバレになるので、今回はここまでw

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