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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(10)新しい宝玉

 始まりの家のリビングにいた考助は、珍しい光景に出くわすこととなった。

 基本的に考助のそばにいる女性たちは、普段の生活において慌てる様子というのを見せることがほとんどない。

 勿論、慌てる時がないというわけではないのだが、それは本当に焦るような何かが起こった時である。

 そして、この時のシュレインも、その例に漏れないのであった。

 

 転移陣がある部屋から慌てて駆け込んできたシュレインを見て、考助が驚いた顔になった。

 考助のすぐ傍にいたシルヴィアも、何事かと目を丸くしている。

「シュレイン? そんなに慌ててどうしたの? ・・・・・・まさか、子供になにかあった!?」

 子育てに夢中になっているシュレインが慌てるとすれば、そのことしか思いつかなかった考助が、少しだけ不安げな表情になる。

 だが、そんな考助に、シュレインは首を左右に振った。

「いや、すまないのじゃ。シュウは元気にしておる。そうではなく、見てほしいものがあるのじゃ!」

 シュレインは、慌ててるというよりも、興奮しているといった様子で、考助にあるものを差し出してきた。

 

 シュレインの手の上に乗っているものを見た考助は、首を傾げた。

「それは宝玉じゃないの? それがどうかした?」

「そうだの。 宝玉なのじゃ! されど、ただの宝玉じゃないのじゃ!」

 シュレインはそう言いながらさらに考助に向かって、その宝玉をずいと差し出してきた。

 その顔は、いいからさっさと調べろと言っている。

 

 シュレインから宝玉を受け取った考助は、透かして見るように持ち上げて眺めた。

「うーん。ここじゃ道具もないからあまり詳しくは調べられないんだけれど・・・・・・なにかほかのと違った反応でもあった?」

 シュレインの反応からそう判断した考助だったが、当の本人は不満げに唇を尖らせた。

「むう。どうしてわかるのじゃ?」

 どうしてもなにも、シュレインの様子を見れば、それくらいの予想はできる。

 そう考えた考助は、自分の考えが間違っていないか確認するように、シルヴィアを見た。

 すると、シルヴィアもそれに同意するように小さく頷いていた。

 

 自分だけが分かったわけではないと理解した考助は、シュレインを見ながら答えた。

「いや、別に宝玉から分かったわけではなくて、シュレインの反応を見てそうじゃないかなと思ったんだけれど? ちなみに、シルヴィアもわかったみたいだよ?」

「な、なに!?」

 考助の言葉に、シュレインはシルヴィアを見た。

 シュレインから視線を向けられたシルヴィアは、肯定するように小さく頷いた。

「それだけの反応をすれば、私やコウスケさんではなくともわかると思います」

 シルヴィアがそう答えると、シュレインはようやくここで、自分のこれまでの行動を思い出したようだった。

 

 一度天井を見て深呼吸をしたシュレインは、苦笑しながら言った。

「確かに、少しはしゃぎすぎていたようじゃの」

 そう前置きをしてから、持ってきた宝玉についての話を始めた。

「シュウも大分落ち着いてきたからの。少し空いた時間を使って、久しぶりに宝玉を作ってみたのじゃ」

「ああ、それは新しく作った分だったのか」

 シュレインは、以前作った複数の宝玉をまだ持っている。

 その宝玉が何かの変化をしたのかとも考えていたのだが、その可能性はいまのシュレインの言葉でなくなった。

 

 そしてさらに、以前宝玉を作ったときは、それ以上作れないというところまで作っていたはずだが、今回の儀式で新しく作れたということになる。

 その理由も考助にとっては興味深いものである。

 とはいえ、まずはシュレインをこれほどまでに興奮させている新しい宝玉が見せた反応とやらが気になる。

「それはともかく、その宝玉が見せた反応って?」

「うむ。新しく作れたことも驚いたのじゃがの。なんと、シュウにこの宝玉を近づけると、淡く光ったのじゃ!」

「へえ。それは・・・・・・確かに興味深い現象だね」

 ようやくシュレインが興奮している理由が分かった考助は、すっと目を細めた。

 それは、シュレインと同じく、考助がその宝玉に興味を持った証だ。

 言うなれば、獲物を見つけた鷹の目のようなものだ。

 

 興味を持った考助は行動が早かった。

 そして、シュレインを質問攻めにした結果、状況が分かってきた。

 まず、シュウが成長してくるにつれて、シュレインに空き時間ができるようになってきていた。

 そこでシュレインは、久しぶりに宝玉を作るための儀式を行ったのだ。

 シュレインとしては別に宝玉ができなくても構わなかったのだが、結果として宝玉はできた。

 そこで多少は驚きつつも、できたばかりの宝玉を持ったまま、シュウのところに向かったそうだ。

 そして、できたばかりの宝玉を持ってシュウのそばに行くと、いま彼らの目の前にある宝玉が淡く輝きだしたというわけだった。

 

 

 シュレインから話を聞き終えた考助は、手のひらの上で宝玉を転がしながら首を傾げた。

「うーん。シュウに近づけると、輝いた、ねえ・・・・・・。ちなみに、シルヴィアが持っても変わらない?」

 考助はそういいながら、シルヴィアに宝玉を渡した。

 宝玉を受け取ったシルヴィアだったが、残念ながら考助やシュレインの時と同じように、何の変化も起こらない。

 試しに、コウヒやミツキにも渡したが、一切変化は起こらなかった。

 ちなみに、宝玉が光ったことに驚いたシュレインは、シュウ以外に光るのか、その場にいた者たちにも持たせて試してみたそうだ。

 結果は、今と同じく無反応で、反応するのはシュウの時だけだった。

 

 これらの結果を受けて、考助は腕を組んで考え始めた。

「うーん・・・・・・。シュウにだけ反応する宝玉か。でも、どのタイミングで識別されたのかな? ・・・・・・シュレインが子供を産んで、初めて作った宝玉だから・・・・・・?」

 そんなことをぶつぶつとつぶやいている考助は、端から見れば怪しい人感満載である。

 だが、シュレインもシルヴィアも慣れたもので、考助の思考がまとまるのを待っていた。

 

 やがて考助は、首を左右に振ってからシュレインを見た。

「これ以上はここで考えても意味がないや。それよりもシュレイン、その宝玉どうするの?」

「どう、とは?」

 突然すぎる問いかけに、シュレインは首をかしげることしかできなかった。

 考助が何のことを聞いてきたのか、さっぱりわからなかったのだ。

 

 そのシュレインに、考助は真面目な顔になって言った。

「たぶんだけれど、その宝玉、シュウが『登録』できるようになっていると思うよ? ヴァミリニア宝玉にも、同じようなことができるよね?」

「登録・・・・・・確かにできるが、なぜそのことを知っておるのじゃ?」

 ヴァミリニア宝玉への登録は、宝玉を引き継ぐ資格を持つ者しか知らないことのはずなのだ。

 そのことをなぜ考助が知っているのか、シュレインはまずそのことが気になった。

 

 そのシュレインに、考助は肩をすくめながら答えた。

「だってヴァミリニア宝玉への干渉ができるのが、シュレインだけになっている時点で、それくらいしか考えられないじゃない?」

 考助は、ヴァミリニア宝玉に関わることを調べていた時から、そうなっているのではないかと考えていたのだ。

 むしろ、そうでないと説明がつけられないことが多すぎた。

 今のシュレインの言葉でそれが証明されたことになるが、だからといって、権限を譲ってほしいなんてことを言うつもりは毛頭なかった。

 というよりも、そんなことを言うつもりなら、最初の時からそうしている。

 

 そんなことよりも、今は新しくできた宝玉のことのほうが、考助にとっては興味がある。

 その宝玉にシュウを『登録』するのかどうか、それは母親であるシュレインの決断に委ねられられた。

 その結果、シュレインは、シュウがもう少し大きくなって分別がつく頃になってから、自分に決断させるということに決めるのであった。

シュウ専用の宝玉ができました。

これがどう化けるのかは、作者にもわかりません。

(まだ決めていないw)


※申し訳ありませんが、GW中ということで、三連休をください。

次回更新は、5/8ということになります。

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