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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(1)ややこしいこと

 考助は、孤児を引き取るための施設を作っている間、それ以外を何もしていなかったわけではない。

 特に、考助にとって一番大きかったのは、トワが子供たちを連れて管理層に来たことだ。

「じいじさま、ばあばさま! 来ました!」

 考助に向かって元気よくそう挨拶してきたのは、トワにとっての長女であるケイだった。

 その挨拶に、後ろに控えていたダニエラが少し青い顔になっていたが、考助とフローリアは見なかったことにした。

 ケイの年は長男であるトビから五才下である三歳だ。

 きちんとした発音ができていないのはご愛敬だろう。

 考助もフローリアも子供が多少の形式から外れていたからと言って、どうこう言うような性格をしていない。

 

 ちなみに、ダニエラの腕には、この秋に生まれたばかりの次男であるジュンが抱かれている。

 今回のトワ一行の訪問の目的は、ジュンのお披露目がメインなのだ。

 現に、考助は目じりが下がりまくっていて、フローリアの顔から笑みが消えることはなかった。

「おー。やっぱりダニエラに似ているなあ」

「そうだな。良かったな父親に似なくて」

「だね。口元なんか、うり二つじゃないか?」

「・・・・・・父上、母上」

 遠慮なしに感想を言い合う考助とフローリアに、トワが若干口元を引き攣らせながら制止した。

 自分の腕の中に子供がいるために、夫兼国王であるトワをわざと揶揄っている考助とフローリアに対して、ダニエラは少し困ったような顔をしていた。

 

 そのトワをフローリアがチロリと横目で見てから言った。

「なんだ、トワ? 私は間違ったことは言っていないぞ?」

「・・・・・・はあ。もういいです。それよりも、ここから移動しませんか? いつまでもダニエラに抱かせているわけにもいかないでしょう?」

 考助たちが今いる場所は、転移門がある部屋だ。

 そのため考助たちは立ったままなのだが、確かにダニエラにずっと立たせておくのは忍びない。

 そのことをダシに、トワが今の話題から逸らそうとしているのは、すぐにフローリアにはわかったが、とりあえず言う通りにすることにした。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 くつろぎスペースに移ったフローリアは、さっそく揶揄おうとトワを見たが、その前にその当人が動いた。

「そういえば、父上がまたなにやら始めたと聞きましたが、何をするつもりですか?」

 わざとらしいタイミングだったので、目的は明らかだったが、考助は苦笑しながら答えた。

「いや、別に大したことはするつもりはないよ。お金を腐らせても仕方ないから、少しだけ還元しようと思っただけ」

「・・・・・・それは、国にとってはいいこととは思いますが・・・・・・」

 考助が持っている資産は、とんでもない額になる。

 それに、嫁さんズの持っている資産まで合わせると、凄まじい額が塩漬けになったままになっているのだ。

 それを考えれば、孤児院という普通に考えてもお金がかかる事業に投資をしてくれるのであれば、ラゼクアマミヤにとってもいいことはあっても悪いことはほとんどない。

 

 トワがココロから新しい孤児院が出来ると話を聞いたときには、普通にいいことだと考えていた。

 だがそれは、オーナーが考助であると聞いた瞬間に崩れ去った。

 そして、真っ先に浮かんだ言葉が、先ほどの考助に対する問いというわけだ。

 これまでの考助の行ってきたことを考えれば、トワのその心配は間違いではない。

 実際に、話を聞いていたフローリアは、聞かなかったことにして視線をわざとらしくジュンに向けている。

 

 フローリアからの助けは来ないと悟った考助は、ため息をつきながらトワを見た。

「本当に、孤児を引き取るだけだって。子供たちの成長を助けることはするけれど、その後どう判断するかは子供たち次第だし、僕にはどうしようもできないよ」

 別に例の孤児施設で育てた子供たちに、将来の行動を完全に縛るつもりは考助にはない。

 子供たちを育てていく中で、どう教育していくかは、ある程度の方針は決めているが、細かい内容はリンやサリーに任せるつもりだ。

 騎士団云々に関しては、考助は一切関わっていない。

 

 その考助の言葉をどう受け取ったのか、トワがジト目で見た。

「ほう。ということは、その教育方針とやらに、私も口出しをしてもいいのですか?」

 突然にそんなことを言い出してきたトワに、考助は目を丸くした。

「どうしたの、突然? それは別に構わ・・・・・・」

「いや、それは止めた方がいいだろうな」

 トワが必要だと思うのであれば許可しても良いと言おうとした考助だったが、すぐにフローリアに止められた。

 

 断られた意味が分からずに視線を向けて来た考助に、フローリアはため息をついてから答えた。

「トワ、すなわち国が口を出せるようにするとなれば、当然予算をつけるということになるのだろうが、そうなると折角秘匿している場所が外に漏れることになりかねないぞ?」

 施設の予算は、完全に考助たちのポケットマネーから出ている。

 それが、もし国から予算が出るとなれば、あれこれと口を出してきて、場合によってはどういう場所なのかとか、階層の秘密に迫るようなことになるかもしれない。

 それは別に、トワの代ではなく、後々代が進んだときに禍根のようなものになるかもしれないのだ。

 

 そんなことまで考えていなかった考助に対して、トワはそうだろうなという顔で頷いていた。

「当然でしょうね。・・・・・・はあ。どうせ成功する事業なのだとわかっているのだから、一枚かんでおきたかったのですが」

「気持ちはわかるのだがな。今回は諦めろ」

「そうですね」

 なにやらさっさと二人で話が終わってしまった様子に、考助は戸惑ったような顔になっていた。

 予算云々の話からどう繋がって事業の成功になり、国が絡んでおきたいということになるのかがさっぱりわからなかったのだ。

 

 

 そんな考助に、フローリアもトワもそれ以上の説明をしなかった。

 政治が絡むややこしい話になる上に、その話を現人神である考助に聞かせては駄目だと判断したのだ。

「そういえば、コウスケ。そろそろミクが来るのではないか?」

 それは、フローリアのあからさまな話題転換だったが、考助は自分が聞かないほうが良いんだろうと理解して、その話題に乗ることにした。

「うーん、どうだろう? ピーチにはトワたちが来る時間を伝えておいたんだけれど・・・・・・」

 今日、トワたちが管理層に来ることを伝えたら、ぜひとも新しい子供を見たいと、ピーチとミクが揃って言い出してきたのだ。

 特に断る理由もなかったので、大体の時間を伝えておいたので、確かにそろそろ来てもおかしくはない。

 

 そんなことを話していたまさにその時に、ピーチとミクがくつろぎスペースへと入って来た。

「お父様、来たよ~」

「おお、ミク、ピーチいらっしゃい」

 しっかりと胸にストリープを抱いているミクに笑いかけながら、考助は続けてピーチを見た。

 そのピーチは、しっかりと目線がジュンに釘付けになっている。

「ふわー。やっぱり赤ん坊は可愛いですね~」

 思わずといった感じで漏れたそのピーチの声に、考助は苦笑をしていた。

 気持ちはよくわかるだけに、ピーチのだらしない顔を揶揄することも出来なかった。

 

 そのピーチを放っておくことにした考助は、ミクを見て言った。

「折角だから、皆に何か演奏してくれないかな?」

「えっ!? 良いの?」

「うん。良いよ。でも、赤ん坊がいるから、きちんと抑えてね」

「うん!」

 ミクの演奏時の魅了の力は、すでにしっかりと抑えられるようになっている。

 ミクは来年学園に入学する予定になっているのだが、なんとかそれに間にあわせたのだ。

 

 考助に促されたミクは、早速とばかりにストリープを構えて、曲を弾き始めた。

 その音を聞いたジュンが、聞き耳を立てているように見えたのは、ただの偶然なのか、それとも音はしっかりと聞こえている証拠なのかは、誰にも分からないのであった。

途中、フローリアが懸念したのは、もし本当に騎士団のようなものができたときに、国に口出しをされることになるのではないか、ということです。

まあ、そのときも考助本人がいるはずなので、そんなことはさせないと思うのですが、念のためです。

考助と国の関係が、そのときにどうなっているのか、誰にも分からないですから。

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