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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(10)運用開始

 シルヴィアとフローリアが具体的に人材を集めている間、考助は地道に建物の準備をしていた。

 今回は念のため規模が拡張できるように、最初からそのつもりで設計してある。

 ただし、考助は建築のプロではないので、ニワカ感が否めないのは仕方ないだろう。

 物作り系の神として順当に成長している考助だが、何事にも最初に作る物というのはあるのだ。

 ・・・・・・と、心の中で言い訳をしつつ、考助は準備の作業を続けていた。

 最初に作るのは、以前作った家と同じようにレンガなので、ここで失敗することはない。

 ただし、前回とは違って数が極端に多くなるので、作業中に飽きてしまいそうになるのが難点だ。

 それでも、ずっと品質を保ち続けることが出来るのは、さすがといえるだろう。

 

 そんな延々と続く作業が終われば、今度は周辺から切って来た木材に加工を施した。

 最初に用意したレンガは基礎やちょっとした道を作るために使われる。

 そして、今回の建物は、いま用意している木造がメインとなる。

 これも初めての試みなので上手くいくかは分からないが、そこはそれである。

 失敗したら失敗したで、もう一度作り直せばいいや程度の軽い気持ちで、考助は準備作業を進めていた。

 

 

 そんな作業を一月近く続けて、ようやく目標となる数を揃えることが出来た。

 まずは、ユリが選んでくれた範囲内を、コウヒやミツキにも手伝ってもらいながら魔法を使って整地を行っていく。

 そうしてすべての下準備が整ってから、いよいよ建物の建築を始めた。

 どういう順番で建てて行けばいいかは、きちんと頭の中に入っている。

 イメージしているのは、百合之神社のような建物だが、そこに以前の家と同じように魔法陣の仕掛けが入るので、上手くいくかどうかは実際に建ててみないと分からない。

 とはいえ、いきなり失敗するようなことはなく、順調に作業は進んで行った。

 

 

 イメージ通りに作業が進んで外観もほとんど完成したころになって、シルヴィアとフローリアが、リンとサリーを連れて現場にやってきた。

「ほう。きっちりと進んでいるようだな」

「そうですね。予定通りに終わりそうですか?」

「そうだね。ここで変な躓きがない限りは、きちんと終わると思うよ」

 考助たちがそんなことをのほほんと会話をしている中で、サリーとリンは唖然とした表情で、完成間近の建物を見ていた。

「これを、たった一人の力で、造ったと?」

「……さすが、現人神様です」

 サリーとリンが順番に発言していたが、残念ながら考助の耳までは届かなかった。

 二人は、考助に恐縮して、多少離れたところにいたからだ。

 

 そんなサリーとリンに、考助が笑って話しかけた。

「そんなところにいないで、もっと近くに来たら?」

「あ、はい」

 何度か対面したことがあるリンが、緊張した様子のまま考助の傍に近付いた。

 考助に話しかけられた瞬間、びくりと体を揺らしていたサリーは、リンの動きを見てゆるゆると着いて行った。

 

 そのサリーの様子を見ていた考助は、まずはリンに話しかけた。

「リン、久しぶりだね。元気だった?」

「はい。お陰様で何事もなく無事に過ごしております」

「そう。今回のことは突然だけれど、よろしくね」

 なるべく気楽な調子に聞こえるように言った考助に、リンは小さく頷いた。

 考助が、なぜ自分から先に話しかけたのかは、サリーの様子を見ていればわかる。

 

 考助は、そのサリーに向かって話した。

「サリー。ここから巣立つ子供たちは、間違いなくあなたの教えを受けて成長していくことになると思う」

「は、はい!」

「……モンスターを相手にする以上は、犠牲をゼロにすることは出来ないと思うけれど、出来るだけ無事に帰ってこれる子供たちになってほしいね」

 考助が静かにそう語りかけると、サリーはグッと言葉に詰まった様子を見せてから、一度だけ頷いた。


 そのサリーの顔は、どこか決意に満ちているように見えた。

 もしこの場にリリカがいれば、冒険者現役時代の戦闘前の顔だと言っただろう。

 だが、そんなことは知らない考助でも、サリーのその顔を見れば何かを背負っているということは分かった。

 だからこそ考助は、敢えて軽い調子になって言った。

「まあ、といっても、そんな親のいうことなんか聞かずに、好き勝手に成長してくのが子供なんだと思うけれどね」

 その考助の言い方に、サリーは一瞬驚いたような顔になってから、すぐに笑顔を浮かべた。

「確かに、その通りかもしれません」

 そう答えたときのサリーの顔は、先ほどまでの固い感じは完全に消えていたのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 リンとサリーが、シルヴィアと一緒に転移門に向かって行くのを見送っていたフローリアが、考助に話しかけた。

「随分と気を使うんだな?」

「いや、それって、どういう評価? 普段、全然気を使ってないみたいじゃない」

 少しばかりむくれて言った考助に、フローリアが笑いながら答えた。

「いや、すまんすまん。そんな意図は無かったんだ。ただ、何となく不思議に思ってな」

 いつもの考助であれば、初対面の人の内面にいきなり踏み込むような真似はしない。

 それが、今回はいきなりそういう行動を取ったために、フローリアは少しだけ違和感を覚えたのだ。

 

 フローリアの言葉に、考助は小さく首を傾げて、

「いや、特に意味はないんだけれどね。何となく思い浮かんだことを言っただけ」

 考助にしてみれば、あの場でああいうことを言うとは自分でも思っていなかった。

 ただ、何となくサリーの顔を見た瞬間に、ああ話したほうが良いだろうと思い浮かんだだけなのだ。

「・・・・・・ふむ。コウスケも神様らしくなってきたということか?」

 ただ思いついたことを言っただけで、それが人の心に響く言葉になるというのは、ただの偶然ということもあるかもしれないが、考助の場合はそれだけでは済ませられないだろう。

 

 真面目な顔になって言ってきたフローリアを見て、考助は一瞬虚を衝かれたような顔になったあとで、苦笑を返した。

「いや、どうだろう? そんなことはない、と思うけれどね」

 全く自覚がない考助としては、そんな気持ちには到底なれない。

 だが、フローリアがそう感じたということは、本当にそうなのかもしれないと考えた。

 そんな考助に、フローリアは少し慌てた様子で付け加えた。

「いや、特に根拠があってのことではないからな? あまり真面目に受け取られると困るのだが」

 フローリアがそう言うと、考助は一瞬言葉に詰まってプッと噴き出した。

 それに続くようにフローリアも同じように笑っていた。

 そのふたりの様子は、傍から見ればただの仲の良いカップルなのだが、この場にはそれを指摘する者は誰もいないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結局、考助が造り始めた建物は、二月近くの期間が掛かって完成した。

 準備から完成まですべてを一人で行ったことを考えれば、あり得ないような速さなのだが、そこは誰も突っ込まなかった。

 考助の近くにいる者たちは、「どうせコウスケがやることだから」と気にも留めていなかったのである。

 とにかく、建物も無事に完成した孤児の為の施設は、全ての準備が整ったその日から子供たちの受け入れを開始するのであった。

最後は一気に進んでしまいましたが、特に書くようなことも起こってないので、すっ飛ばしました。

ちなみに、考助は建物の建築にかかりきりになっていたわけではありません。


これにてこの章は終わりで、次からは新しい章の開始です。

※次話の更新は、4/24(月)になります。

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