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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(7)一人目の人材

 シルヴィアとフローリアは、百合之神社にいたココロと別れて、第五層の神殿へと向かった。

 最近リンは、そこで寝泊まりをしていることが多いとココロが言っていたためだ。

 第五層の神殿は、基本的には聖職者たちは常駐していない。

 だが、旅の聖職者が神殿の手入れをする代わりに寝泊まりをしたりすることがあるようだった。

 本来であればその神殿に常駐している聖職者に、お布施代わりのお金を払ったりするのだが、そうしたこともないためいつの間にかそうした習慣ができていたようである。

 最近はシルヴィアも神殿に来ることが少なくなっていたので、まったく気付いていなかった。

 

 リンは、ココロやリリカの手伝いをしていることが多いので、城の中に部屋を用意してもらうこともできるのだが、それを固辞して敢えて神殿で寝泊まりしている。

 それが常駐ではないかといわれれば微妙に正しいのだが、別にその神殿で力をふるっているわけではないので、周りからもお目こぼしをされているようである。

 もっとも、そんな状態で済んでいるのは、リンの人柄も大きく影響しているのだが。

 

 それはともかく、第五層の神殿に向かったシルヴィア(とフローリア)は、そこに知り合いがいるのを見つけて声をかけた。

「こんにちは。こちらにリンという名の神官がいると聞いてきたのですが、いるでしょうか?」

「おやまあ、久しぶりじゃないか。リンだったら上にいるんじゃないか?」

 多少恰幅の良い女性が、シルヴィアの問いに笑いながら答えた。

 その女性は、以前から神殿の清め(掃除)を行っていて、シルヴィアとも顔見知りだったのだ。

 非常に気さくな感じだが、シルヴィアも咎めるつもりはない。

 初めて会ってから何年も経っているのだから、それも当然だろう。

 もっとも、シルヴィアの場合は、誰が相手でも同じような感じだろうが。

 

 女性に礼を言ったシルヴィアは、フローリアと一緒に神殿の階段を昇って行った。

 とはいえ、神殿自体がそれなりの大きさがあって、二階のどの部屋にリンがいるかまではわからない。

 仕方なしに、シルヴィアとフローリアは、しらみつぶしにすべてのドアをノックして声をかけて行くことにした。

 

 そんなことをしているうちに、リンのほうが音に気付いたのか、ひとつのドアから顔を出してきた。

「私をお呼びです――――おや。シルヴィア様に、フローリア様。どうされましたか?」

 リンはジンと一緒に生活していたときから、管理層の者たちと面識がある。

 直接会うのは久しぶりだったが、流石に見間違うことはなかったようだ。

「ああ、そちらにいましたか。リン、少しあなたに話があるのです」

「話、ですか。それは構いませんが、こちらで話しますか?」

 そう言いながらリンが示したのは、自分が寝泊まりしている部屋だった。

「そうだな。出来ればそうしたほうがいいだろう」

 フローリアはすぐにその招きに応じて頷いた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 リンの寝泊まりしている部屋に入ったシルヴィアとフローリアは、早速施設についての話をした。

「――なるほど。私にその施設を管理してほしいというわけですか」

「そうですね。リンであれば私たちも適任だと考えますし、それに、あなたにとっても悪い話ではないと思います」

 そう言い切ったシルヴィアに、リンは少しだけ探るような表情になった。

「どういうことですか?」

「施設には、代表としてジン殿に務めてもらうつもりなのですよ。――――もうしばらく会っていないのですよね?」

 シルヴィアがそう言うと、リンは驚いたような顔になった。

 

 そのリンの顔を見たフローリアが、少しだけ不思議そうな顔になった。

「なんだ、その顔は?」

「いえ、私がこちらに戻ってきてから、一度も師の名前を聞かなかったものですから、てっきり・・・・・・」

 少しだけばつの悪そうな顔になったリンに、シルヴィアとフローリアは顔を見合わせて小さく笑った。

「亡くなられたと思っていたのですか」

「まあ、ジン殿も高齢だからそう考えるのは、よくわかるがな」

 ジンがいつどうなってもおかしくないくらい高齢なのは、シルヴィアやフローリアもよくわかっている。


 そのため、リンのことを責めるようなことは言わなかった。

 代わりに、最近でもよく話をしているシルヴィアが、笑いながら続けた。

「リン。私たちは神に仕える身なのですよ? 人の死を、しかもあなたの師のことを隠すわけがないですよね?」

「確かに、仰る通りです。・・・・・・はあ。私もまだまだ修行不足ですね」

 今回の場合は、変なところで気を回して、肝心なことを聞かなかったために起こったことだ。


 ため息をついたリンに、フローリアが笑って続けた。

「私も一週間ほど前に会ったが、まだまだ元気だったぞ? それこそ百まで生きるのではないか、あれは」

「・・・・・・それはそれで、とても師匠らしいといえるかもしれませんね」

 フローリアの遠慮のない感想に、リンは微妙な表情を浮かべた。

 九十才を超える師匠ジンが、元気に動き回っている姿を思い浮かべて、何とも言えない気持ちになったのだ。

 

 

 微妙に話がそれてしまったので、ここでシルヴィアが軌道修正をして、元の話に戻した。

「それで、施設の件はどうされますか?」

「いきなりのことですから、すぐには返事をできません。お時間を頂いてもよろしいですか?」

「ええ、それは勿論です」

 リンの返答に、シルヴィアが当然だという表情で頷いた。

 神殿で寝泊まりしているリンだが、城で神官としての仕事もこなしているのだ。

 いきなり新しい場所に移ってくれと言われても、すぐに移動できるわけではない。

 

 施設自体もまだできていないのだから、まだ時間は十分にある。

 ただ、建物を用意するのが考助なので、何カ月もかかるというわけではないことも、シルヴィアとフローリアはきちんとわかっている。

「それはそうと、他にもいい人材に心当たりはありませんか?」

 考助が孤児たちに教えようと考えているのは、普通の教育だけではなく、塔のダンジョン層を攻略できる人材の育成だ。

 そのためには、子供たちに戦闘技術を教える者もいなくてはいけない。

 ただ単に、武器の扱い方を教えるだけならば適当な冒険者を雇えばいいが、今度作る施設となるとそういうわけにもいかない。

 何しろ、考助が直接関わることになるので、信用のある人物でなくてはならないのだ。

 

 シルヴィアの問いに、リンが答えた。

「残念ながら私には心当たりがありません。ですが、リリカさんには、そちら方面の知り合いとかがいるのではありませんか?」

 リンの言葉に、シルヴィアとフローリアが納得の表情になった。

 今でこそ巫女として城の中で重要な役目を果たしているリリカだが、元は一冒険者だったのだ。

 当然、その頃に知り合っている仲間もいるはずだ。

 そこから伝手を使えばいい人材がいるかもしれない。

 

 

 シルヴィアとフローリアは、ちょうど今から城に向かうというリンに着いていくことにした。

 どうせ行く場所が同じなのであれば、一緒に行こうとフローリアが提案したのだ。

 リンがそれに素直に同意して、三人は揃って城に向かうことになったのである。

答えを保留にしたリンですが、心の中ではほぼ決めていますw

あくまでも、現在の仕事に支障が無いようにしたいというだけです。


そして次に向かったのはリリカの所です。

(考助は、施設の建物を建築中w)

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