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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(2)答え合わせ

 ホルとヘルを十分に褒めた考助は、その後で他の三体も可愛がってあげた。

 そこでもスコットは「全部懐くって・・・・・・」と驚いていた。

 スコットは、レンカが狼を飼うことを了承しているが、懐くのはレンカばかりで自分に懐いてくれてないことを寂しく思っていたりするのだ。

 もっとも、こればかりはどうしようもないことで、諦めもついていた。

 ただ、全ての狼が考助に懐いているのを見て、何かが刺激されたのか、うずうずとした表情になって言ってきた。

「ひとつお願いがあるのだが、私にも懐いてくれる狼はいないのかい?」

 スコットにそう聞かれた考助は、戸惑どいつつ困っているような表情を浮かべた。

 貴族であるスコットからそう言われれば、命令だと考えても仕方がないのだ。

 

 その考助の顔を見て、スコットは慌てて右手を振った。

「い、いや! 別に絶対に手に入れろと言っているわけじゃないんだよ。単に、もしいたらいいなあ、と思っただけで!!」

 何やら激しく言い訳し始めたスコットを見て、考助は内心で首を傾げた。

 確かにスコットは、貴族の割には人当たりが良く、話も通じそうだが、それだけでこんな反応をするのかと疑ったのだ。

 不思議に思った考助がふと視線をスコットの脇に向けると、そこには夫人レンネの手が添えられていた。

 

 見ようによっては夫の腰に手を当てているだけにも見えるが、それだけではないと考助は直感した。

 見えないところでのふたりのやり取りに気付いてはいたが、考助はそれを口にするようなことはしない。

「どうでしょうか。さすがに今の状態では、私にもわかりません」

 そう無難なことを返した考助に、スコットはあからさまに肩を落としていた。

 

 少しばかり気の毒な気がした考助だったが、こればかりはどうしようもない。

 今回は、貴族の当主と会うとわかっていたので、ナナやワンリは連れてきていない。

 もし、どちらかがいればわかったかもしれないが、むしろいなくて良かったと考えている。

 レンカのようにまだ考え方に柔軟性がある子供であれば、色々なことを受け入れて、狼たちにとっても受け入られる育て方が出来るだろう。

 だが、スコットのように大人になってしまえば、常識が邪魔をして変な思い込みを押し付けてしまうかもしれない。

 そうなった場合に、狼たちがどういう行動を取るのか、考助にもわからないのだ。

 まあ、ナナやワンリが選んだ相手であれば、そんなにおかしな態度はとらないだろうが、それは脇に置いておく。

 

 考助の答えにスコットの少し後ろに立っていたレンネがホッとした表情を浮かべていたので、この答えで間違っていなかったと考助は安心した。

 子供の我が儘はともかく、夫婦間では何が離婚に繋がるがわからないのだ。

 ちなみに、ちらりと考助が視線を向けると、夫人レンネがほとんど気付かないくらいに小さく頷いていた。

「さあ、貴方。いつまでもお客様をこちらに立たせておかずに、きちんとお迎えしましょう」

「う? うむ。そうだな」

 レンネの言葉に、ようやく自分が客人を迎えている立場だと思い出したスコットは、頷きながら考助たちを屋敷の中へと案内し始めた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 狼たちは屋敷の中には連れて入れないので、レンカが再び小屋へと戻しに行った。

 その間、考助たちはスコットの案内に従って、応接間のような部屋へと移動した。

 そこで席に落ち着いたスコットは、貴族の顔に戻って考助を見て来た。

「さて、今であれば少し時間があるから話してもらってもいいかな? Aランク冒険者である君の目的とは?」

 レンカが戻って来るまでにきちんと確認しておきたいと続けたスコットに、考助は後ろに控えていたミツキに視線を向けながら答えた。

「いえ。大したことではないですよ。僕の眷属たちを人に預けた場合、どうなるかを知りたかっただけです」

 考助がそう言い出すよりも早く、ミツキが一瞬で声が漏れないように結界を張っていた。

 

 その早業に、スコットとレンネが目を丸くすると同時に、考助の言葉の意味が分からずに首を傾げた。

「眷属、とは?」

「これは、結界・・・・・・ですか」

 スコットとレンネで気になったことが違っていたが、どちらも二人にとっては重要なことだった。

 しかも、ミツキが張った結界は、ご丁寧にも傍に控えていたメイドや護衛たちが含まれないようになっている。


 ただし、その結界は、あくまでも声が漏れないようにするためのもので、それがわかったスコットは、動き出そうとしていた護衛たちを手で止めていた。

「・・・・・・どういうつもりかな?」

 少しばかり警戒するような声で言ってきたスコットに、今度はフローリアが笑いながら言ってきた。

「どうもこうも、仮にも高位の貴族である其方が、これだけの情報を与えられてもわからないというのか?」

「なに・・・・・・?」

 考助たちが冒険者だと思っているスコットは、フローリアの物言いに眉をひそめながら、それでも怒ることなく考え始めた。

 

 スコットが持っている情報は、考助がAランクの冒険者だということだ。

 結界自体はさほど珍しいものではないが、これだけの結界を目配せをしただけで、しかも目的に沿うものを一瞬で張ったということが異常といえる。

 あの絶妙のタイミングで目標に結界を張れる魔法使いは、超一流と言っていいだろう。

 とはいえ、Aランク冒険者に名を連ねているのであれば、そのくらいの腕はあってもおかしくはない。

 

 問題なのは、考助が言った眷属という言葉だ。

 これは、はっきりと狼が考助の眷属であることを示している。

 眷属という言葉は、モンスターや動物を完全に従えている状態を指すもので、一般のテイマーが魔物を従えている程度では使われることが無い。

 もっとはっきり言えば、スコットは神々が従えている動物たち以外に使われていることを実際に見たことも聞いたことが無かった。

 

 そこまで考えたスコットは、対話の相手が目の前にいるにもかかわらず、思わずハッとした表情になってしまった。

「ま、まさか・・・・・・?」

 そうスコットが呟くのと同時に、レンネも同じような顔になっていた。

 二人からの視線を受けた考助は、特に何も言わずに、先ほどと同じようにただ笑みを浮かべた。

 代わりに、今度はフローリアに代わってシルヴィアが答えた。

「恐らく、お二人のご想像は合っていると思います。あのお嬢様は、中々の強運の持ち主ですね。・・・・・・もしかしたら悪運かもしれませんが」

「いや、ちょっとシルヴィア。そこは強運で止めておいてよ」

 混ぜっ返して言ったシルヴィアに、考助は思わず抗議の声を上げた。

 もっとも、考助のその反応に、シルヴィアはただ口元に手を当てて、笑い声をあげるのを抑えた。

 普段であれば、はっきりと笑っていただろうが、今はそういう場ではないので控えたのだ。

 

 もっとも、スコットやレンネにとってみれば、それどころではなかったというところだろう。

 シルヴィアと考助のやり取りで、一瞬にして状況を悟ったふたりは、慌てて席を立って頭を下げ――――ようとしたところで、フローリアに止められた。

「こらこら。せっかく結界まで張ったのに、それを無駄にするつもりか?」

 あくまでも冷静なフローリアの声に、スコットとレンネは浮かした腰を落ち着かせた。

「まあ、そういうことだ。とにかく、コウスケ(・・・・)も望んではいないので、先ほどまでの感じで話すように」

 フローリアにそう言われたスコットとレンネは、揃って微妙な表情になった。

 考助が現人神だとわかった以上、そんなことは出来ないと言いたいところだが、その当人(神?)の態度からもそれを言い出せないことが理解できたのである。

あっさりとばらしましたw

それは、この先のことを考えてということです。

それに、子供のために素直に頭を下げられる二人を見て、判断したということもあります。

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