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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(8)魔道具作成(監視付き)

 考助の風邪は、エリスの預言(?)通り翌日には治った。

 幸いにも、ほかに移る者もいなく、結果としては考助だけがダウンしたことになる。

 元気になった姿を見て、一番喜んでいたのはナナだったというのは、気のせいだと思いたい考助であった。

 ちなみに、シルヴィアも喜んではいたのだが、どちらかというと不安になったと言われてしまったので、ナナのように素直に態度に示していたわけではない。

 他の面々に関しては、シルヴィアに遠慮をしたのか、あるいはばつが悪かったのか、シルヴィアのように感情的になることはなかった。

 実際に風邪を引いた考助にしてみれば、どちらの態度が良かったのかは微妙なところだった。

 

 というわけで、風邪が治った考助は、早速とばかりに始まりの家の研究室に籠った。

 それを見ていたシルヴィアが、多少呆れたような顔をしていたが、考助は気付かなかったふりをした。

 熱にうなされてベッドに寝ている間に、ちょうど良いアイデアが思い付いたのだ。

 シルヴィア、コウヒ、ミツキの監視の目が厳しく、ベッドを抜け出せなかったため、かなりもどかしい思いをしていたのだ。

 考助は、その鬱憤を晴らすために、新しい魔道具を作り始めたのである。

 

 ただし、風邪が治って、研究室に籠った考助だったが、昼にはきちんと食事をとるために食堂に姿を見せていた。

 張り切って研究室に籠った場合は、昼を抜くことも珍しくないので、シルヴィアは半分安堵していた。

 残りの半分はといえば・・・・・・、

「何か不機嫌なように見えるのですが、魔道具を作っていたのではないですか?」

 基本的に、魔道具を作っているときの考助は機嫌がいい。

 そのため、少しだけ仏頂面を作っているように見えた考助の顔が、シルヴィアには不思議だったのだ。

 

 シルヴィアの問いに、考助は表情を変えずにぼそりと返した。

「・・・・・・コウヒに止められた」

「え? ――ああ、なるほど。そういうことですか」

 一瞬考助が言った言葉の意味が分からなかったシルヴィアだったが、すぐに納得して頷いた。

 本来であればずっと作業を続けていたかった考助だったが、病み上がりだからとコウヒに止められたのだ。

 だからこその今の考助の表情なのだ。

 

 事情を察したシルヴィアは、コウヒへと視線を向けて、軽く頭を下げた。

 それだけで言いたかったことは分かったのか、コウヒも目だけで頷いていた。

 シルヴィアとしても、昨日の今日でずっと籠っていてほしくはなかったのだ。

「まあ、今日くらいは良いじゃないですか。そもそも、午後から禁止されているわけでもないのですよね?」

 シルヴィアがそう聞くと、考助が何かを言うよりも先に、コウヒが頷いていた。

「ほら。そういうわけですから、今日くらいはきちんと昼を取って、少し休んでから続けてください。・・・・・・いいですね?」

 自分の言葉に「えー」という顔をした考助に、シルヴィアは念を押すように確認をした。

 そして考助は、シルヴィアの言葉に渋々といった表情で頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結局、風邪を引いた翌日の考助は、研究室に籠りつつも普段とは違って、不健康ではない生活を送ることになった。

 籠っていたはずの考助が、しっかりと夕食を取り、そのまま研究室に戻るでもなく寛いでいるのを見たフローリアが驚いていた。

「ど、どうしたのだ、コウスケは?」

「ああ、別に大したことではありませんよ。恐らく、コウヒに注意をされて諦めたのだと思います」

「コウヒに・・・・・・? ああ、なるほど、そういうことか」

 シルヴィアから説明を受けて、フローリアもようやく納得した表情で頷いた。

 ちなみにこの会話、一応考助に気を使って聞こえないようにひそひそと行われていたが、何となく考助にも内容は察することが出来ていた。

 もっとも、だからといって、今後も研究室に籠るのは止めることがないと断言できるので、どっちもどっちといったところなのかもしれない。

 

 

 そんな会話がありつつ、復帰二日目の夕方には、考助は研究室から出てきていた。

「あら。夕食まではまだ時間がありますが、なにかありましたか?」

 不思議そうな顔でそう聞いて来たシルヴィアに、考助は苦笑をしながらひょいと右手を上げた。

「いや。もう目的の物ができたから、出て来たんだ」

 そう言った考助の右手には、確かに魔道具らしきものが握られていた。

 

 流石に形だけではどんな魔道具かはわからずに、シルヴィアが首を傾げた。

「それは、なんの魔道具ですか?」

「ほら。少し前にユリと話をしていたじゃないか」

 考助が軽くそう答えると、シルヴィアは驚いて目を丸くした。

「もうできたのですか? そんなに簡単に出来るとは思っていなかったのですが・・・・・・」

 考助が作った魔道具がどんなものかを知ったシルヴィアは、そう言ったあとでまじまじと考助が持っている魔道具を見た。

 

 病み上がりの考助が作った魔道具は、先日、第八十三層の神社でユリと一緒に話をしたときに出ていた物だったのだ。

 具体的に言えば、神社の力をユリに定着させるために、考助の力を常時発する魔道具である。

 考助の神力を発生させる道具を作るのは簡単なのだが、従来の方法ではその状態をずっと維持するためには頻繁に神力を補充しなくてはならないため、効率を良くするのが難しかったのである。

 それが、熱を出して寝ている間に、ちょうどいい方法を思いついたので試しに作ってみたのだ。

 いちおう試作のつもりだったのだが、それが思いの他安定してできたので、そのまま神社に置いてみる気になったのである。

 

 シルヴィアの問いかけに、考助は肩をすくめながら答えた。

「どう頑張っても溜められる神力に上限があるんだったら、最初から発散する方を少なくすればいいと思いついてね」

 例えば、水槽に貯められた水が神力だとすると、出来るだけ長く水槽の水をもたせるためには、出て行く水の量を減らせばいい。

 理屈でいえばごくごく簡単なことなのだが、問題は出て行く神力を調整するのが難しかったのだ。

 普通、神力を貯めることが出来る魔道具は、どんな状態に置いておいても、一定量は減って行く。

 考助が作りたかったのは、その自然現象を抑える必要があったので、色々と時間がかかっていたのだ。

 

 考助の説明に、ひとつ疑問が浮かんだシルヴィアが、もう一度首を傾げた。

「出て行く神力の量を減らすと、建物に与える影響が小さくなってしまうのでは?」

「僕もそう思っていたんだけれどね。よくよくユリに確認してみたら、量よりもそこに神力が『ある』ということが大事なんだって」

 ユリと建物が『繋がる』ためには、建物全体に考助の力が満ちることが大事なのだ。

 ただ、この場合の力が満ちるというのは、水槽の中に水をためていくようなものではなく、あくまでも水があり続けるという状態をいっている。

 要するに、水が存在さえしていればいいので、ドバドバと流し込む必要はないのだ。

 その話をユリから聞いた考助は、それならと今回の道具を作ったのである。

 

 神力の補充はひと月に一回ほどで済むので、考助にもさほど負担にはならないという計算になっている。

 その計算どおりにいくかどうかは、それこそ実際に置いてみないとわからないのだ。

 そのため考助は、しっかりと神力を補充してから第八十三層へと行き、神社の中央にある部屋にその魔道具を置いたのである。

久しぶりに魔道具を作る話を書いた気が・・・・・・。


一応、前の話の回収はきちんとしておきました。(今回は)

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