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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(7)初めての事態?

「ブェェックション!!」

 始まりの家のリビングで、考助の盛大なくしゃみが鳴り響いた。

「あら。どうされたのですか?」

 初めて聞くようなくしゃみに、傍にいたシルヴィアが不思議そうな顔で聞いてくる。

 シルヴィアが周囲を見れば、非常に珍しいことに、コウヒとミツキも驚いたような顔になっていた。

 考助が咳をするなんてことはこれまでほとんどなかったので、この場にいた全員が戸惑っている。

「いや、ちょっと鼻がむずむずして・・・・・・おや?」

 ソファの上に寝転がっていた考助は、少しだけ照れたような顔になって起き上がろうとして、カクリと再びクッションの上に顔を埋めた。

 

 それを見たシルヴィアは、流石に冗談ではないとわかったのか、慌てた様子で考助の傍に寄って行く。

「コウスケ様? 本当に大丈夫ですか?」

 慌てた様子で考助の額に自分の右手をあてたシルヴィアは、そこから感じて来た熱に驚いた顔になる。

「熱があるじゃないですか! なんでこんなになるまで黙っているのです!?」

「熱? あ~、そうか。久しぶりすぎて、すっかりこの感覚を忘れていたね」

 シルヴィアの言葉にようやく熱が出ていることに気付いた考助は、そう言いながら仰向けに直った。

 

 考助に熱が出たということで、コウヒとミツキは慌てて魔法を使って氷を出した。

 怪我を魔法で治すことは出来ても、熱を下げるといった方法は、なるべく取らない方がいいと言われている。

 それは、体にある本来の免疫力を高めるためだと考えられている。

 勿論、命が奪われるような場合は別だが、初期段階では様子をみることが推奨されている。

 そのため、コウヒもミツキもそのことは知っているので、下手に魔法でどうこうしようとはしていないのである。

 

 熱が出ていることにようやく気が付いて、つらそうな顔になった考助に、シルヴィアが心配そうな顔になって聞いて来た。

「ここではなく、きちんとベッドに入ったほうが良いと思うのですが・・・・・・立ち上がれますか?」

「うーん。どうだろう? 大丈夫だと思うけれど・・・・・・あ、だめかもしれん」

 何とか自力で起き上がろうとした考助だったが、熱が出てくることを一度自覚をすると、体がそれを受け付けなかった。

 途中まで起こした上半身を、再びふらりとソファの上に横たえる羽目になった。

 

 それを見て駄目だと判断したシルヴィアは、コウヒとミツキを見て言った。

「すみませんが、魔法を使って運んでもらってもいいでしょうか?」

「わかりました」

 そう返事をしたのはコウヒで、すぐに考助の体の下に手を入れて運び始めた。

 当たり前のように魔法を使っているので、重さはまったく関係ないのだ。

 

 そして、それを見ていたミツキは、大事なことに気が付いていない様子のシルヴィアを見て言った。

「余計なお世話かもしれないけれど、一応女神に確認をした方がいいのではないかしら?」

 考助は元はヒューマンとはいえ、いまは現人神なのだ。

 いま考助に起こっていることが、ただの病気(?)なのかどうかもわからない。

「えっ? あっ・・・・・・言われてみればそうですね。すみません。ありがとうございます」

 考助の様子に動揺してしまって、すっかりそのことを忘れていたシルヴィアは、ミツキに頭を下げてからすぐにエリスへと連絡を取った。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

『風邪ですね』

 シルヴィアがエリサミール神に交神すると、帰って来た返答がこれだった。

「風邪、ですか」

 あまりによく知られた病名に、シルヴィアは思わず呆けた様子でエリスに答えを返した。

『現人神である考助様は、体の造りは基本的に人と変わりません。ほとんどないことではありますが、風邪を引くこともあります』

「そうなのですか」

 話をしている相手がエリサミール神なのに、素の調子で返したシルヴィアは、いまだ本調子とは言えない。

 あまりに普通すぎる病気に、一気に気が抜けたのだ。

 

 そのシルヴィアに、エリスが少し気遣った様子で話しかけて来た。

『シルヴィア、大丈夫ですか?』

「え、はい! 大丈夫です」

『それならいいのですが。とにかく、考助様は普通の対処をして安静にさせておけば治ると思います』

「わかりました」

 現人神だからといって、特別な対応が必要であるわけではない。

 むしろ、普通の人とは同じような免疫力を持っているので、対処方法も変わらないのだ。

 

『敢えて言うとすれば、子供がいるシュレインはあまり近付かないほうが良いかもしれませんね』

「それはそうですね」

 まだ免疫力が弱い子供がいる場合、あまり近づけさせないようにするのは当然のことだ。

 ごくごく当たり前の忠告にシルヴィアは頷き、ふと思いついた疑問に首を傾げた。

「それにしても、今までなかったことなのに、なぜ突然今になって風邪なんかを?」

 考助は、特に魔道具を作るときなどは、不摂生を繰り返したりしている。

 それにもかかわらず、シルヴィアの記憶にほどんとないほど、風邪などひいたことが無かった。

 だからこそシルヴィアは、今回はなにかあったのかと心配になったのだ。

 

 そんなシルヴィアに、エリスは何ということはないという調子で答えた。

『特に理由なんてありませんよ。どんなに気をつけていても引くときは引くというだけです』

「はあ。そうなのですか」

 そのごく当たり前の答えに、シルヴィアもまた普通の答えを言うことしかできないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助が風邪を引いたという話は、あっという間に伝わって行き、夜のうちにはシュレインを除いた全員が始まりの家に集まっていた。

 シュレインが来れなかったのは、エリスが言った通り子供がいるからで、来れないことを非常に残念がっていた。

 それはともかく、集まった三人は、考助が寝ている部屋に入って口々にお見舞いを言ってきた。

「びっくりしたわよ。コウスケでも風邪なんて引くのね」

「そうですね~。私も初めて見る気がします」

「今まであれだけ無茶をやってきたのにな」

「あのね・・・・・・」

 お見舞いなんだか、揶揄っているのかいまいちよくわからないそれぞれの言葉に、考助が突っ込むべきかを悩みつつ、弱っていることを思い出して止めた。

 その様子を見て、流石の三人もそれ以上追い打ちを掛けるようなことはしてこなかった。

 

 その考助の代わりに、というべきか、シルヴィアが三人を睨んだ。

「三人とも、コウスケさんが風邪だとわかっているからこそ、安心できるのだということを忘れないでくださいね」

 微妙に感情を抑えているような顔になっているシルヴィアに、三人は慌てた様子で揃って頷いた。

「勿論、わかっているさ」

 代表してフローリアがそう言うと、シルヴィアは納得した様子で頷いて、考助の額の上に乗っているタオルを交換した。

 

 シルヴィアがいつもの様子(?)に戻ったところで、三人は考助を囲んで座り、考助の休息の邪魔にならないように話をしはじめた。

 そもそも子供の看病で慣れている三人は、その気になれば大人しく見ていることもできるのだ。

 先ほどのはつい、いつもの調子で揶揄ってしまったというだけである。

 それが、シルヴィアの雷で納まったというわけだ。

 このあとは、シルヴィアを刺激しないように三人も考助の看病に徹することになる。

 そして、エリスの予想通り翌朝には、いつもの通りの考助の姿が見られるのであった。

作者には記憶がありません。

作中で、考助が風邪を引いたことってありましたっけ?w


というわけで、かぜっぴき考助でした。

現人神だから病気にならなくてもいいかなと思っていましたが、せっかくなので風邪くらいはひいてもいいかなとw


※明日の更新はお休みいたします。m(__)m

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