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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(2)スライム(全自動)

 始まりの家の周辺で作っている収穫物は、考助が新たに建てた建物に入れるようになっている。

 勿論、考助たちが個人的に消費する量などごく限られているので、そこには一時的にしか入らない。

 とはいえ、スライムたちの作業のお陰で収穫面積に対して収穫量が多いので、割とすぐに場所が埋まってしまう。

 ちなみに、建物の広さは、一般的な蔵程度だ。

 そのため、割と頻繁に管理をしないと、収穫時期には収穫物で埋まってしまうことになる。

 勿論、収穫をするのは考助たちになるので、その辺の調整は割と簡単に出来る。

 

 ――――と、考助は一月ほど前までそう考えていた。

「ええと。これは一体どういうことだろうね」

 目の前の光景に呆然と呟いた考助の肩を、ポンとフローリアが叩いた。

「コウスケ。目の前の現実は、逃げて無くなるような物ではないぞ?」

「わかっているよ。わかっているけれど、ちょっとこれは予想外すぎるよ」

 その慈悲のないフローリアの言葉に、考助は大きくため息をついてそう答えた。


 今、考助たちの目の前には、ちょうど収穫期を迎えた作物が、山となって積まれていた。

 それらは考助たちが収穫したものではない。

 となれば、犯人となりうる存在はひとつしかない。

「・・・・・・なんでスライムが収穫までこなせるようになっているのかな?」

「しかも、収穫のタイミングもばっちりではないか?」

 考助とフローリアは、そろって呆れたように収穫物を見ている。

 

 そのふたりよりも先に立ち直ったシルヴィアが、ついと歩を進めて、収穫物の元でウゴウゴとうごめいていたスライムをスッと抱き上げた。

 そのスライムは、いきなりシルヴィアが持ち上げたにも関わらず、逃げようともせずになすがままに抱かれている。

「この子がこの場所を管理しているのでしょうか?」

「管理って・・・・・・。スライムにそれを言う?」

 スライムは進化の度合いに合わせて、割とグループ的な行動を取ることがある。

 そのため、考助もスライムが群れてリーダー的な役割を果たすスライムがいることもきちんと知っている。

 スーラなどはその代表格だろう。

 

 その考助にとっても、農作物を管理するスライムなど想像がつかなかった。

「考助の気持ちもわからないではないが・・・・・・実際、スキル構成はどうなっているんだ?」

「ええと・・・・・・? ちょっと待ってね」

 フローリアの問いに首を傾げた考助は、シルヴィアに抱かれているスライムのステータスを確認した。

「うーん? 割と普通の構成のような・・・・・・? ――――――ああ、なんとなくわかった気がする」

 スキルを確認していた考助は、最初のうちこそ普通のスキルに拍子抜けしたような顔になっていたが、とあるふたつのスキルを見て頷いた。


 その考助を見て、フローリアがわくわくしたような顔になった。

 故国で偶然見つけたスライムの件があり、何か面白いスキルでもあるのかと期待しているのだ。

「何か特殊なものでもあったのか?」

「特殊といえば特殊だけれど、スキル自体はそんなに珍しいものではないよ?」

 フローリアの様子に苦笑しながらそう答えた考助だったが、相変わらずの様子にすぐに普通のスライムが持っていないはずのスキルのことを教えた。


 そのスライムは、収穫と統率のスキルを持っていたのだ。

 統率自体は、ある程度の進化をしたスライムで、複数のスライムを束ねているものが持っているのでおかしくはない。

 ただし、収穫スキルはスライムが持っているのを見るのは、考助でも初めてのことだった。

「収穫と統率か。それで何となく理解は出来るようだな」

「そうだね。さっきから収穫物を運んできているスライムは、きっと収穫を持っていたりするんだろうね」

 実は、考助たちが話をしている間にも、二、三体のスライムが、交代交代でえっちらおっちらと畑で取ったらしき収穫物を運んできていた。

 勿論、通常のスライムはさほど力があるわけではないので、大量に持ち運んでいるわけではない。

 それでも、ある程度の間隔を置いて運んできているので、考助たちが見ている間に、用意してあった箱は既に満杯になっていた。

 まさしく、塵も積もれば山となる、という状態だ。

 

 抱いていたスライムを下したシルヴィアは、考助と同じように外から収穫物を持って入って来たスライムを目で追った。

「もしかしなくても、このままでいけば、種まきから収穫までこなすようになるのでしょうか?」

「・・・・・・すでにそんな感じになっている気がするけれどね。今度は種から渡してみることにするよ」

「なるほど。それは面白いな」

 考助の提案に、フローリアはなぜか目を輝かせて頷いた。

 

 そのフローリアを見た考助は、苦笑しながら言った。

「言っておくけれど、ここと同じことが別の場所でスライムにできるとは考えない方がいいよ?」

「流石にそれはわかっているさ。まったくモンスターの脅威が無い場所など、この世界にはないからな」

 始まりの家周辺は、神が作った結界に守られているため、考助の眷属以外のモンスターは一切入ってこない。

 そのため、普通は食物連鎖の最下層にいるはずのスライムが、この場所ではのんびりと動くことが出来ているのだ。

「だが、もし種まきまで出来るようになれば、理屈上は結界を広げる限り作物を作ることが出来るようになるのだろう?」

「まあ、それはそうだけれどね」

 一応いまのところ、結界を広げることまでは考えていない考助は、そう相槌を打った。

 

 だが、何やら言いたげになっているフローリアの顔を見て、考助は首を傾げた。

「何か考えていることでもあるの? やけにこだわっているみたいだけれど」

「いや、何。大したことではないさ。ここでとれたものを使って屋台で出せば、面白いことになるのではないかと思っただけだ」

 現状、始まりの家周辺で収穫された物は、考助たちが自前で消費するか、狐のお宿とヴァンパイア、イグリッドの宿に卸されているだけだ。

 フローリアは、それを屋台の食材として使えばどうかと考えたのだ。

「それは確かに面白いことにはなるだろうけれど・・・・・・。下手をしたら面白いどころではなくなる気がすると思うよ?」

「それはそうだろうが、今と何か違うのか?」

 フローリアにそう突っ込まれた考助は、思わず考え込む表情になった。

 

 確かに今でも例の屋台は、新料理を出した元祖として根強い人気を誇っている。

 そこで良い食材を使った料理が出たとしても、フローリアの言う通り今更という感じがしなくもない。

 ただし、同業者からは、一体どこから仕入れている食材なのかと探られることにはなるだろう。

「うーん。この勢いだったら、別に畑を広げなくても、屋台に出す分くらいは卸せるだろうけれど・・・・・・いいの?」

「うむ。こうも無造作に積み上げられて行くのを見ていると、勿体ないという気になって来るからな」

「いや、そういうことを言いたかったんじゃないけれど・・・・・・まあ、いいか」

 現在、屋台の運営方針は、完全にフローリアに任せっきりになっている。

 そのフローリアがいいと言っているのだから、わざわざ止める必要はないだろうと考助は判断した。

 

 この後、スライムに種を渡せば、きちんと種まきまでやることが分かり、最終的には全部の行程をスライムがこなせるようになった。

 もっとも、それを考助たちが知ることになるのは、もうしばらくの時が必要になるのである。

スライム万能説。


始まりの家での話題を出すと、どうしてもスライムの話に偏ってワンパターンになってしまいますね。。・゜・(ノД`)・゜・。

でも、これで最初から最後までできるようになったので、あとは農作業系の話題は出てこないはずです。

変わりに、作者としてはなんの話を書くべきか、悩むことになるわけですがw

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