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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(5)不思議な現象

「国王がいるあの部屋だけれど、魔法的な何かが使われているみたいだね」

 考助がそう言った瞬間、フローリアとレオナルドが立ち上がらんばかりの勢いで聞いて来た。

「コウスケ、どういうことだっ!」

「魔法的とは、具体的にはどんなものでしょうか!?」

「あ~。だから少し落ち着いてって言ったのに・・・・・・」

 こうなることは予想できていたので、考助は苦笑しながら落ち着くように両方の手のひらを差し出して、二人を落ち着くように宥めた。


 それを見たレオナルドは少しだけ恥じるような表情をして、フローリアはハッとした表情になって椅子に座り直した。

「いや、すまんな。状況が状況だけにな」

「まあ、気持ちはわかるけれどね。それに、多分だけれど、二人が思っているのとは違うと思うよ?」

 考助がそう言うと、同じことに気付いていたシルヴィアも同意するように頷いた。

「うん? 違うとはどういうことだ?」

 考助が時折出す持って回った言い回しに慣れているフローリアが、首を傾げながら聞いて来た。

 

 それに頷いた考助はさらに続けて説明した。

「僕が感じたのは、どちらかといえば、気を落ち着かせるとか、体が楽になるようになるとか、そう言った方面が働いているように感じたけれど・・・・・・シルヴィアはどうだった?」

「はい。私も同じように感じました」

 国王との話し合いにはほとんど加わらなかったシルヴィアは、部屋にはいるときに感じていた魔法的なものが何かを気付かれないように探っていた。

 直接それがなにかはシルヴィアにも分からなかったが、少なくとも病を起こすといったような呪術的な何かとは思えなかった。

 

 シルヴィアと同じ考えだとわかった考助は、フローリアとレオナルドを見ながらさらに続ける。

「とにかく、少なくとも悪い感じは受けなかった・・・・・・から、あの場では何も言わなかったんだよね」

 まあ、悪いものがあったとしても言わなかっただろうが、敢えて考助はそう言った。

 あの場にあった魔法的な何かは、少なくともマクシム国王にとっては悪いものではない。

 そう考えたからこそ、あとでも構わないとこの場までは何も言わなかったのだ。

 

 考助とシルヴィアの様子を見て、落ち着きを取り戻したフローリアは、首を傾げながらレオナルドを見た。

「病人にいい方向に働く魔法? そのようなもの、あの部屋にあったのか?」

「いや、少なくとも私は聞いたことが無いな。それに、そんなものがあるとして、知っているのは父上か、母上くらいではないだろうか」

 王家に生まれた者たちは、いざという時のために王族としての教育を受けるが、実際に国王になってからでないと、知ることの出来ないことも多い。

 フローリアやレオナルドは、あの部屋の先に国王のみが入ることが出来る場所があり、そこに国王が知るべき知識が掛かれた書物があることも知っている。

 そのことを具体的に口にすることはしないが、そうしたことは各国でもやっていることなので、敢えて隠す必要はない。

 どのみち、王太子であるレオナルドでさえ、知らないことなのだからフローリアにも猶更分からないのだ。

 

 フローリアは、レオナルドの言葉に期待するような視線を向けた。

「ミリアム妃か。お元気なのだろう?」

「ああ、勿論だよ。ただ、最近の父上の様子を見て気落ちはしているようだが・・・・・・そうか。せっかくフローリアが来ているのだから、会っていくか?」

「それは、いいのか?」

「ああ。いまはあくまでも姪として来ているだけだからな。問題はないだろう」

 ここで敢えて表向きの建前を出してきたレオナルドに、フローリアもようやくらしい笑みを浮かべた。

 

 フローリアとレオナルドの顔を見て大丈夫だと判断した考助は、二人を見ながら言った。

「話をするのはいいけれど、慎重にね。まあ、わかっていると思うけれど」

「当然だな」

「そうですね。そのように取り計らいます」

 フローリアもレオナルドも、当たり前だが考助以上に周囲の目線には注意するように、常に考えている。

 そんなことは考助から言われなくてもわかっているだろうが、一応念のためだ。

 それだけ先ほどまでの二人が、かなり動揺していたということもある。

 

 二人の答えに納得した考助は、頷くだけでそれ以上はなにも言わなかった。

 あとは任せておけばいいだろうと考えたのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助が衝撃の(?)発言をしてからは、とんとん拍子に話が進んだ。

 まずは、レオナルドが直接手続きを行い、その日のうちにマクシム国王の正妃であるミリアムとの面会を取り付けた。

 かなり強引だが、レオナルドという立場があるからこそできたことだ。

 何しろレオナルドは、ミリアム妃の実子なのだから。

 ただし、強引であることは間違いないので、そこにフローリアと考助がいるとなれば、いろいろ憶測が出回ることは間違いない。

 一応、考助の立場はほとんど公になっていないとはいえ、国王との面会の後で、これほどレオナルドが慌てていることからいろいろな推測はされるだろう。

 それでもレオナルドは、早くした方がいいと判断したのだ。

 

 そして今、考助たちはレオナルドが手配したミリアム妃との会話を行っていた。

 当然考助とシルヴィアは初対面となるが、フローリアは何度かあったことがあるようで、お互いに懐かしそうな顔になって挨拶をしていた。

 そして、考助を前にした時には、ミリアム妃はわずかに緊張した面持ちになって頭を下げていた。

「お初にお目にかかります。フロレス王国国王妃、ミリアムです。このような機会ですが、お会いできてうれしゅうございます。一度は会ってお礼を言いたかったのです」

 ミリアムの言葉を訂正しようとしていた考助だったが、最後の言葉に思わず目をパチクリとさせてしまった。

「お礼?」

 考助は、これまで一度もミリアム妃とは会ったことが無いので、お礼を言われるようなことをした覚えはない。

 そう考えたのは考助だけではなかったようで、他の者たちも不思議そうな顔をしていた。

 

 それを見たミリアムは、笑顔を浮かべてから言った。

「まあ。そちらのお嬢様はともかく、レオナルドやフローリアまでなぜ不思議そうな顔をするのですか」

 ミリアムが言ったお嬢様というのは、シルヴィアのことだ。

 少なくともシルヴィアの見た目は、考助が出会ったときとほとんど変わっていないので、そう呼ばれても違和感はない。

 現に、フローリアもそちらは無視して、ミリアムを見て言った。

「いや、彼がミリアム伯母様に礼を言われることなど思いつかないのだが・・・・・・」


 首をかしげるようにしているフローリアを見て、ミリアムは少しだけ呆れたような顔になった。

「何を仰っているのですか。立場上、困っているあなたを拾ってくれたのは、誰だと思っているのですか?」

 フローリアにとっては今更の古い話を持ち出されて、アッという顔になった。

 確かにそのことであれば、ミリアムが考助に礼を言う立場にはある。

 そのフローリアの顔を見て、ミリアムはさらに呆れの度合いを深くした。

「まったく・・・・・・。その様子を見る限りでは、すっかり忘れていたようね。まあ、それだけ幸せな時を過ごせているということでしょうか」

 ため息をつきながらそういったミリアムは、口元に手を当てながらフローリアを見た。

 

 そのミリアムの視線を受けて、考助にとっても珍しいことに、フローリアが恥ずかし気な表情になった。

 ミリアムにからかわれていることが分かっているのに、フローリアがこういった表情をするところを見るのは、考助にとっても貴重な場面なのであった。

マクシム国王の周囲にある不思議な魔法現象。

果たしてそれは何なのか!?(煽り風で)

次話は続けてミリアムとの会話です。


今回は珍しく可愛い風のフローリアが出せたので満足な作者でしたw

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