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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(13)おねだり

 考助が呪文を唱え終えて、更に魔法陣が消えたあとには、ナナを先頭にして十数頭の狼が現れていた。

 それを確認したレンカたちは、驚きに目を丸くする。

 それだけではなく、レンカは、自分を守るためにそばにいた騎士の服を引っ張り、その騎士に問いかけていた。

「私が知る限り、一度にあれだけの数の召喚を行うなんて話は聞いたことが無いのじゃが、一般的にあり得るのか?」

「ま、まさか! そんなはずはありません! 自分の目で直接見たのに、信じられませんよ!」

 レンカの問いに、その騎士は慌てて首を左右に振りながら答えた。

 このときの考助は知る由もなかったが、レンカが問いかけた騎士は、召喚魔法に詳しい魔法の使い手でもあったのだ。

 その騎士が、きっぱりとあり得ないと断言したことで、レンカはますます目を丸くしていた。

 

 そんなレンカに、考助がなんと声を掛けたものかと悩んだが、それよりも早く動いたものがいた。

「きゃっ!? うわっ! ちょっ、まっ!!!!」

 一同が驚いている隙に、あっという間にレンカに近付いたその存在は、一心不乱にレンカの頬をなめていた。

 その存在というのは、考助がナナに頼んで用意してもらっていた、ほかの狼である。

 ちなみに、十数頭いる狼の種族は、いい感じにばらばらに別れている。

 さらにいえば、レンカに飛びついた個体は、誰がどう見てもまだ子供の狼だった。

 

 本来であれば子供とはいえモンスターである狼に飛びつかれたことは護衛として失格なのだが、両者の様子を見てそんな気分も吹き飛んでいるのか、和やかな雰囲気でレンカと狼の様子を見ている。

 レンカ本人は、護衛にそのことを注意するどころではなく、子狼との戯れに夢中になっていた。

 それをいいことに、考助は一行の中で一番権限の有りそうな騎士と世話役に話しかけた。

「もしよろしければ、連れて来た中から相性のよさそうなものをお譲りいたしますが、許可はでそうですか?」

 考助がこう聞いたのは、レンカが身分のある者だとわかっているためだ。

 いくらレンカに懐いているからと言って、簡単にモンスターを傍に置いておくのを許可しないことの方が普通なのだ。

 

 現に、考助に問いかけられたふたりは、難しそうな表情で互いに顔を見合わせている。

「・・・・・・この様子を見る限りでは、確かに大丈夫そうですが・・・・・・」

「・・・・・・難しいでしょうね」

 ふたりのその顔は、出来ることならレンカの希望を叶えて上げたいという気持ちはあるが、家のことを考えると難しそうだというものになっている。

 ちなみに、レンカの希望は直接聞いたわけではないが、誰が見てもまるわかりなので、この場合は敢えて当人に聞くようなことはしない。

 

 考助もこの答えは予想していたので、すぐに頷いて次の提案を行った。

「では、旅の間だけでも一緒にいるというのはどうですか? もし、上手くすれば、その頃には従魔契約を結べるかもしれません」

 後半は、レンカに聞こえないようにわざと声を落として言った考助に、騎士のひとりが目を丸くした。

「・・・・・・そんなことが?」

 一般的に、従魔契約が出来るのは、テイマーだったり魔物使いだったり、ごく限られたスキルを持っているものだとされている。

 少なくともレンカにはそんなスキルは見えていないが、それでも考助にはレンカにはその才能があるのではないかと疑っていた。

 そうでなければ、ナナやワンリが最初から打ち解けるような態度を見せるはずがない。

 

 驚く騎士に、考助は頷いてから続けた。

「ええ。ですが、それはあくまでも可能性のひとつでしかありません。それに・・・・・・別にスキルが無くても従魔契約は結べるはずなんですけれどね」

 この世界に来て初めてコーと契約を結んだときは、考助は特殊なスキルを覚えていたというわけではない。

 それを考えれば、考助が今言ったことは間違いではないのだが、それでもスキルがひとつの指標になっていることは紛れもない事実だ。

 まあ、クラウンはまだまだ世界中に広まっているわけではないので、実際に自分のスキルに何があるのかわかっている人数のほうがまだまだ少ないのだが。

「まあ、それはともかくとして、貴方たちが許可をする場合は、一応お目付け役を付けておきます。彼らがいれば、不慮の事故は防げると思いますよ?」

 考助はそう言いながら、現れた狼に向かって手招きした。

 それに合わせるように、二体の成体の狼が考助に近寄って来た。

 

 その二体の狼は、考助以外の傍には近寄らず、それでも考助に撫でられて大きく尻尾を振っている。

「彼らであれば、決してレンカ様に慣れたりはせずに、さらにはほかの狼がむやみにレンカ様や他の者たちを襲ったりすることを防いだりしてくれるはずです。――いかがいたしますか?」

 普通ではありえない環境で、狼を従魔として使うことが出来るという考助に、話を聞いていた者たちは戸惑うように顔を見合わせた。

 いくらなんでも、会ったばかりの考助にそんなことを言われても、半信半疑といった気持ちのほうが大きいのだろう。

 そのことを見抜いた考助は、それ以上はなにも言わなかった。

 

 

 迷いを見せる騎士や世話役だったが、いつの間にかレンカに近寄られていた。

「駄目か・・・・・・?」

 子狼を抱き上げながら、うるませた目で見上げてくるレンカに、騎士は苦悩の声を上げた。

「くっ・・・・・・。お、お前に任せる」

「あっ!? そ、それはずるくないですか?」

 レンカの態度にへたれた騎士に、世話役の女性がずるいという顔になる。

 

 その世話役(女性)は、レンカの顔と狼を見比べながらため息をついて言った。

「・・・・・・さすがに全部は連れていけませんからね。それから、世話をするのはあくまでもレンカ様です。私たちに押し付けたりしないようにお願いします」

「ありがとうなのじゃ!」

 実質的な許可を出した世話役に、レンカはそう言いながら抱き着いた。

 そんなレンカに苦笑を返しながら、その女性はさらに続けた。

「それから、何かあったときに相談するために、貴方と連絡が取れる手段を持ちたいです」

 自分を見ながらそう言った女性に、考助はなるほどと頷いた。

 

 女性の顔を見る限りでは、貴方も少しは責任を負ってくださいと書いてある。

 考助自身は大きな問題など起きないと考えているが、確かにレンカに狼を与えるだけ与えておいて、あとは何のフォローせずにさようならとはいかないなと納得した。

「そうですねえ。それでしたら、クラウンを通して私宛に伝えてもらえるようにしておきます」

 考助はそう言いながら、コウとしてのクラウンカードを差し出した。


 そのカードを見た騎士は、驚いた表情になって考助を見る。

「クラウンのAランク冒険者だったのですか・・・・・・」

「えっ・・・・・・!?」

 その騎士の呟きに、レンカを含めて他の面々も驚いた顔になる。

 それほどまでに、Aランクの冒険者は一握りの者しかなれないのである。

 

 考助は、一同の驚きの視線を受けながら頷いた。

 続いてレンカに、召喚した狼の中から好きな者を選ぶように促した。

 お目付け役の二体は必須だとして、他の狼はレンカが世話出来るだけの数にしておくように忠告した。

 そしてレンカが選んだ狼は、最初に自分に向かってきた子狼を含む三体の狼だった。

 その数は、考助としても妥当なところだと考える数だった。

 あとは細々とした注意点を与えて、その場は別れることになるのであった。

これで終わり・・・・・・なのですが、中途半端なような気がしています。(´・ω・`)


後で後日談的な話でも書いた方がいいでしょうか?


♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


昨日今日とPVが激増しているのですが、なにかあったのでしょうか?

まったく理由が分からなくて、不思議ですw

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