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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(11)予想外の光景

 レンカが生まれた国では、王族を含めた貴族が、成人前に伴を引き連れて旅をするという風習がある。

 それは、成人してから忙しくなる前に、旅を通して見聞を広めるという意味合いなどがある。

 ただ、それ以外にも爵位の高い者ほど多くの国や地域を回ることから、高貴なものが金を落として経済を回しているということもある。

 そのため、特に国内を重点的に回るようにするのが、慣例となっていた。

 レンカは、その風習を実行している真っ最中なのである。

 建前上旅の間は、身分を隠すことになっているために、自身の親の身分を語ることはほとんどない。

 勿論、身の安全を保障する場合や、目に余る行いを止めるときなどは話が別だが。

 それはともかく、国外はともかく、国内の人間は、貴族たちにそうした風習があることはよくわかっているので、出会った場合は基本的には気付いていない体を装うのが通例となっている。

 

 考助は、レンカからそれらの話を興味深そうに聞いていた。

 それは、話の内容が面白かったのもあるが、話をしている当人レンカが、旅の目的や意味をしっかり分かったうえで話をしていることに感心していたのだ。

 少なくとも考助が知る小学生か中学生くらいの女の子が、普通に語れるような内容ではないのに、レンカはそうしたことを感じさせない話し方をしている。

 それを見た考助は、レンカの親が彼女を年齢だけで判断せずに、本来の目的を果たすために旅に出したのだということがわかった。

 この時点で、見た目で判断してはいけないと、頭の中にインプットされたのだ。

 

 一気に話をしたので喉を潤すために飲み物を口にしているレンカを見ながら、考助は頷いた。

「なるほど。貴方がこの場にいる理由は、よくわかりました。初めて聞くお話で、中々興味深かったです」

 本心からの考助の言葉に、レンカは嬉しそうな表情を浮かべた。

「そうか! ・・・・・・中々国外の人間には理解され難いところもあるようじゃからの」

 実際にそういう場面にも出会ったのだろう。

 後の方のレンカの表情は、どことなく寂しそうなものだった。

 

 確かに、要人を簡単に旅に出すことが、いろいろと問題が起こるということはよくわかる。

 別にわざわざ外に出して体験させる必要はなく、知識として知っておけばよいという意見も出るだろう。

 特に、貴族などの身分の高い者は、そうした考え方を持つ傾向がある。

 考助もその考え方はわかるので、否定するつもりはない。

 ただし、レンカの国での風習も受け止め方によっては良い考え方なのだ。

 少なくとも、考助にとっては好ましい考え方といえる。

 現に、いまの考助は、まさしく同じようなことをしているのだから。

 

 寂しそうな表情をしたままのレンカに、考助はフッと笑みを浮かべた。

「それは仕方ないでしょう。人には様々な考え方があります。レンカ様もこの旅でそのことがよくわかったのではありませんか?」

 考助がそういうと、レンカはパッと先ほどと同じ笑みを浮かべてから頷いた。

「うむ! 確かにそうじゃの!」

 レンカがそう言うと、後ろに控えていた騎士たちが笑顔になって頷くのが、考助にも確認できた。

 それを見るだけで、レンカが護衛役の騎士たちから慕われていることがよくわかる。

 

 

 子供らしいレンカの笑みに癒された考助は、話題を変えることにした。

「それで、本題ですが、私たちをお呼びになった理由はなんでしょうか?」

「おお! そうじゃった! すっかり話に夢中になって、忘れておった!」

 すまんすまんと続けたレンカは、本当にすまなそうな顔で両手を合わせた。

 その仕草と口調は、完全に自然なもので、立場に合わせて作ってあるようには見えない。

 周囲の様子を見る限りでも、これがレンカの素の姿だということがよくわかる。

 

 そんなレンカに、考助は「気にしないでください」と首を左右に振った。

 考助の言葉に頷いたレンカは、なぜかすこし頬に赤みを帯びさせながら、恥ずかしそうな顔になった。

「その・・・・・・、もしよければで、いいのだが・・・・・・」

「はい。まずは言ってみてください」

 これまでの態度と違って、途端にもじもじ仕出したレンカを可愛いと感じた考助は、完全に子供を相手をするように先を促した。

「あ、あの・・・・・・其方の連れているものの頭を撫でさせてもらえないかの?」

「・・・・・・・・・・・・はい?」

 レンカのその要求に、考助は目を丸くして驚くこととなった。

 

 そして、コウヒとミツキを交互に見ながら、

「いえ、それは当人の許可がもらえれば構いませんが・・・・・・」

 考助のその言葉で勘違いをさせたとわかったレンカが、慌てて首を左右に振った。

「い、いや! そうではない! そちらの二人ではなく、其方が連れていた二体の従魔のことじゃ!」

 そのレンカの釈明(?)に、考助はようやく嗚呼という表情になった。

 そして、その子供らしい要求に、考助は思わず内心で可愛いなあと思ってしまうのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 レンカたちが泊まっている高級宿は、さすがに一流の宿だけあって、特に魔物使いが泊まることもあるらしく、一緒に部屋に入ることも大丈夫だった。

 ただ、さすがにレンカの部下たちが、同じ部屋に従魔を入れておくのはと難色を示したので、ナナとワンリは宿の外で待ってもらっていた。

 考助は、レンカに自分は構わないが二体が嫌がったらやめたほうが良いと言った。

 レンカはそれでも構わないと答えながらまた笑顔になったので、一同はナナとワンリが待つ宿の庭へと繰り出した。

 その庭には宿の馬房もあって、ナナとワンリを置いておくには最適だったのだ。

 

 考助がナナとワンリにレンカの要求を言うと、両方ともに許可を出したので、いまのレンカは恍惚の表情を浮かべながら二体の頭を撫でていた。

 それを見て、考助はレンカが遠慮をしていると感じたので、さらに助言をした。

「レンカ様。頭だけではなく、他のところも撫でて上げてください。彼女たちもそれを望んでいます」

 これは考助がレンカを甘やかした(?)わけではなく、ナナとワンリがそれを望んでいるとわかったからこそ、言ったのだ。

 現に、考助がそう言った瞬間、ナナとワンリの尻尾が大きく揺れ出していた。

「そ、そうか? それに、彼女たち、ということは、この二体はメスなのか」

「はい。そうですよ」

 レンカの呟きに、考助は頷きながら答えた。


 もっともレンカには、考助の頷く姿は見えていなかった。

 その証拠に、レンカの目はまっすぐに撫でている自分の手とナナの反応を見ており、それどころではないという雰囲気が見て取れた。

 更に、考助にとっては意外だったのが、レンカに撫でられているときのナナとワンリの反応だ。

 いくら考助の言葉があるとはいえ、ナナもワンリも嫌なときは嫌という態度を示す。

 ただし、レンカの場合は、それどころかむしろもっと撫でてほしいと要求していた。

 初対面の相手に、ナナとワンリがここまでの態度を見せたのは、考助の記憶でも限られた数しか知らない。

 というか、もっとはっきり言えばリクくらいしか知らなかった。

 

 考助は、いま目の前で見せられている光景が、レンカの天性のものなのか、それとも単にたまたま相性があっただけなのか、深く考え込むこととなった。

 そして考助は、ナナとワンリに夢中になっているレンカに、傍で見ていたコウヒとミツキでさえも驚く提案をすることにした。

お巡りさん、こっちです!


ここまでテンプレ

♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


まあ、冗談はともかくとして、やばいです。

レンカ、思った以上に活躍してくれそうです。

・・・・・・どうしてこうなった?w

(書いている分には、非常に楽しいのですので、止めません)

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