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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(6)コウヒのランク

 新拠点での農作業を終えた考助は、屋敷のリビングで同じように寛いでいたフローリアからとある質問をされた。

「そういえば、昨日からコウヒを見ていないがどうしたんだ?」

 コウヒが考助の傍を長い間離れることは滅多にない。

 あるとすれば、子供たちの世話をしている時くらいだったので、今回もそうなんだろうとフローリアは問いかけたのだ。

 ところが、考助の答えはその予想と違っていた。

「ああ。コウヒならセイチュンの町に行っているよ」

「セイチュン? ・・・・・・ああ、いつものか」

 一瞬セイチュンが何の町か思い出せなかったフローリアだったが、すぐに思い出して頷いた。

 セイチュンの街にある闘技場でランク一位を誇っているコウヒは、殿堂入りしたあとも時折闘技場ギルドから請われて、その戦闘力を見せに行っているのだ。

 折角取ったランクなので、何かあったときのためにと考助が行かせているのだが、今のところそれが役にたったことはまったくない。

 

 フローリアの顔を見て、考助が頷いた。

「まあ、そうだね。ただ、いつまでも必要かどうか、微妙なところなんだよね」

「なんだ。考助も必要ないと思っていたのか」

 折角出た話のついでに聞こうと思っていたことを、先に考助に言われてしまったフローリアは、少しだけ呆れたような視線を向けた。

「いや、まあ、そうなんだけれどね。何となくコウヒの様子が楽しそうだから、止めるに止められなくて」

「・・・・・・そうなのか?」

 考助の言葉に、フローリアは疑わしそうな視線を考助に向けた。

 

 フローリアがそんな顔をするのは、当然だろう。

 少なくとも彼女自身は、コウヒがそんな様子になっているとは欠片も気付いていなかった。

 どちらかといえば、考助に言われているから行っていると考えていたのだ。

 ここで仕方なしにとか、嫌々とかいった感情が出てこないのは、相手がコウヒだからだ。

 コウヒは、考助に言われたことに関しては、負の感情を抱くことはない。

 ただ、だからといって、考助が言ったような良い感情を持っているとは思っていなかったのである。

 

 ここでフローリアの疑問に答えたのは、考助ではなくミツキだった。

「あれは、完全に楽しみにしている顔よね」

「やっぱり、ミツキもそう思う?」

 考助とミツキが頷き合っているのを見て、フローリアは首を傾げた。

「・・・・・・私にはさっぱりわからないのだが?」

「そう? あれほど分かり易いこともないと思うけれどね。まあ、それはともかく、全力は出せないとはいえ、本格的な対人の戦闘ができるのが楽しいのだと思うわよ」

「ああ、なるほど。そういうことか」

 ミツキの言葉に、フローリアは納得顔で頷いた。

 

 同じ戦闘といえど、対人戦とモンスター戦ではだいぶ様子が違っている。

 普段コウヒは、考助からの頼みでモンスターとの戦いに赴くことはあるが、対人戦をすることはほとんどない。

 セイチュンの闘技場での戦闘は、コウヒにとっては良い気分転換になっているのだ。

 

 コウヒのことをしっかりと見抜いているミツキに、フローリアが首を傾げながら聞いた。

「それはわかったのだが、ミツキは良いのか?」

「私? 私はその分、考助様と一緒にいられるから、別にいいわ」

 そのちゃっかりしているミツキの返事に、フローリアは「そうか」と答えて笑った。

 あるいは、たとえ二人の立場が逆だったとしても、まったく同じ返事が来そうだという考えが浮かんできて、面白く思えたのだ。

 

 フローリアの様子に少しだけ首を傾げた考助は、特に突っ込んで聞くことはせずに、以前から考えていたことを続けて話した。

「セイチュンとかガゼンランの塔とかに用事があるにしても、また別の方法で近付けばいいだけだから、別に今のコウヒの立場が必要になるとは限らないんだよね」

「まあ、そうだな。必要になったとしても、今度はミツキ辺りが取りに行けばいいだけだろうしな」

「いや、それもそうだけれど、今だったらフローリアだって行けるんじゃない?」

 フローリアの戦闘能力は、Sランク認定されているリクをはっきり超えている。

 それを考えれば、フローリアだって十分に一位を取ることができるだろう。

 別に、コウヒだけに任せておく必要はないのだ。

 

 考助の言葉に、フローリアが面映ゆそうに頬を掻く仕草をした。

「まあ、そうなんだろうが・・・・・・少なくともコウヒがいる時点では、出る気にはならんぞ?」

「いや、さすがにそれは僕も言わないよ。本人が望むならともかく」

 そもそもフローリアたちは、コウヒに頼めばいつでも模擬戦をすることが出来る。

 フローリアは、わざわざ人前に出て、見世物になるつもりなどないのだ。

 

「セイチュンの闘技場ギルドのランクは、あくまでも町の中だけで通用するものだしな」

 フローリアが言った通り、セイチュンという限定された場所でのランクは、ほとんど意味がない。

 それに、今はセイチュンにもクラウンができていて、そちらのランクも同じように重きが置かれるようになっていた。

 それを考えれば、わざわざ手間暇をかけて新しくランクを取りに行く意味がないのである。

「そういうこと。・・・・・・まあ、コウヒについては、戻ってきたら話し合ってみるよ。せっかくの機会だし」

 考助は、折角こうしてフローリアが気にしてくれたので、ちょうどいい機会としてコウヒと話をすることにした。

 といっても、コウヒが続けたいといえば、無理に止めさせるつもりはまったくない。

 あくまでもコウヒ次第ということで、このときの話は終わりになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 翌日。

 コウヒがセイチュンから戻ってきたタイミングで、早速考助が話を切り出した。

「――というわけで、コウヒ次第で止めてもいいんだけれど、どうする?」

「それなのですが、主様。実は、これから話そうと思っていたのですが、今回の訪問でこんなものをもらってきました」

 コウヒはそう言いながら、アイテムボックスから一枚の紙を出して、考助に渡した。

「ええと・・・・・・? このたび、闘技者コリーを永久ランク一位とする――って、なにこれ?」

「どうやら向こうも、ずっと私が一位でいると運営に影響が出ると考えたようで、いろいろと考えたそうです」

 コウヒはそう言うと、闘技場ギルドの役員から提案された話を考助へと話し始めた。

 

 それによると、どうやら役員たちは、コウヒ(コリー)の正体を既に何となく察しているようだった。

 勿論、コリーが代弁者であると特定したわけではない。

 ただ、普通のヒューマンではなく、それに代わるような上位種に近い存在だと考えているようだった。

 コウヒが正体を隠し続けているのもそうした事情があるためだということまできちんと考えており、いつか闘技場ギルドから離れてしまうことを懸念していた。

 というわけで、闘技場ギルドが提案した内容というのは、コウヒを永久に一位にすることにより、いつでも最高ランク保持者として闘技場で戦えるようにするというものだった。

 コウヒの(向こうが推測している)寿命のことを考えて、そのことは、代々の闘技場ギルドマスターに伝えていくということも合わせて伝えられていた。

 

 一通り話を終えたコウヒは、最後に付け加えた。

「主様に確認してからとも考えたのですが、私の判断でその場で了承してきました。問題があれば返上することも可能ですが、いかがいたしますか?」

「あ~、なるほどね。向こうのほうが一歩先んじていたか。まあ、別にコウヒが良いと思ったんだったらそれでいいと思うよ?」

「そうですか。ありがとうございます」

 考助の答えに、コウヒは安堵したような表情を浮かべて、その場で礼をするのであった。

というわけで、作者もすっかり忘れていた(コラ)コウヒの闘技場ギルドのランクについてでした。

いつでも出していい話題だったのですが、ここまで延び延びに。(-_-;)

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