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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(5)神能刻印機の増産

 新拠点での農作業を終えてくつろぎスペースでまったりしていた考助は、ちょうど部屋に入ってきたワーヒドに、ふと思い出したように質問をした。

「そういえば、クラウンの支部がだいぶ増えているみたいだけれど、神能刻印機は足りているのかな?」

 考助の問いが唐突なのはいつものことなので、ワーヒドは特に戸惑うことなく素直に答えた。

「正直に言えば、まったく足りていませんね。簡易型もそうですが、正式登録の希望人数に対して、本部での本登録処理が間に合わなくなるのも時間の問題かと」

 南大陸での大氾濫のあとは、各大陸で支部が増えたこともあって、特に本登録を希望する冒険者が増えていた。

 ぎりぎり何とか処理は間に合っていたが、それでもいずれは間に合わなくなるだろう。

 

 ワーヒドからその答えを聞いた考助は、しまったという顔になった。

「やっぱりそうか。というか、そもそも全部の大陸の分を、本部だけで済まそうというのが無理だったよね」

「それはそうなんですが、本登録作業を各支部に任せると、いろいろと問題が起きると思いますが?」

 今のところクラウンカードの本登録ができる場所は、アマミヤの塔にある本部でしかできない。

 それは要するに、他の大陸で冒険者をしている者にとっては、転移門を使ってこなければならないということに他ならない。

 勿論、海路を使って本部まで来るという手もあるが、本登録をするためだけに、そこまでの時間を使う者は限られた者しかいないだろう。

 それよりはやはり本登録が出来る場所を増やした方がいいのだ。

 

 ただ、簡単に場所を増やすといっても困ることが出てくる。

 それは、各大陸にひとつずつ本登録ができる大支部のようなものを作ったとして、そこまでどうやって移動するのかという問題だ。

 今は、セントラル大陸以外の大陸にある各支部は、アマミヤの塔と転移門で繋がっているために、大した問題は出ていない。

 だが、今後を考えると、すべての支部と転移門で繋がるようにするわけにはいかないのだ。

 転移門自体には特に費用は掛かっていないが、それを運用するためには莫大な人員が必要になって来る。

 それに、そもそもいつでも軍事転用できる転移門の設置を、各国が簡単に認めるとは思えなかった。

 転移門はいらないが、支部は作ってほしいという要望もかなりあるのだ。

 

 ワーヒドの返事に、考助も難しそうな顔になった。

「そうなんだよねえ。いっそのこと全部の支部に作ってあげたいけれど、数が多くなるだろうしなあ」

「そうですね。それはやめた方がいいかと思います」

 本部に行けば本登録ができる。

 そういうことがあるからこそ、アマミヤの塔にある本部は、冒険者たちの間で特別視されている。

 勿論それだけではないのだが、それが大きなウェイトを占めていることも間違いではない。

 

 しばらく腕を組んで考えていた考助だったが、やがて首を左右に振った。

「・・・・・・止めた。折角リクに権限を移譲したのに、こっちで考えたらなんの意味もないからね」

 何とも薄情な考助の言葉に、ワーヒドは苦笑を返した。

「それはそうですが・・・・・・。頼られた場合も無視なさるのですか?」

「それとこれとは話が別。ただ、前もって気付くことができるのか、それとも困ってから頼って来るのか、当人の能力が大事になって来るからね」

 考助は、せっかくの機会なので、リクを始めとした統括たちの予見能力(?)を見ようとしているのだ。

 その上で自分を頼ってくれば出来る限り力は貸すし、なにも言ってこないのであれば、それはそれで構わない。

 

 ある意味で考助の突き放した意見に、それまで黙って聞いていたフローリアが笑いながら言った。

「随分と厳しいお父さんだな」

「そう? それじゃあ、フローリアはいまのうちから手を貸した方がいいと思う?」

「いいや。頼られたら手を貸すだけで十分だろうな」

 あっさりとそう言ったフローリアに、考助も「そうだろうね」と続けた。

 親バカな面がある考助とフローリアだが、こういうときは容赦がないのはふたりに共通していることなのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助とワーヒドが神能刻印機の話をしてから何日か経ったある日のこと。

 リクが各統括を連れて、管理層へとやってきた。

 最近の考助は新拠点にいることが多いので、前もって連絡を取ったうえでの訪問である。

 

 考助は、クラウンの役職が変わったうえで、全ての統括たちと会うのは初めてのことである。

 もっとも、全員が顔見知りなので、特に違和感を覚えたりはしていない。

「それで? 今日は何かあったのかな?」

 何気なくそう言った考助に、リクが頷きながら応じた。

「お願いがあるんだ。父上」

「お願い、ねえ。とりあえず中身を聞いてみないと何とも返事のしようがないけれど?」

 当たり前すぎることを言われたリクは、もう一度頷いてさらに続ける。

「神能刻印機をもっと作ってくれないか?」

 リクがそう言ったのを聞いて、考助は内心でニマリと笑っていた。

 

 これほど早くリクたちが話を持ってくるとは考えていなかったのだ。

 それは、実際に問題になったとしても、統括のところに話が上がって来るのが遅くなるだろうと考えてのことだ。

 これだけ早く話を持ってきたとなると、実際の現場ですでに問題になっているのもあるだろうが、それ以上に、クラウン内での危機意識の情報伝達能力が高いことを示している。

 あるいは、統括たちが最初から問題になることをわかっていて、現場で問題になる前に、情報の共有が行われたか、である。

 それはそれで統括たちの能力の高さを示しているので、頼もしい限りだ。

 もっとも、考助とワーヒドが数日前には気づいていた問題なので、統括たちが気付いても当たり前だという話もあるのだが。

 

 内心では喜んでいても、考助は難しい顔をしてリクを見た。

「作るのは構わないけれど、それをどうやって運用していくの? 単に本部に数を増やすのかな?」

「いや。増やしてもらうのは、セントラル大陸以外に置く分だけだ。本部は今のままで十分だと考えている」

 思ってもみなかったその答えに、考助は目を瞬いた。

「へー。本部の優位性をわざわざ手放すんだ」

「確かに、本部でしか本登録できないというのは、一種のステータスになっていたと俺も思う。だが、それは何とかやりくり出来ていたからこそだ。世界中の冒険者が本部で登録することなど不可能だとわかり切っている以上、いつまでもそれにしがみついて行くわけにはいかない・・・・・・と思う」


 途中まで感心して聞いていた考助だったが、最後の付け加えられた言葉を聞いて、その場でずっこけた。

「あのねえ。最後までしっかり言い切ったら、ちゃんと感心したのに」

 そう言った考助に、リクが肩をすくめた。

「仕方ないじゃないか。俺たちにだって、それでうまくいくかどうかは分からないんだから」

「それでも自信を持って言うのが必要だと思うんだけれどねえ。・・・・・・まあ、いいか。とりあえず十数台作ればいいのかな?」

 半分呆れつつそう言った考助に、リクが驚いたような顔になった。

「えっ? いいのか!?」

「良いも何も、そのつもりでここに来たんだよね?」

「それはそうなんだが・・・・・・こんなにあっさりと認めてもらえるとは思わなかった」

 

 リクに合わせて他の統括たちが頷くのを見た考助は、苦笑しながら答えた。

「あのねえ。僕ら――というかワーヒドたちだって、いろいろと試行錯誤したうえで、今のクラウンの形ができてるんだよ? それを否定するわけがないじゃない」

 最後に、シュミットたちだってそれはよくわかっているじゃないか、と付け加えると、各部門統括たちは、考助と同じように苦笑してきた。

 どうやら彼らは、そのことをわかったうえで、リクにそう言わせてきたようだった。

 彼らも統括という立場に立って、いろいろと試行錯誤しているようだった。

 

 結局考助は、リクたちの要請に従って神能刻印機を大幅に増やすことにした。

 それをどう使っていくかは、今のクラウン運営に任せることになっている。

 そこにはいろいろと政治が働きそうだが、それはもはや考助やワーヒドたちがタッチするべきことではないのである。

今さらですが、神能刻印機を増やしました。

逆に増やしていなかったんかい! と突っ込まれそうですが、ここまで大量に増やしてはいなかったのです。

相変わらず本部登録しかしていませんでしたしね。

このあと増やした神能刻印機をどう使っていくのかは、リクたちが探って行きます。

・・・・・・いっそのこと全支部に置いてしまいましょうか。

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