(2)ミアの癒し
新拠点へと居を移した考助だが、全ての時間をそこで過ごしているわけではない。
相変わらず塔の管理も続けているし、何よりも考助には管理層に行かなければならない理由がある。
「おー。また大きくなったんじゃないか?」
「そうかの? そこまではっきりとは変わっていないと思うが?」
「いや、絶対大きくなっているって!」
傍から見ればラブラブな言い合いをしているのは、シュウを抱っこしている考助とシュレインだ。
その様子をフローリアとシルヴィアが、少しだけ呆れた様子で見ている。
「なんというか、やはり当人でない場合は、呆れるしかないな」
「そうですね。・・・・・・ですが、フローリアもこんな感じでしたよ?」
「そ、そんなことはないだろう? い、いや。これ以上はドツボにはまるだろうからやめておこう。それに、其方も同じようなものであったぞ?」
「そ、そんなことは、ない・・・・・・いえ。やめておきましょうね」
お互いに不毛な争いになりそうだと判断したシルヴィアとフローリアは、これ以上は自分たちの傷になると判断した。
結局のところ、自分たちが同じような経験を経て子育てをしてきたということは、自他ともに認めているのだ。
相変わらず続いている考助とシュレインのやり取りに、シルヴィアとフローリアはそれだけで収まったが、そうはいかなかったのがミアである。
「あ~。あのふたり、止めなくてもいいのでしょうか?」
「ミアが止めるのだったら構わないと思うぞ?」
「私は馬に蹴られたくありません」
フローリアとシルヴィアの返事に、自分に味方はいないと悟ったミアは、砂糖を直接大量に口に入れたような顔になった。
「・・・・・・いつまであれを見ていればいいのでしょうか?」
「それは、向こうが飽きるまでだが・・・・・・なんだ。今日はやけに絡むな?」
考助が子供(と嫁)に甘々なのは、コレットやピーチのときにさんざん見てきているはずである。
それを今更、ミアがここまで愚痴っぽく言うのは珍しいことだった。
シルヴィアもフローリアと同じように感じたのか、頷きながらミアを見た。
「そうですね。なにかあったのですか?」
シルヴィアは、相変わらずふたりの世界を作っている考助とシュレインから何気なく離れて言った。
フローリアもシルヴィアの意図をわかっているので、それに合わせて動いている。
シルヴィアとフローリアに挟まれている格好になったミアは、それに付き合わされて、自然と考助とシュレインから離れる形になった。
いつの間にか考助とシュレインから離されたことに気が付いたミアは、憮然とした表情になった。
「別に大したことはありませんでしたよ。いつも通りのことがあっただけです」
どこをどう見ても何かがあったと言っているミアに、フローリアがフムと頷いた。
「なるほど。つまり、いつも通りに舞踏会なりに出たが、結局お相手は見つからなかったのだな?」
「なっ!? ちょ、待ってください! どうしてそうなるのですかっ!」
慌てて抗議をしてきたミアを、フローリアが真っすぐに見詰めた。
「間違っているのか?」
鋭すぎるフローリアの視線に、ミアはついと顔を逸らした。
「・・・・・・間違っていません。ええ、そうですよ。どうせ私は、未だにお相手が見つからない行き遅れですよ」
ツンと逸らしたままの顔のミアを見て、フローリアは内心でオヤと思った。
ミアは、確かにいつもこの手の話題で愚痴を言ったりしているが、今回はどこかいつもと違っている気がしたのだ。
それはまさしく母親としての勘といっても良いだろう。
現に、シルヴィアはまだこの段階では気付いていなかった。
「ふむ。本当になにがあったのだ?」
いつもは適当に流すフローリアなのだが、今回ばかりはさらに聞いたことにシルヴィアが驚いた。
そして、それはシルヴィアだけではなく、聞かれた当の本人も同じだった。
フローリアから意外な反応を返されたミアは、逆に焦ったような顔になった。
「えっ!? いえ、別に本当に普段通り、お相手が見つからなかっただけですが?」
ミアのその言葉に嘘が無いと見抜いたフローリアは、フムと頷いた。
「そうか? では、少しばかり、色々とため込みすぎたのか。・・・・・・少し休息を取ったほうが良いのかもしれないな」
「最近は、特に色々と動き回っているようですからね」
フローリアの言葉に同意するように、シルヴィアが頷きながらそう言った。
フローリアとシルヴィアの言葉に、ミアが途端に笑みを浮かべて頷いた。
「そうですよね! やはり、ここはひとつ、リトルアマミヤに行って・・・・・・」
「こら、待たんか」
そそくさとリトルアマミヤに移動できる転移陣がある部屋へと移動しようとしたミアを、フローリアがむんずと捕まえて止めた。
「な、なにをするのですか? 私は、癒しを求めてリトルアマミヤに・・・・・・」
「だから、それのどこが癒しなのだ?」
塔の管理をすることが癒しだとは全く思えないフローリアが、ミアを呆れた顔で見た。
そんなフローリアに、ミアは胸を張って答える。
「私にとっては、それが癒しです! ・・・・・・痛っ!?」
フローリアからポカリと頭を叩かれたミアは、わざとらしく頬を膨らませて抗議した。
そんな親子のやり取りを笑って見ていたシルヴィアが、ミアを見ながら言った。
「塔の管理が癒しになるかは置いておくとして、少なくともそれ以外が良いでしょうね」
「え~? 私にとっては・・・・・・待って待って、私が悪かったです」
もう一度殴る仕草を見せたフローリアに、ミアが自分の顔の前で両腕を交差させる仕草を見せた。
流石に何度も殴られたくはないというポーズだ。
少しは反省の色を見せたミアを見て、フローリアは拳を振り下ろすのを止めた。
「さて、癒しを求めるといっても、何をすればいいかな?」
「なにせ、ミアのことですからね。本気で塔の管理のことしか思い浮かばなさそうですね」
フローリアとシルヴィアが頭を悩ませているのに合わせて、ミアがコクリコクリと頷いていた。
それを見たフローリアをシルヴィアは、同時にため息をついた。
このまま話し合っていても埒が明かないと理解できたのだ。
結局しばらく話し合って、何をすればいいのか決められなかった三人は、考助に相談した。
「それで、僕のところに来たのか。でも、いきなりそんなことを言われても何も思いつかないよ?」
以前の世界にいた遊びを作るにしても、どうしても時間はかかる。
既に考助が作った遊びは、ミアの癒しにならないことは分かっている。
さてどうしたものかと考える考助だったが、ふとミアの顔を見て首を左右に振った。
「何か、もうとっくに吹っ切れているように見えているけれど? 今更、新しく癒しをする必要はないんじゃない?」
考助のその言葉に、ミアは「えっ!?」と驚きながら両頬を手で押さえた。
そのミアを、フローリアがジッと見つめた。
「・・・・・・・・・・・・確かに、先ほどよりはずっと良くなっているな」
「えーっ!? ちゃんと私の癒しを考えてくださいよ!」
何やら雲行きが怪しくなってきた雰囲気に、ミアが慌てて抗議の声を上げた。
だが、そんなミアを無視して、シュレインが子供を抱いたまま頷いた。
「結局ミアは、考助やフローリアとゆっくり話をしたかったというわけかの」
シュレインがそう結論付けると、ミアは憮然とした表情になった。
「そんなことはありません! きちんと考えてください!」
ミアはそう抗議するも、フローリアはやれやれという表情になるだけで、すでに真面目に考える気をなくしてしまったようだった。
結局、このあともまともにミアの癒しを考えることはなく終わるのだが、考助はミアのために何か癒しになるような物はないかと考えることになるのであった。
ミアのために何を考えましょうか?w
手毬の作り方を教えるとか、刺繍を教えるとか考えましたが、何かしっくりこなくて・・・・・・。
というわけで、ミアのための癒しを募集します!
(本文中に出すかどうかは、未定ですw)




