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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(8)スーラの役目とのんびり

 農作業を終えて屋敷に戻った考助とシルヴィアは、リビングで寛いでいたフローリアに、早速スライムの話をした。

「ほう。それはまた面白い話だな。・・・・・・で、コウスケはなにをやらかしたんだ?」

「なにもやっていないよ!? なんで、なにかが起これば、僕のせいにするかな?」

 フローリアの言葉に、思わず考助は突っ込みを入れた。

 フローリアの顔を見れば、冗談で言っているのはわかっているが、それでもこんな対応になるのは、今までの条件反射だ。

 何か起こるたびに同じようなやり取りをしていれば、妙な習性(?)が付いてしまうのは、致し方ないことだろう。

 

 考助とフローリアのやり取りを笑いながら見ていたシルヴィアが、それを流すようにして付け加えた。

「コウスケさんが関係しているかどうかはともかく、スライムが耕した土に何かをしていたのは間違いないでしょうね」

「それがなにかはわかっていないのか?」

 あっさりと自分の突っ込みを流したフローリアに、考助はいつの通りのことと特に反応を見せず、ただ頷いた。

「うん。こっちも作業していたから、スライムのことはほとんど放置していたね。特に悪いことをしているようには見えなかったし」

「私も同じですね。ただ、時折見ていた感じでは、スーラも含めて、たまに土にもぐっているように見えましたから、何かをやっているのだと思います」

 シルヴィアの考察に、フローリアはなるほどと頷いた。

 

 耕した土でなにかをやっていたスーラのことを考えていた考助は、ふとなにかを思い出したように呟いた。

「でも、どうやってスライムは、必要な土とそうでない土を見分けていたんだろう?」

 土を改良(?)していたスライムたちは、見事に考助とシルヴィアが耕した場所だけにたむろっていた。

「単に掘り起こして柔らかくなっているところだけに反応していたとも考えられますが、そんな感じではありませんでしたね」

 考助と同じようにスライムたちの様子を思い出していたシルヴィアが、同意するように頷いた。

 

 首を傾げている考助とシルヴィアに、フローリアがどうということはないという顔になった。

「単に、スーラの指示に従っていたとは考えられないのか? スーラも一緒にいたのだろう?」

 そう言ったフローリアの視線の先には、浮遊雲に乗ってふわふわとあたりを漂っているスーラがいた。

 スーラであれば、考助の意を汲むくらいの知恵を持っていることは、皆が知っていることだ。

 そのスーラが、考助の作業の役に立つように、他のスライムに指示を出していたのでは、というのがフローリアの考えだった。


 考助とシルヴィアがそのことに思い至らなかったのは、スーラが他のスライムと一緒に作業をしている姿を見ていたためだ。

 スライムたちは、ただ単に遊んでいるようにしか見えなかったため、何かの統一的な意思を持って作業をしていたとは思えなかったのだ。

 ふたりは、フローリアの言葉を聞くまで、あくまでも遊びの一環で土が変化していたと考えていたのである。

 

 フローリアの言葉に、考助とシルヴィアは同時に顔を見合わせた。

「言われてみれば、確かにそうかな?」

「いえ、そう結論付けるのは早急すぎる気がします」

 そう言った考助とシルヴィアは、ほぼ同時にスーラへと視線を向けた。

 

 

 ここで敢えて考助たちがスーラを呼ばないのは、いまの会話はあくまでも話のタネとしているためだ。

 スーラに直接話を聞けば、ある程度の身振り(?)で意思の疎通ができなくはない。

 その上で話を聞けば、いま話している疑問は解決する可能性もある。

 敢えてそれをしていないのは、考助たちがスライムの謎(?)について、本気で答えを得ようとはしていないからである。

 三人ともに、ただただ暇に任せて何も話さずにまったりとした時間を過ごすのは嫌いではない。

 だが、折角湧いてきた面白そうな話題で盛り上がるのは、彼らにとっての長く一緒にいるためのコツのようなものなのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 アスラが用意した屋敷には、しっかりとお風呂が付いている。

 そもそも水はどこから引いているのかという疑問はあるのだが、表には川を含めた水場がない以上、それこそ塔の階層に拠点を置くときと同じように、自動で引いている可能性がある。

 もっとも、もともとある地下水を利用しているということも考えられるのだが。

 それらの細かい仕様は考助にはわからないし、敢えて聞くつもりはない。

 折角用意してくれた屋敷なので、ありがたく利用するだけだ。

 

 考助とシルヴィアは、風呂に入ってしっかりと体をきれいにしてからフローリアと話をしていた。

 さらに、ミツキが用意した夕食を終えたあとは、三人揃って完全にまったりモードに移行している。

「なんとも贅沢な時間を過ごしている気がするな」

 何もせずに、ただひたすらのんびりとした時間を過ごせるというのは、フローリアにとっては非常に贅沢な時間の過ごし方だ。

 勿論、趣味に時間を使い続けているときも同じような感覚を覚えるが、それとはまた違った意味がある。

 

 同じようなことを考えた考助も、同意するような顔になっていた。

「そうだね。勿体ない気もするけれど、たまにはこういうのもいいんじゃないかな? ・・・・・・なんか、前にも似たようなことを言った気がするけれど」

「それでいいのではありませんか? 誰かに迷惑をかけているわけではありませんし」

 考助の独白のような言葉に、シルヴィアがそう返してきた。

 

 考助はともかくとして、シルヴィアとフローリアは、立場のある地位にいたこともある。

 その分、当然のように責任も負っていたので、のんびりしたらしただけ他の人に迷惑を掛けるような生活をしていたのだ。

 勿論、体を壊してしまっては意味がないので、十分な休息を取ったうえでの話だが。

 それがいまでは、子供たちも独り立ちをして、完全に自由な立場になっている。

 お陰で、自分に好きなことができる時間が増えてきた。

 だからこそ、考助も新拠点を作って、こんなにまったりとした時間を過ごしているのである。

 

 

 そんなとりとめもない会話をしている考助の傍には、当たり前のようにナナとワンリが控えている。

 考助は、そんな彼女らの体をモフりながら、シルヴィア、フローリアとの会話を行っているのだ。

「迷惑云々はともかくとして、管理層にいるときには、誰かしらが来ていたからねえ。確かに、こんなにのんびりした時間を過ごすのは久しぶりかな?」

 現在の管理層には、考助の子供たちが自由に出入りできるようになっている。

 それ以外にも、各部門長やアリサやセシルを始めとした奴隷たちも好きに出入りしている。

 別にそれが迷惑だとはかけらも考えたことはないが、それでもなんだかんだと話をすることになっていたのだ。

 それを考えれば、誰にも邪魔をされずに自由な時間を過ごせるというのは、考助の言った通りに、本当に久しぶりのことだった。

 

 そんな考助の思いを読み取ったシルヴィアが、ゆっくりと自分にも言い聞かせるようにして言った。

「これから先もいろいろとあるでしょうから、時にはこうしてのんびりと過ごしても神からのお怒りも買わないでしょう」

「まあ、その神のひとりが考助なのだが」

 シルヴィアの言葉に、すぐにフローリアが混ぜっ返してきた。

「うむ。では、ワレが許そうぞ。今日はゆっくりのんびりと過ごすがよい」

 わざとらしく似合わない口調でそう言ってきた考助に、シルヴィアとフローリアは小さく笑い声を上げるのであった。

まったり回でした。

スライムの考察については、もう少しだけ続きます。

どちらかといえば、考助の農作業よりも、こっちがメインでしょうか?w

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