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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(3)アスラの用意した建物

 今回の件は、あくまでもアスラが主導しているので、考助がすることは少ない。

 ただ、数日のうちにエリスを通してアスラから場所の選定が終わったと連絡があり、それをもとに連れて行く眷属を決めた。

 といってもそんなに深く考えたわけではなく、考助が神獣と定めた三種の眷属を新しい拠点に連れて行くことにした。

 新しい拠点は塔の外になるので、移動手段としては飛龍が必要になることもあるだろうが、そもそも飛龍は召喚で呼ぶことができるので、敢えて近くに呼んでおく必要はない。

 さらに、他に種族が増えても管理しきれなくなる可能性があるので、最初はその三種だけとしたのである。

 そもそも塔の外に出る以上、餌用の召喚陣は置けないので、餌は自前ですべて用意する必要がある。

 餌を確保するためにどの程度の広さが必要になるのか、手探りで確認するしかない。

 そのため、最初のうちは数を限って連れて行くことにしていた。

 

 エリアが決まったと連絡があってから数日後に、さらにエリスから完全に準備が整ったと連絡が入った。

 アスラであれば一瞬で用意できそうなもので、なぜそこまで時間がかかったのかは考助にはわからない。

 他の女神たちも世界に直接影響を及ぼすためには、様々な条件を満たしていることを確認してから行っているので、そうした手続きに時間がかかっているのだろうと、考助は想像していた。

 それは神々の事情であって、アースガルドで暮らしている考助にはほとんど関係が無いことだ。

 考助としても時間をもらえるのはありがたいことなので、特になにも言わずにエリスからの連絡を待っていた。

 

 

 エリスから連絡を受け取った考助は、まずはコウヒとミツキだけを連れて拠点となるべく場所へと向かった。

 そこへ着いたコウヒが、珍しく感慨深げに呟いた。

「ここが新しい拠点になるのですか」

「そうね。まあ、ある程度はあの方も狙っているのでしょうけれど」

 コウヒに続いてミツキも顔をほころばせながら辺りを見回した。


 そこは、まぎれもなく考助が初めてこの世界に降り立ったところであり、コウヒとミツキに初めて出会った場所だった。

 最初に話を聞いた考助も驚くのと同時に、嬉しさとなつかしさでコウヒと同じように、とても感慨深げになっていた。

 ただし、いまの考助はそれどころではない状態になっている。

「ふたりとも気持ちはわかるけれど、まずは目の前の光景に驚かない?」

 コウヒとミツキにそう言った考助は、しばらくその場に立ち尽くしていた。


 当時は人工物などなにもなかった場所に、一軒の建物が建っていた。

 目の前の光景を見て現実逃避している考助の頭でも、それがアスラが用意した拠点だということはわかる。

 ただし、その建物は、考助が想像していたよりもはるかに大きくて、絢爛豪華な造りだった。

 考助としては、あくまでも十人程度が暮らして行けるだけの広さを想像していたので、せいぜい少し大きめのお屋敷が建つのだろうと考えていた。

 ところが、目の前にある建物は、大きさだけでいえば、一般的な学校ほどもある。

 それにも関わらず、無骨な造りではなく、しっかりと外観も飾られているのだ。

 外観の飾りは考助の趣味に外れないように、あまりごてごてとしたものではなく、どこかの国の「白い家」を思わせるような感じになっている。

 それでも見る者が見れば、一流の細工が施されていることはすぐに分かるだろう。

 さほどこの世界の美術には詳しくない考助であっても、その美しさはすぐにわかるほどだった。


 フローリアがこの建物を見ればどんな反応を示すだろうかと、考助は現実逃避したままの頭で、そんなどうでもいいことを考えていた。

 さすがに見かねたのか、良い時間が経ってからミツキが考助に声をかけて来た。

「考助様、いつまでもこの場所に立っていても仕方がないので、中に入りましょう。それに、シルヴィアとフローリアも待っているわよ」

「あ、うん。そうだったね」

 ミツキの言葉でようやく正気に戻った考助は、覚悟を決めたように歩き出した。

 新しい拠点にすぐにでも移ることになっているシルヴィアとフローリアは、塔の管理層で待っている。

 考助の作った転移陣は、作動させるためにさほど時間はかからないので、三人だけで移動してきた方がいいと考えたのだ。

 それに、管理層側できちんと動作しているかを見ている者も必要だ。

 

 

 これほどの大きな建物が待っているとは考えていなかった考助は、コウヒとミツキの意見を参考にしながら屋敷のどこに転移陣を置くかを決めた。

 万が一、塔の側からこの屋敷に攻め込まれることがあったとしても、守り易い場所ということに重点が置かれている。

 この転移陣は、管理層にある転移門よりもさらに利用者が限られることになるが、それでも用心するに越したことはないという判断からだ。

 そういうことに関してはふたりに一任している考助は、特に反対意見を言うでもなく、すぐにその場所に転移陣を置くことを決めた。

 転移陣自体は、普通の部屋であればどこにでも設置できるようになっているので、考助としてはどこに置いても良かったのだ。

 

 転移陣の設置自体には、さほど時間はかからない。

 新拠点側に転移陣を設置した考助は、きちんと安全を確認したうえで、転移陣を起動した。

 普段からアスラの神域に行くために転移陣を使っている考助が、塔の管理層と新拠点を行き来するための転移陣の作成に失敗するはずもなく、無事に反対側の塔の管理層へと転移することができた。


 見覚えのある部屋に着いた考助が辺りを見回すと、本を読みながら待ち構えていたシルヴィアと目が合った。

「無事に設置できましたか」

「うん。まあ、転移陣自体に問題はないみたいだね」

 問題が起これば、それはそれで大変なことになるのだが、最初から失敗すると考えていなかったシルヴィアは、別のことが気になった。

「・・・・・・なにかほかに問題があったのですか?」

「はっきり言えば、そうなるね。特に、フローリア辺りが知れば、頭を抱えそうなことが」

 困っているような、戸惑っているような、とにかく複雑そうな表情を浮かべている考助に、シルヴィアはため息をついて見せた。

「その言葉を聞くだけで行きたくないような気もするのですが・・・・・・そうはいかないのでしょうね。フローリアを呼んできます」

 できれば面倒なことは一度に済ませたい考助は、シルヴィアの言葉に頷いた。

 そして、それを確認したシルヴィアは、本を閉じてからフローリアを呼びに行くために、部屋を出て行くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「な、なんだこれは!?」

 表に出て拠点となる建物を確認したフローリアは、思わずといった様子でそう叫び声をあげていた。

 正直なところ同じような気分だった考助だが、そのまま放置するのも可哀そうなので、一応フォローをすることにした。

「いや、ほら。城とは規模が違うから」

「それでフォローしたつもりか?」

 ギロリとした視線でフローリアに睨まれた考助は、肩をすくめた。

 はっきり言えば、考助としてもフォローになっているとは思っていないのだが、ほかに言うべき言葉も思いつかなかったのだ。

 

 やはりというべきか、アスラが用意したこの建物は、フローリアにとっては常識外の範疇だったようだ。

 一回りして外観を見終わった一同が屋敷内に入ったあとも、フローリアはしばらくの間、頭が痛いという顔になっていた。

 結局、建物が建っている場所に、他の者が来ることもないだろうと結論付けた。

 早い話が、問題を先送りにしただけなのだが、皆わかっていても敢えてそれに突っ込む気力を持っている者は、その場にはいなかったのである。

白い家=ホワイトハウス


考助は、初めて建物を見た瞬間、それを思い浮かべましたw

といっても、さすがの直球の言葉を使うわけにはいかないので、ここで建物の名前を募集します。

決まるまでは、「新しい拠点」とか曖昧な言い方を続けますw

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