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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔のあれこれ(その24)
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(1)疲れたふたり

「「疲れました・・・・・・」」

 いつかどこかで見たような光景が、くつろぎスペースで見られたが、今回は珍しいことがあった。

 それがなにかといえば、トワとミアの兄妹が揃ってだらけていたことである。

 どちらか片方がそういう感じになることはあっても、ふたり揃ってというのは本当に珍しい。

 その兄妹を見て、実の母親(フローリア)が笑っていた。

「さすがに、天翼族のことは衝撃が大きかったか」

「ミアお姉様、だいじょうぶ?」

 ミアがだらんと伸ばしている手をプラプラとさせて遊びながら、ミクがそう聞いてきた。

 普段はきっちりとしている(ように見える)ミアが、だらけているのがミクには珍しいのだ。

「ええ。大丈夫ですよ。ただ、ちょっとだけ、ややこしいことがあっただけです」

 ミクの問いにミアはそう答えたが、どこからどう聞いても元気があるようには聞こえなかった。

 同じように傍で見ていた考助は、これは本当にいろいろとやられているんだなあと、他人事のように考えていた。

 

 トワとミアがこれほどまでの疲れを見せているのは、天翼族のことについてである。

 神々自らが世界中の住人に行う神託を行って世界に現れた新たな種族は、それこそ世界中に衝撃を与えた。

 人々にとっては、そんなことがあり得るのか、といったところだろう。

 そのしわ寄せは、人々を管理している国家に向かい、その国家の上層部は、唯一繋がりがあると思われるラゼクアマミヤに向かってきたのである。

 さらに、ラゼクアマミヤでも特に、現人神と直接の繋がりがあるトワとミア、そしてここにはいないココロに、質問が集中していた。

 ただし、ココロに関しては、巫女という立場があるので、神々に関する詳しい話はできませんで済んだのだが、その分までトワとミアに向かうことになった。

 結果として、他の者たちと同じように、ほとんど情報を持ち合わせていないふたりは、そのことを書いた手紙を書いたりなど、対応に追われていたのである。

 

 考助の顔を見て、なんとなくその心境を察したのか、トワが若干考助を睨み付けた。

「少しは助けてくれるとか、ないのでしょうか?」

 珍しくとげとげしいトワの態度に、考助はこれは珍しいなと妙な感動をしながら、首を傾げた。

「そうはいってもね。僕が言えることって、この前エイルがあの会議で話したこと以外にはないよ?」

「言えることということは、言えないこともあるということですね!?」

 ガバリと上体を起こして自分を見て来たトワに、本当に追い詰められているのかと考えた考助だったが、申し訳なさそうな顔になった。

「それはあるけれど、言えないことの大部分は、あの浮遊島に関することだからねえ・・・・・・。フローリアたちは勿論、天翼族も知らないんじゃないかな?」

 考助の知らない間に、エリスあたりが話していれば別だが、天翼族も浮遊島に関しては、あまり詳細は知らないはずなのだ。

 

 さすがに神の秘儀(?)に関してまで知りたいとは思わなかったのか、その考助の答えに、トワは非常に残念そうな表情になった。

 一国の国王とはいえ、一介の人間でしかない(というとかなり語弊がありそうだが)トワは、知っていいことと知らない方がいいことの区別はついている。

 特にこの世界では、神々に関することは、知らないでいた方がいいことの方が多いのだ。

 さらにトワの場合は、ラゼクアマミヤの国王という立場と、現人神の実の息子の立場で、板挟みになることも多い。

 その場合は、神々の事情ということで突っぱねることがほとんどなのだが、それでも立場的には苦しいときもあるのだ。

 

 トワの顔を見てため息をついたフローリアは、今度は考助を見た。

「あの浮遊島・・・・・・か? あれは、神々が創ったのだろう?」

「うん。そうだよ。さすがに天翼族は創れないはずだね。・・・・・・もしかしたら創れるかもしれないけれど」

 そもそもあの浮遊島は、それこそ神の力によって、なにもないように見えるところから創りだされたのだ。

 それほどの力を天翼族が有しているとは思えない。

 というよりも、天翼族にそんな力があるのであれば、アスラもわざわざ考助たちに浮遊島を創るように指示はしないだろう。

「・・・・・・あれほどの物を独自の力で創れたら、それはすでに半神どころか神といっても良いと思うがな」

「そうだね。僕もそう思うよ」

 まったくもって同感なフローリアの感想に、考助が頷いた。

 またもや他人事のような答えだが、実際に考助も天翼族に何ができて、なにができないのか知らないので、それ以上の答えようがない。

 

 考助の答えに、さらりと顎を撫でたフローリアは、さらに続けて問いかけた。

「実際、天翼族の強さはどれほどのものなんだろうな?」

「さあ? 大人数で囲めばドラゴンも倒せるようだけれどね。実際に戦ったところを見たわけじゃないから、何とも・・・・・・」

 もし戦神であれば、見ただけで相手の強さも図れるのだろうが、残念ながら考助自身は、創造神の亜種(?)であって戦神ではない。

 天翼族の正確な強さまでは、はっきりとは分からない。

「それに、フローリアだって直接の対面はしたよね?」

 エイルが塔のゴブリンを見に来たときに、フローリアとも対面をしている。

 

 そのときに分からなかったのか、という考助の問いに、フローリアは肩をすくめた。

「残念ながら私は、戦いは専門外だ」

 リクたちAランクパーティと同等以上に戦える力を持つフローリアだが、ぬけぬけとそう言い放った。

 それに、直接の戦いが専門外だというのも間違いではない。

 

 考助とフローリアの会話に興味を持ったのか、今度はミアが口を挟んできた。

「でしたら、他国との外交をするつもりがないというのは?」

「ああ、そんなこと言ったのか」

 ミアの言葉が、例の会議のときに言われたことだとわかった考助は、そう答えながら頷いた。

 ちなみに、この話は考助はいま初めて聞いていて、天翼族が今後世界の住人とどんな関わりを持っていこうとしているかまでは聞いていなかった。

「それだったら、その言葉通りなんじゃない? 島中を覆えるだけの結界も天翼族だけの力で張れるみたいだし」

「・・・・・・そうなんですか?」

 考助の答えに、ミアが驚きの表情になった。

 

 浮遊島がこの世界に現れてからすでに半月以上経っている。

 すべての外観はともかくとして、大きさくらいは海上から把握はできているのだ。

 当然ミアもその話は聞いているので、それほどまでの大きな結界を作れるのかと驚いたのである。

 

 今度は、逆にミアの顔を見て考助が不思議そうな顔になった。

「あれ? そこ、驚くところ? 道具のサポートがあれば、僕だってあれくらいの大きさの結界は作れるけれど?」

 いかにもなぜだという顔になる考助に、その場にいた全員(ミクを除く)が、あなた(神様)と一緒に考えるな! と心の中で突っ込んだのは致し方のないことだろう。

 だが、なぜかこのときは、考助の神としてのセンサー(?)は全く働かず、皆の様子には気づかなかった。

 そのことに気付いたフローリアは、敢えて考助には突っ込まず、ため息をつきながらトワとミアを見た。

「・・・・・・まあ、そういうわけだ。もしかしたら、既存の魔法攻撃で、なんとか(・・・・)結界を傷つけることができるかもしれないな」

 多分に皮肉を含んだフローリアの言い様に、トワとミアは力なく苦笑を返すことしかできないのであった。

アップしてから別に今話は別の章にしなくても良かったのではと思いました。

まあ、今更なので別章としますがw

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