(11)天翼族とゴブリン
他の作者様がクリスマスモードに入っているのに、空気を読まず通常営業です。
前(二年前!w)に投稿したからいいですよね?w
話し合い・・・・・・というよりも、一方的な宣言を終えたエイルは、ふたりの仲間とともに、まっすぐに浮遊島に帰る・・・・・・わけではなく、塔の管理層へと向かった。
案内しているのはシルヴィアだ。
「ああ、お帰りなさい。どうだった?」
くつろぎスペースに入るなり、考助が待ちわびていたように立ち上がってそう聞いてきた。
そもそもエイルたちは、トワの要請に従って考助に呼ばれたために、わざわざあのような場所に出て行ったのだ。
それが無ければ、細々と外との交流をするくらいで、あとは島に引き籠っていただろう。
ただ、今回の話し合いを見た結果、エイルの中ではちょっとした欲求が出てきていたが、それはまだ誰にも話していない。
島に帰ったら、一緒について来ている仲間と相談するつもりでいるのだ。
考助に聞かれたエイルは、笑顔のまま答えた。
「特に問題はありません。どうやらこの世界には、空を移動する相手に対する有効な攻撃手段はないようですから、しばらくはのんびりできそうですね」
勿論、天翼族たちも今の状態で放置しておくつもりはない。
この世界にはドラゴンを始めとした空を支配しているモンスターもいるのだ。
当然、島全体を覆う結界のようなものも作るつもりでいた。
天翼族には、そうした技術もあるので、多少の時間さえかければ用意することは可能なのだ。
エイルの笑顔になにやら含みがあるように感じた考助だったが、ジッとその顔を見ても分からなかったので、無視して話を続ける。
「そう? それならよかった。それで、疲れてなければ次の場所に案内するけれど、どうする?」
せっかくの機会なので、考助はエイルたちをとある場所へと連れて行くつもりになっていた。
そこがどんな場所なのかは、すでにエイルには説明してあるので、すぐに頷いた。
「ええ。特に疲れてはいませんので、お手数ですが、案内お願いいたします」
「あはは。いいのいいの。手間って程でもないしね。それに、むしろ意見を聞きたいのは、僕の方だから」
「そうですか? お役に立てるかはわかりませんが、よろしくお願いいたします」
どこまでも(考助から見れば)固い調子を崩さないエイルに、考助は苦笑しながら頷くのであった。
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考助が、エイルたちを連れて来た場所は、ソルがいるゴブリンの層である。
違う世界でゴブリンを労働力として使っていたエイルたちが、自分の眷属であるゴブリンを見てどう感じるかを知りたかったのだ。
「コウスケ様、そちらは?」
考助たちが転移するとすぐに、傍にいたゴブリンが走り出して呼びに行ったのか、ソルが走り寄ってきた。
「ああ、ソル。こちらはアースガルドに新しく加わった種族で、天翼族の皆さん」
「そうでしたか。いきなり不躾な態度、失礼いたしました」
いきなり訝し気な視線を向けてしまったことを気にしたのか、ソルはそう言いながら頭を下げた。
そして、それを見たエイルも頭を左右に振った。
「いえ。お気になさらずに。初めての者を警戒するのは、皆を率いている者としては当然の態度ですから」
どうやらエイルもソルの第一印象は悪くなかったらしく、笑顔でそう返した。
それから考助たちは、ソルの案内でゴブリンが作っている里を見て回った。
「・・・・・・なるほど。この里は素晴らしいですね」
一通り里を見て回ったエイルが、そう感嘆の声を上げた。
「私たちはあくまでもゴブリンを労働力としてしか使っていません。ここまで上手く回っているのは、上位種の皆さんがいらっしゃるからでしょうね」
エイルがそう感想を言うと、ソルが多少誇らしげに笑っていた。
「そうですか。そう言っていただけるとありがたいですね。ただ、貴方たちのゴブリンの使い方も興味があります」
「私たちですか? 私たちは、こちらでやられている農作業などを手伝わせているくらいですね。・・・・・・貴方たちには申し訳ありませんが、増えすぎても困りますから」
言葉を濁してそう言ったエイルに、ソルは首を左右に振った。
「いえ。気を使っていただかなくても結構です。実際、ゴブリンが扱いづらいのは、私たちも日々実感しておりますから」
「そうですか」
ソルの答えに、エイルは安堵したように頷いた。
ここで、ソルとエイルの話を聞いてきた考助が、口をはさんできた。
「それで、エイルとしてはどうかな?」
「どう、とはどういうことでしょう?」
中途半端な聞き方をしてきた考助に、エイルが困ったような顔で首を傾げた。
「ああ、言葉が足りなくてごめん。ゴブリンの眷属は、天翼族の労働力として使えるかな?」
「それは、まあ、大丈夫ですが・・・・・・よろしいのですか?」
エイルの言外に込められた意味を察した考助は、苦笑を返した。
エイルは、考助の眷属を労働力――もっとはっきり言えば、奴隷として使うことになるのが構わないのかと聞いているのだ。
ただ、確かに眷属云々のことはあるのだが、それ以前の問題もある。
「いいんだよ。というより、そんなことを気にしていたら、そもそもこの里だって作ることを許可していないからね」
なんだかんだ言いながら、ソルたちが運営しているゴブリンの里でもそれなりの犠牲が出ている。
考助が召喚しているわけではなく、自然に生まれて来た子たちが犠牲になっていたりするのだが、一応ソルから報告を受けているのだ。
だからといって、ソルに対して里の運営方針を変えろと言ったことはほとんどない。
考助の答えに、エイルは期待するような顔になって頷いた。
「そうですか。それでしたら、ぜひともお願いいたします」
「コウスケ様? もしゴブリンが入り用なのでしたら、里から出しますが?」
考助とエイルの話を聞いていたソルが、そう提案してきたが、考助は首を左右に振った。
「いや。その必要はないよ。――いや、ゴメン。別に里のゴブリンが悪いというわけじゃないんだよ」
少しばかり落ち込んだような顔になったソルに、考助は慌ててそう言い訳をした。
考助がソルの提案を拒否したのには、きちんとした訳がある。
「そうじゃなくてね。召喚をした初期のゴブリンを、塔の外で生活させたらどうなるのかを確認したくてね。あとは、勿論、エイルたちがきちんと使えるのかどうかも確認したいし」
これまで、召喚陣から出て来た眷属が、塔の外で生活できるのかどうかを確認したことは、一度もない。
せっかくの機会なので、エイルたちを使って確認したかったのだ。
それに、いきなり野生の世界に放り込むわけではなく、浮遊島という限られた空間で、しかも天翼族に管理された状態だ。
言葉は悪いが、実験とするのにこれ以上の機会はないだろう。
考助の説明に、ソルとエイルが納得したように頷いた。
「そういうことでしたら、確かにそのほうがいいでしょうね」
「私どもは、主様がよろしいのでしたら、なにも言うことはございません」
「それはよかった。それじゃあ、早速・・・・・・といいたいところだけれど、エイルたちは準備が必要だよね?」
さすがの天翼族も、ゴブリンたちをまとめて輸送するのに素のまま抱きかかえて連れて行くわけではないだろう。
考助がそう考えたのは当然であり、その予想通りエイルは頷いた。
「はい。そうですね。できれば数日準備期間が必要になります」
「そう。それだったら、準備ができたら連絡を頂戴」
エイルにはすでに、考助と通信ができる交神具を渡してある。
それを使って連絡さえもらえれば、考助としてはいつでも構わない。
考助の説明を聞いたエイルは、畏まりましたと神妙な顔で頷き、他のふたりの天翼族と何やら相談を始めるのであった。
天翼族、ゴブリンGet!
これで天翼族にまつわる話は全て終わりになります。
次は・・・・・・どうしましょうか?w
まったくのノープランです




