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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 新たな大地と種族
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(1)大掛かりな計画始動

 アスラの神域で、いつもの夜会を終えた考助は、アスラに呼ばれていた。

「考助、ご苦労様」

「いや。そんなに疲れていないよ」

「そう? さすがに慣れて来たのかしらね?」

 最初の頃からは見違えるようね、と続けたアスラに、考助は渋い顔になった。

 さすがに二十年以上も同じことを繰り返していれば、いやでも慣れてくるというものだ。

 それに、女神たちも気を使っているのか、最初と違ってガツガツとしたところが無いのが、考助にとっては慣れる要因のひとつとなっている。

 

 考助の顔を見て、アスラは口元を抑えながらクスクスと笑った。

「・・・・・・僕をからかうためだけに呼んだんだったら、そろそろ部屋に戻るけれど?」

「あら。随分と冷たいのね・・・・・・とまあ、冗談はこれくらいにして――」

 考助が目を吊り上げると、アスラはわざとらしく視線を逸らしつつ話題を変えた。

「考助にお願いしたいことがあってきてもらったの」

「お願いしたいこと?」

 若干警戒したような顔になった考助に、アスラは憮然とした顔になった。

「なぜここでそんな顔になるのか、少しばかり問い詰めたい気になってくるわね」

「えっ!? あ、いや、これは、別に・・・・・・!?」

 アスラの追及に、しどろもどろになっている考助には、僅かな説得力すら皆無であった。

 

 いつもと同じような展開に満足げに頷いたアスラは、さっそくその「お願い」を口にした。

「少し前に考助が作った道具があるわよね?」

「道具? どのくらい前に作ったやつ?」

 考助が新しく作った道具は数え切れないほどある。

 アスラが言う「少し前」というのが、どれくらい前まで遡るかによって、思い当たる道具も変わってくるのだ。

「つい最近よ。クラーラとシュレインが協力して作った材料を使って、作ったでしょう?」

 この時点で、アスラが言っている道具はふたつに絞られた。

 ひとつは宝玉であり、もうひとつはいまもスーラの居座る雲もどき(名称未設定)となっているはずだ。

 

 どちらのことだろうと首をひねった考助だったが、すぐに答えを出した。

「うーんと、あのスーラのおもちゃのこと?」

 宝玉は、もっと前からシュレインが数を作っていた。

 それは、前回の神域訪問のときにもすでにあったので、わざわざ今出す話題ではないと考えたのだ。

 そして、案の定、アスラは考助の言葉に頷いた。

「そう。それよ。あの石・・・・・・名前が無いのは不便ね。あの飛こ・・・・・・」

「はい、ストップ。それ以上は、駄目だから!」

 考助が言っていることに意味が分からず首を傾げたアスラだったが、すぐに別の案を出してきた。

「だったら、天空石とかは?」

「うーん。・・・・・・あまり変わり映えはしないと思うけれど、まあ、いいんじゃないかな?」

 考助も物を作ったのはいいが、特に名前にこだわりがあるわけではないので、あっさりとアスラの案に了承した。

 

 名前が決まったことの満足したアスラは、一度だけ頷いてからさらに続けた。

「その天空石だけれど、あれよりももっと高性能なものって作れる?」

「高性能って・・・・・・伸ばす力にもよるけれど、出来なくはないよ?」

 単純に考えても、浮くための力を強くするとか、もっと影響範囲を広げるなど、いくつか思いつくことはある。

 そのいずれも、とんでもなく高価な材料を使ったりすることになるが、それについては考えない。

 なにしろ、目の前にいるのはアースガルドを管理している大元の女神なのだ。

 

 考助の答えに満足げな表情になったアスラは、

「そう。それだったら、どの女神を使ってもいいから、ちょっとお願いしたいことがあるんだけれど・・・・・・」

「それは構わない・・・・・・というか、むしろアスラのお願いというのが怖く感じるのは自分だけかな?」

 残念ながらこの場には考助とアスラしかいないため、考助に同調する者は誰もいなかった。

 もしこの場にエリスあたりがいれば、表向きはともかく内心ではしっかりと同意してくれただろう。

「そんなことはないわよ。それでね――――」

 なんとも棒読みな感じで答えたアスラは、天空石を使ってとある計画を立てていることを考助に話した。

 そして、その話を聞いた考助は、最初は驚きながらも、最終的には協力することを約束するのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「――――というわけで、しばらくこっちに顔を出せなくなったんだよね。ゴメン」

 そう言って頭を下げた考助に、話を聞いていたシルヴィアとフローリアが首を振った。

「いえ。そういう事情なら致し方ないかと」

「そうだな。どちらかといえば、そちらを優先すべきだろうな。なにしろ、神の計画に参加するのだから」

 なんとも大げさな言葉だったが、フローリアが言っていることは間違っていない。

 それどころか、この計画が成功すれば、間違いなく「神の御業」として称えられることになるだろう。

 

「それにしても、複数の、しかもかなりの高位の神が参加する計画とは具体的にどんなものなのだ?」

 先ほど考助が話した内容は、神の計画に参加するということだけで、具体的な内容までは話していなかった。

 そのため、興味を覚えたフローリアが問いかけたのだが、考助は首を左右に振った。

「ごめんね。それはまだ言えないんだ」

「ああ、いや、済まない。別にコウスケを困らせるつもりはなかった。言えないなら言えないで、それは構わない」

 そこでどうしても教えてほしいと言わない分別は、当然のようにフローリアは持っている。

 というよりも、迂闊に踏み込んで虎の尾を踏むような真似はしたくはない。

 

「その計画には、あのお方も絡んでいるのですか?」

 そう聞いてきたシルヴィアに、考助は頷きを返した。

「うん。勿論。というか、主導しているのがそうだからね」

 たとえ管理層であっても、アスラの名前は考助であっても迂闊には出せない。

 別に考助であれば構わないとは言われているのだが、余計なフラグを立てるような真似はしたくないのだ。

 

 考助の答えに、シルヴィアが考え深げな表情になった。

「・・・・・・そうですか。では、もしかすると、久しぶりにあのお方が直接この世界に力を及ぼすことになるかもしれないのですね」

 もしそうなれば、それこそ神話の時代よりも古い時代以来のこととなる。

 それが良いことなのか悪いことなのかはともかくとして、アースガルドの世界に大きな影響を与えることは間違いないだろう。

 そして、計画の内容を知っている考助は、実現すれば実際にそうなることがわかっていた。

「まあ、上手く計画が進めば、だけれどね」

 一応、慎重にそう答えた考助だったが、少しだけ呆れたような顔でフローリアが言ってきた。

「あのなあ、考助。神々が参加する計画が、失敗すると考えているのか?」

「いいや。まったく」

 自分ひとりで計画を立てたのであれば、失敗することもあると言えるのだが、残念ながら複数の女神が関わっている以上、失敗する未来はまったく見えなかった。

 

 実際には考助が計画の要になっているので、見積もりが外れた時点で計画は失敗となるのだが、そのことはいまの考助の頭にはなかった。

 そんなことよりも、世界に大きな影響を与える大掛かりな仕掛けを作る機会を与えられたことで、目先のことでいっぱいいっぱいになっていた。

 この計画が発動した結果、考助自身が世界にどんな影響を与えることになるのか、考助の頭からはすっぽりと抜け落ちていたのである。

というわけで、予告していた天空石を使った計画が発動しました。

アスラが関わっているので、小規模で終わるはずがありません!w

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