7話 神化?
ナナの成長を驚きを持って見つめる一同。
考助が頼んで、ナナにはその場でもう一戦してもらった。
さすがにコウヒやミツキの様に、剣の一振りで、とはいかないが、それでも余裕を持って倒していた。
ちなみに、コウヒとミツキは、この階層ではそれが可能だったりするが、比べるのが間違っている。
そもそも種族名が<白銀大神>とやらになっているので、ほとんど神様かそれに近い存在になっていると思われる。
どう考えても現時点でコウヒとミツキに次ぐ戦闘能力を持っていることになるだろう。
「・・・流石に、竜種を倒せたりはしないだろうけど・・・・・・」
考助の呟きを聞きとがめたのか、周囲のメンバーが頷いていた。
だが、残念ながらその希望(?)は、コウヒとミツキによって打ち砕かれた。
「どう思う?」
ナナの戦いぶりを見ながらミツキが、コウヒに問いかけていた。
「そうですね・・・。流石に、上位種は無理でしょうが、下位種は一対一なら何とかなるかと」
「そうよね。私もそう思うわ」
なんじゃそら、と思わず突っ込みを入れる考助である。
ちらりと他のメンバーを見ると、皆似たり寄ったりの表情だった。
「・・・・・・そもそも竜種に上位種と下位種なんてあるの?」
人から見れば、竜種は一括りで、出会ったら逃げろ、と言われている種族なのだ。
そこに明確な区別などされていない。
「それはもちろん、あるわよ。最上位種になってくると、神と同等かそれ以上だから倒すのも一苦労でしょうね」
倒せるんだ、という余計な突込みは誰もしない。
そもそもこの世界において、伝説級の竜種は神と同じ扱いになっている。
その竜種を倒せるというのは、他の者が聞けば、何の冗談かと笑うだろう。
ここにいるメンバーでは、今のミツキの言葉を冗談だと受け取る者は誰もいないのだが。
「・・・・・・そろそろ終わりますね」
そのコウヒの言葉を証明するかのように、ナナが相手をしていたモンスターが最後の抵抗を試みて、あっさりとしのがれてしまっていた。
鮮やかすぎるその勝利に、全員からため息が漏れていた。
「ナナ! もういいよ!」
次の目標へと向かおうとしていたナナに、考助がそう呼びかけた。
あまり近寄りすぎると危ないのでそれなりの距離があったのだが、ナナはきちんとその声を聞き分けて、すぐに考助の方へと駆け寄ってきた。
どうやら今回は敵の血を浴びることなく倒せたようで、すぐに考助へとじゃれついてきた。
勿論戦闘時の大きさのままではない。
見慣れた大きさに変化をして、考助に向かって飛びついてきていた。
ナナがここまでの変化というか、もはや進化をした心当たりは、一つしかない。
管理層に戻ったら、早速問い合わせをしてみようと決意する考助であった。
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ナナには、無理はしないように言い置いて、考助達は管理層へと戻ってきた。
早速考助は、ジャルへと連絡を取ってみる。
だが、珍しい(?)ことに応答が無かったので、忙しいのかと思いエリスへと連絡を取ることにした。
『はいはーい。考助、久しぶり!』
エリス用の神具のはずなのだが、なぜかアスラが出て来た。
『あ、ひっどーい。私だってたまにはこうして会話しないと忘れられるでしょう?』
「・・・何の話?」
『勿論、考助のことよ。あなたって意外に薄情な所があるから、こうして接点持ってないとすぐ忘れるでしょ?』
思わずギクリとしてしまった考助だった。
言われてみれば、思い当たるところが、無いわけでもない。
『それより、ジャルもエリスも今忙しいみたいだから、私がこうして出てみたの』
「割り込むようなことしていいの?」
『いいのよ。というか、エリス今、私の目の前にいるし。ジャルの説教しているわよ? 忙しいから私が代わって出ろって言われたわ』
「・・・は?」
本人がいるのに、なぜわざわざアスラに出るように言うのかが分からない。
あちらにはあちらの事情があるのだろう、と納得することにした。
ついでに、遠くの方から、アスラ様ばらさないで~、という聞き覚えのある声が聞こえてきたが、聞かなかったことにした。
『それで、聞きたかったことはナナの事?』
流石のアスラである。
連絡を取った目的は、既にお見通しだった。
「うん。そうなんだけど、あれってやっぱりジャルが絡んでるせい?」
『それもそうだけど、考助と直接対面した後も、直接指示して色々やらかしたみたいね』
その言い回しに、考助は思わず不安になってしまった。
「・・・何をやったのか、非常に気になるんだけど・・・」
『うーん・・・考助だったら教えてもいいと思うけど、もし言ったら後で私もエリスに怒られそうだからやめとく』
益々気になる考助だったが、聞いた考助もとばっちりを食らいそうだったので、思い直すことにした。
「はあ・・・まあ、いいか。取りあえず、害はないんだよね?」
『無い無い。在るわけないよ』
「それじゃあ、まあいいか。ところで、あの子って、やっぱり神族とか神様っぽい存在になってたりするの?」
『するする。正確には、神獣ね。すごいわよねー。この短期間で、あっという間に進化してしまって』
やっぱり、と思うと同時に、もう一つ重要な単語を聞いてしまった。
「・・・やっぱり進化だったんだ・・・」
『進化と言うか、神化? そもそも種族が変わること自体が進化だし。神力を使えるようになった時点で、神化と言ってもいいかもね』
なるほどー、と流そうとした考助は、ふとある重要なことを思い出した。
「ちょっと待って!」
『突然、どうしたの?』
「神力を使えるようになった時点って、もしかして・・・」
『もちろん、貴方たち全員含まれるわよ? まあ、まだ神化までは行ってないけど。神力操作を覚えた時点で、悟りを開くところまでは行っているわよ?』
あっさりと、とんでもない情報を聞いた。
「つまり何? 神力操作を使えるって、神族になるってこと?」
『その条件の一つという所かしら?』
もしかしなくても、いつの間にかまた目立つような物を手に入れていたという事なのか。
それでなくても、コウヒやミツキと言う存在がいるのに、さらに厄介な物を手に入れていたらしい。
そこで、ふと考助は思い出した。
そもそも考助自身は、最初から神力を扱えるように[常春の庭]で教わっていた。
「・・・あの・・・もしかしなくても[常春の庭]で神力を習ったのって・・・」
『ああ、別に考助を神族にするためじゃないわよ? それはあくまでも考助次第だから別に目指さなくてもいいわ。もちろん神族になるならなるで、歓迎するけど?』
「・・・・・・・・・考えさせてください」
『もちろん。というか、先走りすぎよ。まだ神族になれると決まったわけじゃないし』
「・・・そうなの?」
『だから、あくまでも条件の一つって言ったじゃない』
それを聞いて何となく安心してしまった考助である。
いや、別に神族になりたくないというわけではない。
あまりに唐突すぎたので、戸惑っているのだ。
『最初の時に言ったと思うけど、貴方は自由に生きていいのよ。塔に縛られる必要はないし。まあ今は、楽しんでいるみたいだけど』
「ああ、それだけは断言できるよ」
『そうよね。・・・あら、残念。そろそろ時間みたい。最後にもう一つ。きちんとワンリも見に行ってあげた方がいいわよ?』
最後の最後になぜか不穏に感じる一言を残して、交神が途切れた。
今聞いた話のことを思い出して、考助は一つため息を吐いた。
最後のワンリの事もフラグにしか思えない。
それに加えて、神力に関しての話を皆にどう伝えようかと思い悩むことになる考助なのであった。
ちなみに・・・塔の攻略時には、最上位種の竜種は出てきていません。上位種までです。
当然ながら最上位種は神獣と同じ位置づけにいます。
現時点でのナナは、神獣一歩手前と言ったところなので、最上位種には及びません。
2014/5/24 誤字修正
2014/6/3 誤字修正(ジャミ→ジャル)




