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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第8章 塔で神力の訓練をしよう
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4話 魂の形

 何とか補助道具なしの通信が形になりそうなので、別の物も検証することになった。

 そこで真っ先に出たのが、考助の左目の力と同じような物が出来ないか、という意見だった。

 そもそも神能刻印機なんてものがあるのだから、同じような事が人でもできないのかということから出て来た。

 だが、それに対する考助の答えは、無理、であった。

 神能刻印機は、そもそも左目の力の劣化コピーなので、いわば考助の力その物が刻印機に宿っていると言っていい。

 それを他人が使えるようにするには、同じように力をコピーすればいいように思えるが、残念ながらそんな簡単にはいかない。

 神力念話でわかったように、そもそも他人と神力を合わせることすらかなりの難易度があるのだ。

 考助と言う神力の扱いに長けた者がいても、女性陣同士が神力を繋がるようにすることすら苦労している。

 ましてや、考助の力をそのままコピーして他人に張り付けた上で、その者が使える様にすることなどほぼ不可能というのが考助の見解である。

 そもそも神力は魂の力であるのだから、ほんのわずかとはいえ、魂の形を変えるのに等しい。

 そんなことはしたくない、と思う考助の考えも分からなくもない、というのが女性陣の結論になった。

 考助だったら別に変えられても構わない、という意見も出たのだが、考助の「勘弁してください」の一言でその意見は、無かったことになっている。

 ちなみに、結論から言えば、力のコピーはできない。

 魂の形を変えるのは、まさしく神の御業であり、現世にある者達がそれを行おうとすれば、必ず変質した魂を作ってしまうことになる。

 もし考助がそれに手を出そうとすれば、間違いなくエリスあたりが警告するために出張ってくることになったはずである。

 まあ結果から言えば、考助が手を出すことは無かったので、そのようなことが起こることは無かったのだが。

 その日の話合いがあった数日後には、神託と言う形でシルヴィアに伝えられたのを聞いた考助は、きっぱり断ってよかったと内心冷や汗をかくことになった。

 

 そんなわけで、神力念話とは別の力の開発が行われていたのだが、なかなか思うようにはいかなかった。

 そもそも神力で何ができるのかすらよくわかっていないのだから、ほぼ暗闇の中で手探りで物を探しているのに等しい。

 普段使っている部屋のどこにあるのかが分かっていれば、ある程度の当たりを付けられるのだが、残念ながらそんな甘くはいかなかった。

 初めて来た空間の中で、手当たり次第に目的の物を探しているのに等しい状況なのだ。

 そして、むしろその流れにストップをかけるような話を聞くことになった。

 それは、創った神器を確認するためにジャルと交神を行った時のことだ。

 

『最近、神力使って面白いことしたみたいじゃない?』

『面白いこと?』

『神力念話だっけ? よくあんなもの開発できたわね』

『へ? だって交神を参考にしただけだよ?』

『あのね。それがそもそもおかしいのよ』

 考助の答えに、ジャルが呆れたような声音を届けて来た。

 ちなみに、エリスはそうでもないようなのだが、ジャルは顔の見えない交神であっても何となく感情が分かる考助であった。

『どういうこと?』

『会話するだけとはいえ、交神だって間違いなくこの世界では、神の御業なのよ? それを劣化バージョンとはいえ、再現して作り直したのは、凄いことなのよ?』

『・・・・・・もしかして、まずかった?』

『どうしてよ?』

『神の御業に手を出したから?』

『疑問形で返さないでよ。そんなことは心配しなくても大丈夫よ。そもそも駄目だったらエリス姉さまが、神託を授けてたでしょう?』

『それもそうか』

『と言うわけだから、遠慮なくやりなさい。・・・と言ってもなかなか厳しいでしょうけど』

『あ、やっぱり?』

『そりゃあね。神力を使って何かをするって、やっぱり神の御業と同等だからね』

 さらりと告げられた事実に、考助は無言になってしまった。

『何を今さら引いてるのよ』

『いや、やっぱりやりすぎたかな、と』

『そんなことは、例のクラウンカードだっけ? あれを創った時点でわかっていたことよ』

『そうなの・・・!?』

『そうなのよ。あれのおかげで、エリス姉さまとあの方以外の神々にも、あなたの存在が知られたわけだし』

『・・・・・・うげっ』

 考助としては、自分の持っている力を元に作り出しただけなので、大したことは無いという認識だった。

 まさか、神々までが注目することになるとは、思っていなかったのである。

『まあ、あれが無くても貴方のことが知られるのは、時間の問題だったでしょうけど』

『・・・へ? どゆこと?』

『だって、基本的にはそっちの世界には不干渉のエリス姉さまと、あの方が関わっているのよ? 他の者達が興味を示さないわけがないじゃない』

 ジャルのその言葉をきいて、今更ながらに自分の立場を理解した考助である。

 いろんな神様に注目されるなど、トラブルの予感しかしない。

『ああ、勘違いしないでね。注目してると言っても神界から見てるだけよ。直接的にも間接的にも考助に手を出せば、どうなるかよくわかっているから』

『なに、それ?』

『貴方に手を出せば、エリス姉さまやあの方が直接的に関わってくるってことよ。だから神々は迂闊には、貴方には手を出してこないわよ。出してくるとすれば、どっちかに許可を取ってからね。・・・スピカの時みたいに』

『ああ、あれはやっぱり裏でそういう事があったんだ』

『当然ね。大体私の時だって、色々あったんだから。ナナという存在があったからこそ、今ではこんなことも出来ているのだし』

『・・・ふーん』

『うわっ。他人事みたいだし』

 実際に考助にしてみれば、遠い世界で起こっている事、としか認識のしようがない。

 現世に存在している考助としては、直接的なことをされない限りは、そうなってしまうのも当然だろう。

 

『ところで・・・こんなに長く話していても大丈夫なの?』

『問題ないわよ?』

『エリスと違って暇なんだ?』

『あ、ひどいわ。そんなこと言うんだ?』

 一瞬寒気を感じた考助である。

『あ、いや、別にそんな深い意味はないんだけど?』

『ほー? そこのところきちんと聞きましょうか?』

『かか、勘弁してください』

 姿は見えてない(相手は神なので見ているのかもしれないが)はずなのに、思わず頭を下げてしまった考助である。

 この辺りが、以前の日本人的感覚を残しているところかもしれない。

『・・・まあ、いいけど。私はエリス姉さまと違って、それなりにあいてる時間があるだけよ?』

 ジャルの言葉に、何か言葉を返そうとした考助だが、別の声が割り込んできた。

『ほほー・・・。それは良いことを聞きました』

『・・・わきゃっ!? ねね、姉さま!!!?』

『時間があるのなら、私の手伝いをしてもらえますね?』

『・・・・・・ふわい・・・。・・・またこのパターン・・・』

『自業自得です。そんなことよりも手伝いをお願いします』

『はーい・・・』

 姿は見えなくても、がっくりとしている様子が分かるような声色だった。

『それよりも、ちょうどいい機会です。考助様、神力を使った力の開発をするのは良いですが、焦ってはいけませんよ?』

『どういう事?』

『神力は魂の力そのもの。変に急いで開発したりすれば、魂そのものが変質する可能性もあります。確か、そういう考察もしていましたね。あれは間違ってはいないのですよ』

『・・・・・・やっぱりか。気を付けるよ』

『そうしたほうがいいでしょう。本来であれば、長い期間をかけてゆっくりと修行する物ですから。・・・それではそろそろ失礼します』

『ああ、それじゃあ、また』

『わわ。姉さま、襟を引っ張らないで! 逃げないから。首が絞まるよ!』

 ジャルの慌てるような声を残して、交神が終わった。

 結局のところ、焦って力の開発をしても碌なことにならないという言葉をもらった。

 その相手がエリスなのだから疑いようもない。

 結局その話をメンバーに話して、神力の開発はそれぞれがゆっくりと行っていくことになったのであった。

この時点で神力念話は全員が使えるようになっています。

その他の神力を使ったスキルなどは、それぞれが個々に修行していくことになりました。


2014/6/21 誤字修正

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