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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 錫杖の変化
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(8)道具の使い方

『こういうことなら、すぐ連絡をくれればよかったのに』

 夕食を終えてからクラーラとの交神を行ったシュレインは、いきなりそんなことを言われた。

「すみませんですじゃ」

『慌てすぎて、言葉遣いが変になっているわよ』

 責められていると勘違いしたシュレインが慌てて答えると、クラーラからの突っ込みが入った。

『もう。いい加減慣れてくれればいいのに。・・・・・・なんてことを言っていても話が進まないわね』

 シュレインが慌てている間に、クラーラは勝手に自分で納得してしまった。

 

『それで、錫杖に入れた宝玉で、どんな権能が出るか、でしたっけ?』

「そ、そうで・・・・・・じゃ。いきなり変な力が放たれると、困ったことになるからの」

『はあ、まったく・・・・・・。私のことをどう思っているのか、一度考助に問い詰めないといけないかしら? いきなり暴走するような術式を組み込むはずがないじゃない』

 呆れたように言ってきたクラーラに、シュレインが慌てて釈明した。

「い、いや。別にクラーラ様のことを疑っているわけではないのじゃ。ただ、できれば、錫杖を使ったときに、どんな権能が現れるのか、吾が事前に知っておきたかったのじゃ」

『なるほど。そういうことね』

 考助の作った神具からクラーラの納得したような声が聞こえて来た。

 

 これでなんとか目的を果たせると安心したシュレインだったが、次のクラーラの言葉に思わずキョトンとしてしまった。

『けれど、そんなことは私にもわからないわよ』

「・・・・・・・・・・・・は?」

『正確にいえば、私の権能としてその世界に力を及ぼす方法はいくつもあるから、シュレインがどういう力を発現するのかは、まだ不明といったところかしら』

 女神は格が上がれば持っている権能が増える。それだけ世界に及ぼす影響が強くなるということだ。

 だが、今回はそれが逆に仇となっている。

 神ではないシュレインは、クラーラのすべての権能を例え劣化版であっても使えるはずもなく、いずれかの権能が使えることになる。

 だが、クラーラがもつ権能のうち、どれがシュレインの能力として発現するかは、クラーラにもわからないのだ。

 もっといえば、ある程度の予測は付くが、それはあくまでも予測でしかない。

 外れることも多いので、クラーラにもわからない、ということになるのである。

 

 考えてもいなかったクラーラの説明に、シュレインはふとなにかを思い出したような顔になった。

「どこかで聞いたことがあるような・・・・・・。ああ、考助の左目の力かの」

 考助の左目の力は、全てを発現させると人としての身体に耐えられず、防衛機能として気を失ってしまうようになっている。

 そうならないように、普段は力を制限しているのだ。

 それは、現人神となったいまでも変わりない。

『うーん。まあ、似ているけれど、ちょっと違うかしらね。どちらかといえば、シュレインの場合は、加護の一種と思ったほうが近いのじゃないかしら?』

 神の加護は、与えられた者全員がその神の権能を使えるわけではない。

 才能のある者たちだけが、加護を得ることによって、権能の一部を使えると言われている。

 錫杖に埋め込まれた宝玉の持つ力も、それと同じようなものなのだ。

 

 どうしたものかと悩むシュレインに、クラーラが気楽な調子で言ってきた。

『暴走は起きないようになっているんだし、あまり深くは考えないことね』

「・・・・・・そんなものかの?」

 見かけによらず(?)慎重なところがあるシュレインは、まだ不安が残る様子だった。

『そんなものよ。そこで一歩を踏み出さなければ、それまでということ。貴方はどうするのかしらね?』

 投げやりなようにも聞こえる台詞だが、真理は突いている。

 結局のところ、本人が動かなければどうしようもないとクラーラは言いたいのだ。

 錫杖の暴走を恐れて使わなくなったとしても、それはあくまでも本人の資質ということだ。

 

 どんな権能を使えるのかを確認するだけのつもりだったシュレインだが、結局クラーラからありがたい言葉(?)をもらって今回の交神を終えることとなった。

 気付けば時間もだいぶ過ぎており、クラーラの話の内容は、翌日仲間たちに伝えることとなった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 朝食が終わった席で、シュレインは昨夜クラーラ神と話した内容を皆に伝えた。

「――――それじゃあ、結局詳しくはわからなかったんだ」

 ため息交じりに言ってきた考助に、シュレインは頷いた。

「そうじゃの。これはクラーラ神が悪いというよりも、吾が力不足ということかの」

「いや。そんなことは言っていないよね? それに、加護が云々と言ったんだったら、僕の場合も同じだからね」

 考助も既に幾人かに自身の加護を与えている。

 だが、いまだにどんな権能がその人物に発現するかは、まったくわかっていないのだ。

 クラーラにおけるシュレインが、同じような立場にあったとしてもなんの不思議もない。

 

 納得顔になった考助にちらりと視線を向けたシルヴィアは、すぐにシュレインを見た。

「私たち聖職者も加護を得たとしても、権能が使えるかはわからないと教わります。神であれば答えが得られると考えたのは、虫が良すぎたかもしれませんね」

「そうかの? ・・・・・・そうかもしれんの」

 シルヴィアの駄目押しに、シュレインはどこか吹っ切れた様子で頷いた。

 なんでもかんでも答えを得たうえで、物事を実行できるわけではないと、改めて思い直したのだ。

 

 シュレインの顔を見て変化に気付いたシルヴィアは、今度はその視線を考助へ向けた。

「ところで、錫杖が発現する力は大地母神の権能だと断言しているようですが、なにか根拠でもあるのですか?」

 錫杖を改良する前でさえ、シュレインはどうやって使っていくのか手探りの状態だった。

 それが今回の出来事で、考助はいきなりクラーラに聞けばいいとシュレインに言っていた。

 それがなにか理由があるのかとシルヴィアは疑問に思ったのだ。

「いや。単に、あの儀式で、精霊たちが宝玉に集まっているように見えたからね。なにかが起こるとすれば、宝玉だと考えたんだよ」

 宝玉に関しては、前にも言った通り手を加えたのがクラーラなので、考助も詳しくはわからない。

 だからこそ考助は、クラーラに話を聞くようにとシュレインに言ったのである。

 

 考助の考えを聞いたシルヴィアは、納得したように頷いた。

「なるほど。でしたら、シュレインがやることは、結局のところ私たちと変わらないということですね」

「まあ、そうなるね」

 シルヴィアたちも、暴走の危険を抱えた神器を使って、時間のあるときにはどんな使い方ができるのか検証を行っている。

 暴走する可能性があるからと触れずにいれば、いつまでたっても道具を使いこなすなんてことはできないのだ。

 

 考助はシルヴィアに頷きながら、シュレインを見た。

「シュレインだって、別にその錫杖を使いたくないというわけじゃないんだよね?」

「当たり前だ。むしろ逆じゃ。使えなくなったら困るから、できるだけ情報が欲しかったのじゃ」

「うん。そういう心づもりでいるなら、変に暴走もしたりしないよ。絶対とは言えないけれどね。けど、それは、どんな道具だって同じだから」

 慣れるまでは人や物が無い場所で使うなど、工夫さえすれば被害を抑えることなどいくらでもできる。

 あとは、使う人の心づもり次第ということだ。

 

 考助の言葉で完全に吹っ切れたのか、シュレインは錫杖を握り直してなにかを決意するような顔になった。

 それは決して力んでいるわけではなく、以前と同じような錫杖を使いこなしてやろうという気持ちがあふれるものだった。

決意するシュレイン。

と書くとかっこいいですが、結局のところ以前と変わっていませんw

勿論、能力が増えているぶん、危険度は増していますが、考助の言った通り、使い方次第、使い手次第です。

次は、久しぶりにワンリ登場・・・・・・かな?

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