3話 神力念話
結論。
結局のところ神力については、まるでわかっていない状態であり、今ここで話されていることが世界の最先端である。
やや強引な(?)まとめになってしまったが、事実としてそうなのだからどうしようもない。
魔力や聖力が身体に、神力が魂に依存した力であるという事だけでも、今まで知られていなかったのだ。
それを考えれば、大袈裟なことではない。
そもそも神具なんてものを開発できる存在がいるだけでも、研究する上では大きなアドバンテージが存在する。
とは言え、考助達が集まって話している目的は、あくまでも神力が実用的に使えるようになるか、という点である。
ちなみにこの時点で、全員が以前ナナやワンリ達が、神力を使って遊んでいた神力ボール(?)遊びは、出来るようになっていた。
そのおかげか、全員に<神力操作>のスキルが付いている。
だがその<神力操作>を使って何が出来るかが、今もってほとんど不明なのだ。
今のところ活用できているのが、考助とイスナーニの神具作りと、シルヴィアのエリスとの交神ぐらいなのである。
何となくいいアイデアも浮かばない所で、話の内容が雑談に近くなってきた中、考助がふと思いついた。
「・・・・・・あれ? 神具ありで通信できてるのに、神具なしに通信できないのって何で?」
考助の呟きに、全員がピタリと会話を止めた。
「いや、できないというか、そもそも試したことが無かったから?」
「それもあるが、そもそもあれらの神具がどうやって動いているのか、吾等はよくわかってないぞ?」
「私も交神するときは、神具の発動に神力を使っているくらいですわ?」
皆の意見に、考助はなるほど、と頷いた。
考えてみれば、神具の使い方を教えたことはあっても、その中身については語ったことが無かった。
考助がお手軽に(これが既におかしいのだが)作った交神用の神具に関して、簡単に説明することにした。
「あれは簡単に言えば、神力で相手を探して、神力のパスをつなげて、それを固定する、みたいなことをしているんだけど?」
一言で言ってしまえば、糸電話を神力でやっているようなものである。
糸電話の糸の役割を神力が担っているわけだが、その両端に付いている道具(例:紙コップなど)が神具である。
神具を用いない神の神託は、不特定多数になったり特定の個人だったりするのだが、それは特定の条件に限って相手を探し出して話しかけていると考えられる。確定ではないのだが。
「・・・・・・と言うことは~。それらの神具の代わりに、体とかを代用できれば、念話みたいなことが出来るのでしょうか?」
「まあ、理論的にはそういう事かな?」
念話と言うのは、魔力や聖力が使える高位の者達が、離れた場所でも会話できる技術だ。
限られた者しか使えないので、使われる場面も限定的なのである。
「・・・念話が使えるとなると便利ですわ」
「ついでに言うと、神力を使うから、それこそ場所を選ばないしね」
神の住まう場所である[常春の庭]にも実際に届いているのだから、考えられる話なのだ。
各階層に散って作業するメンバーとしては、もし神力で会話が出来るようになるのなら、非常に便利になることは疑いようがない。
メンバー全員がお互いに顔を見合わせて同意して、取りあえずの目標が決まった。
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目標:神力を使って会話が出来るようにする。
と、文字で書くと直ぐなのだが、実際に形にするのには、結構な時間と手間がかかった。
まずお互いが神力で繋がらないといけないのだが、魔力や聖力の様に、互いの力を繋げるのが難しかった。
考助が、神殿でシルヴィアに渡すための神具を作る際に、何気なくこの作業を行っていたのだが、それは[常春の庭]でやり方を教わっていたから出来たのだ。
魂だけで[常春の庭]に存在していたため、他の余計な物がなかったので、短い期間で習得出来たのだ。勿論、実際に苦労した考助には異論があるだろうが。
特に体がある状態では、魔力や聖力があるために、余計な力が混ざってしまってなかなかうまく繋がることができないのである。
逆に、元々その作業が普通に出来る考助は、全員と神力で繋がることが出来た。
と言うわけで、考助とその他一名(交代制)がその先の実験を行い、残った者達で神力を繋ぐ訓練を行うことになった。
まず最初の相手はピーチであった。
何故か順番を決めるのに揉めに揉めて、結局じゃんけんになったのは余談である。
その時にはどうしてそんなことを、と思った考助だったが、神力が繋がると非常に気持ちがいいからという答えが返ってきた。
理屈はよくわからないが、お互いの神力が繋がると非常にリラックスできる効果があるようである。
考助自身は、そう言う効果を受けた感じはしないのだが、女性陣は顕著に感じるようである。
これも要調査と言ったところであろう。
それよりも今はまず、神力が繋がった状態で会話が出来るかどうか、である。
イスナーニ開発の通信機能を参考にしようにも、そもそも人間にはそんな機能を持った器官が無いので、一から考えないといけないのだ。
人間の身体は声も出せるし、耳で聞くことも出来る。
だが、その声(音)をどうやって神力に乗せるかが問題なのだ。
そこで考えたのが、最初に考助が神殿でアスラやエリスと交神したときのことである。
あれはそもそも神具を使わずに、会話を行っていた。
どうやって会話を行っていたかと言うと、声に出したりせずに、頭の中で考えただけだ。
だが、その前に座禅(笑)を行って集中していた。
これは魂の力である神力を使うためである。
肉体と言う声を使わずに、魂に考えを乗せることが出来れば、その声を受け取ることも出来るのではないか、というのが考助の考えであった。
といってもそう簡単にはいくわけもない。
そもそも考助があれほど簡単に、[常春の庭]のアスラやエリスと会話が出来たのは、これまた[常春の庭]での修練のおかげなのだ。
現世にあるメンバーが簡単に身に付けられるはずもなく、それに関しては、結局のところ要練習となった。
練習方法は、考助が[常春の庭]で受けた内容を参考にしている。
何しろ肉体と言う制約が無かった[常春の庭]とは違い、こちら(現世?)では肉体と言う制約があるので、そう簡単に身に付くはずもなかった。
結局のところ、女性陣が考助と会話が出来るようになるには数日という期間を要した。
これでも驚異的な早さである。
考助と言う常識外の存在の補助があり、ピーチを除いた魔力や聖力の高位の使い手がいたからこその早さであった。
もっとも、シュレインに言わせれば、考助の補助が無ければ、そもそもこんな早さで身に付けることはできなかったということなのだが。
そんなこんなで、何とか神力を使った(道具なしの)通信が出来るようになったわけで、今度はその活用の範囲を調査することになった。
結論から言えば、塔で活用する彼らにしてみれば、非常に重要な力になったのだ。
神力の塊が壁をこえたりしていたので予想の範疇だったのだが、管理層の壁はそもそも障害になるわけもなく、違う階層にいても通信が行えた。
ついでに、塔の外に行って確かめてみたのだが、これも難なくクリアした。
はっきり言って、非常に便利、どころではない。
神力念話と名付けたこの通信方法が、今後の塔の運営にとって重要な役割を果たす物になるのは間違いない。
考助は問題なくそのほかのメンバーと繋がることが出来るので、後は他のメンバーが神力を繋ぐことが出来るようになれば、どこにいてもお互いに会話ができることになるのだ。
メンバーたちが、急いで習得に励んだのは言うまでもない。
ちなみに・・・・・・チート二人であるコウヒとミツキが、あっさりと神力念話を身に付けてしまったのは、余談である。
裏話。
考助と女性たちが簡単に繋がることできた理由の一つに、夜の営みのおかげと言う設定もあったりします。
結局のところ、神力の繋がりは魂のつながりと関係するわけです。が、そんなことは検証のしようがないので、誰も気づいていません。
一番先に気付きそうなのは、そっち方面に詳しいピーチかもしれませんw
2014/6/21 誤字修正
 




